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彼女たちを守るために俺は死ぬことにした  作者: うんちん丸
第5部 疾走するアオハル
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10/24(月) 日野 苺

………………


…………


……




 何度目かの寝返りを打って、パチリと目を開けた。


 初めてのファンスタではしゃいで疲れているはずなのに、まったく眠れない。



 午前2時。重いまどろみも感じるけれど、それ以上にばくばくと心臓が打って目が冴えてしまう。


 本当に偶然、音和ちゃんの恋が終わったところを見てしまった。


 知実くん、あんなに大切にしていた音和ちゃんのこと、断るの辛かっただろうな。



 二人の泣き顔はとてもよく似てた。


 それほど一緒にいた時間も長くて、共有してきたものも多かったんだろうなって、それは誰が見ても思い至るくらいに。


 あたしは(しゅう)(あんぞ)とですら、ずっと一緒にいたわけじゃなかったし、そんな人がいたことないから、二人の関係性がとても高貴なものに思えて、とても羨ましいと思ったよ。


 だけど二人とも、明日大丈夫かな……。



 くるりと寝返りを打つ。


 暗闇の中で聞こえる弟と妹の寝息に、安らぎを感じる。


 ふと手を布団から出して伸ばし、暗くて見えない手の甲を見つめる。



 遊園地での行動の“意味”。何度も何度もなぞってみた。


 自分の行動も、知実くんの行動も。



「手、繋いじゃった……」



 伸ばして見る手はいつもと変わらない。だけど、あたしにとっては昨日とは全然別のものに見える。


 手を取ったときは本当に、はぐれるのが怖かったから。


 でも……。


 それが、柊や杏とは違うあたたかさでとても驚いた。


 今まで守る側しか知らなかったし、それが当たり前だと思っていた。



 指先から心強さが体の中に流れ込んできて、力が抜けるような感覚に、手を離すのが名残惜しくなる感情。隣に誰かがいてくれる安心感。


 それで、確実に価値観がひっくり返った。



 あたしには勉強もバイトもあるし、自分たちの生活のことでいっぱいいっぱいだし。それになによりも、パッとしないしダメ子だし……。


 そんな自分が、誰かに頼りたくなるなんて思わなかった。



 知実くんのことはいい人だしおもしろいし、なによりも感謝してた。


 だけど一歩踏み込めなかった。だって、ただの友だちにそんな資格ないから。



 知実くんはどうして今日、音和ちゃんを断ったんだろう……。



 辛くて眠れないのは音和ちゃんに感情移入しているからか、知実くんの辛さに共感してるのか……。


 とにかく、息をするのも苦しいくらいに胸が痛んで、吐く息は熱を帯びていた。

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