11/4(金) 日野 苺⑦
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「あっそうだ、みんな先帰って! あたしいっちーと話があるから」
みんながようやく落ち着いて、帰宅をしようと話していると七瀬ちゃんに止められた。
話すことに心当たりがないから、怖くて体が固まってしまう。
「なっちゃん、カギ借りていい?」
「ああ。いいけど」
知実くんがポケットから出した屋上のカギを七瀬ちゃんに投げる。
「ありがとっ♡ んじゃ行った行った〜!」
みんなを追い出して、七瀬ちゃんはがちゃりとカギを閉めた。
「ねえ。いっちーさっき、本当の自分を出すって言ってくれたよね?」
「う、うん……」
「ふっふっふ……。んじゃ本音タイムといこうかね!」
振り返った七瀬ちゃんは、にっこりと笑った。
「面倒だから率直に聞くけど、いっちーってもしかしてなっちゃんのこと好き?」
「っ!」
すぐに否定をすればよかったのに、びっくりして返事に詰まってしまう。
「え、やっぱそうなんだ? そっかー」
「あ、違っ……!」
七瀬ちゃんの顔が明らかに曇ったのは、いくら空気が読めないあたしでもすぐにわかった。
これから本音で話していくとしても、恋愛の話は慎重にしないと。友だち関係と好きな人関係は、また別な気がする。
「好きな人できたら相談してって言ったよね」
「ご、誤解だよ。あたし知実くんに『友だちでいよう』って言われてるし」
「えっなにそれ。知らない、いつ告ったの?」
「違う、それもそういうんじゃなくて! あれ、あたしが先に言ったっけ……? と、とにかく、友だちだよねってことになったから!」
「はーーー!? なっっっっっにそれーーーー!!!」
七瀬ちゃんは大声を出してその場にへたり込んだ。
「それさー、あたしに気を使ってるんでしょー? やだーもー最悪だよーー!」
「そんなことないからっ」
「いや、ほづみんに聞いたんだよね。何よ、あたしとデートしろって。……なめないでよ。そんな施しされて、あたしが喜ぶと思ってるの!?」
顔を上げた七瀬ちゃんを見てゾッとする。怒りをぶつける表情。これ、前の学校のときと同じだ。




