表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女たちを守るために俺は死ぬことにした  作者: うんちん丸
第5部 疾走するアオハル
247/301

10/19(水) 日野 苺④

「野中くん大丈夫かな?」


「ああ、うん。あいつはタダじゃ死なないから」


「でもさすがに学校外だし……」


「んー、あ、来た来た」



 スマホが鳴って、知実くんが画面を見せてくれる。





うんち

----------------------

良かった、こっちも平気。

無罪放免。

やっちゃんとメッセ友にな

ったわ

----------------------

14:21





「??」


「あいつ老若男女に好かれるから」


「でも、あれで友だちになる!?」


「すごいよね?」


「てかてか、名前なにこれっ!?」


「あ……ずっと表示名変えてたんだよな、忘れてたわ」


「知実くんも忘れる!?」



 顔を見合わせてまた笑った。

 メッセの表示名を戻して、知実くんはペットボトルのお茶を開ける。



「なんか今日、久々に元気ないちご見た気がする」


「えっ、そうかな」


「うん、最近クラスでもおとなしくない? なんか、周りに溶け込みすぎてるような」


「自分じゃわかんないかも」



 至近距離で見られているのが急に恥ずかしくなって、手元のペットボトルに視線を落とした。



「ダメじゃないけど、いちごはもっとそういうの出していけばいいのにとは思うけど」


「別にそんなつもりないよ〜。それにあたしよりも今まで他の子のほうが大変だったから、目立ってなかっただけじゃないかな。でもほら、今はあたしがメインヒロインだから」


「えっ、なにそのメタっぽい発言、怖いんだけど!?」


「めた? あたしが青春回収するために、知実くんに付き合ってもらってるって話だけど……」


「ああ、そういうこと。いや、ならいいんだけどね!」



 知実くんはなぜかあたふたして、お茶のふたをしめた。



「さて、今日はこんなだし、解散だなぁ」


「そうだね。心配してくれてありがと」


「うん」



 あたしも最後に、自分のお茶に口をつける。呼吸はもうすっかり落ち着いていた。




………………


…………


……




 二人で駐車場を出て、家方面へと向かう。知実くんはカバンとお菓子を両手に持って大荷物だった。



「はあ。なんかごめんいちご。今日、全然遊べなくて」


「え、全然だよ、楽しかったし!」


「マジかよ、天使なの?」


「マジマジのマジだよ。制服でこうやって、知実くんと並んで歩いてるだけで充分素敵だから。思い出になったよ」


「女神だったわ!!」



 何かスゴイことをしたかったわけじゃない。こうやって友だちと一緒に、知らない道を歩くことだけでも。あたしにとって特別なことだから。


 知実くんは少し笑って、独り言のように、



「本当に、いちごは手がかからない、いい子だよなぁ〜」


「!」



 ――ああ、本当に良かった。



「またリベンジしような」


「うん、次は放課後にしようね」



 それは誰にも迷惑をかけない代わりに、誰からも特別に好かれることがないってこと。

 あたしはよく知っている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ