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彼女たちを守るために俺は死ぬことにした  作者: うんちん丸
第5部 疾走するアオハル
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10/23(日) 日野 苺②

 ランチ後はみんなで回れるところに行ってみたり、虎蛇と生徒会で別行動したりして、ふたたび全員で集合したのは夜のパレード前だった。


 18時半からスタートするラストパレードは、とあるジンクスがあってひときわ人気らしい。


 そのジンクスとは。


 いつも立ち位置が変わり、どこにいるかは当日までわからないスーパーラビリンと目が合ったカップルは、生涯幸せになれる。……と、凛々姉が「常識の範疇よ」と言いながら教えてくれた。



「というわけで、いのは抜けていいわよ」


「えっ!?」


「……では生徒会長、お言葉に甘えて行きましょう」


「そんな小っ恥ずかしい!? ことをーーーーー!? あたしがーーーー!?」



 小さな吉崎は八代の小脇に抱えられ、雄叫びを上げながら雑踏へと消えて行った。


 うん? 世のカップルってああやって歩くんだっけ?



「じゃあ人も増えてきたしはぐれないように、なるべく全員で固まって歩きましょうか」



 凛々姉が残りの7人を見渡していると、



「あのっ」



 真っ赤な顔で手をあげるのは七瀬だ。



「なに? 芦屋」



 みんなが七瀬に注目するから、より顔が紅潮してしまう。だけど、彼女はハッキリと言った。



「えっと……、あたし、ノナカと抜けたいです!」



 無言になるメンバーたち。みんな七瀬×野中の構図を知らなかったらしい。


 つかすごいな、よく勇気出したなあいつ。


 だけど野中は七瀬のこと、なんとも思ってなさそうなんだよなぁ……。



「だそうだけど?」



 凛々姉が野中に確認する。



「あーー。悪いけど……」



 野中が俺の肩に手を回してくる。また俺で断る気か……。


 できれば七瀬には、付き合えないなら誠実に断ってほしいけど。ここで俺が口出すモンでもないし。



「あ、えっと……あんたもいていいから! 3人ならどう!?」



 七瀬が隣にいた鈴見の腕を捕まえた。俺は野中と顔を見合わせる。



「……? 鈴見がいるなら、まあ……」


「え、なぜ俺……。邪魔なだけでは……」


「よかった! じゃあそういうことで、後でねーっ!」



 七瀬は両側の男子たちと腕を組み、スタスタと歩いて行った。



「不思議な組み合わせだな?」



 音和も首を傾げるほどだった。



「それじゃあ、5人で行きましょう?」



 詩織先輩の声に、みんな頷く。


 パンフレットを見ながら先頭を歩く凛々姉の隣で、詩織先輩がキョロキョロと目的地を確認していた。


 詩織先輩とは休憩が多い組で結構話せたけど、何度も「楽しい」と笑ってくれてうれしかった。

 籠の外に出た小鳥みたいな彼女が、もっと自由と友だちになってくれたらいいよな。


 凛々姉は……今日はだいぶはしゃぐの抑えてたの草生える。

 でもあのはしゃぎっぷりを知ってるのが俺だけっていうのも、悪い気はしないかも。


 凛々姉たちの後ろで俺を挟むように、いちごと音和が歩いている。そして俺越しに会話までしている。

 二人が打ち解けてくれたのも良かった。


 特に音和。こいつは本当に頑張ってくれた。

 俺がいるのに俺以外と喋ってるこの光景。半年前には想像つかなかったし。


 いちごは面倒見が良くて気を使う子だけど、でも彼女がうれしそうに笑うときだけは、建前とかない気がするから。

 そういう時間を増やしてあげられたらいいんだけど。



 とにかく、今日が大団円で終わればいいな。みんなで遊ぶのも、これが最後だろうから。

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