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彼女たちを守るために俺は死ぬことにした  作者: うんちん丸
第5部 疾走するアオハル
243/301

10/17(月) 日野 苺

  ◆◇◆◇◆◇




 修学旅行の朝。あたしたちは台湾へ飛ぶクラスのみんなを早起きして見送ったあと、そのまま居残り組は教室へ向かった。2年で学校に来ているのはあたしと知実くん、野中くんの3人だけ。


 残ったのが全員A組という事態に担任の先生も焦って、野中くんとかかなり説得されてたみたいだけど、絶対に行かないって貫いたっぽい。


 それであたしたちは旅行には行かないけれど、登校はしてねってことで課題もきっちり1週間分出た。


 今はみんなで机を突き合わせて、課題の作文を書く時間だ。


 作文テーマは「大切なもの」。


 視線を上げて、知実くんをチラりと盗み見る。知実くんの大切なものってなんだろう?



 作文を書き始めて30分ほど経ったとき、知実くんがシャーペンを机の上に転がして、うーんと大きく伸びをした。



「終わったー」


「え、早いね〜」


「こんなん適当でいいんだよ」


「知実くんは何について書いたの?」



 や、やっぱり、虎蛇会……なのかな? そしたら、あたしのことも書いてくれたりするかな。……なんて。ドキドキ!



「おー、よくぞ聞いてくれたな! ラジオにしたよ。夏休みにハマったんだけど、オールナイトニッポンの芸人回とかいいぞ〜」


「ラジオ……? そ、そっか、そんな世界があるの知らなかったー。大人だねー!」



 お、思ってたのと違った!



「……んじゃ俺もゲーム実況にするか」



 ずっと机に突っ伏していた野中くんが突然起き上がって、下に敷いてしわしわになってた原稿用紙をならしはじめた。


 はあ。男子ってそういう感じだよねえ。ひとりで盛り上がっちゃって恥ずかしいな……。



「そういえば、日野は何書いてんの?」



 あたしの半分ほど進んだ原稿用紙を見て、野中くんが聞いてきた。



「えっとね、弟と妹が超絶かわいいって書いてるんだ〜」


「へえ。お前、意外と姉ちゃんなんだな」


「えー、なにその顔っ」


「いちごはちゃんとお姉ちゃんしてるし、仕事もしっかりする子だよ」



 知実くんがさらりとフォローしてくれてちょっと照れる。



「でもなっちゃんナイスよ。厳選無料エロ動画サイトしか思い浮かばなくて、出せねえ俺死んだ。と思ってた」


「はあ、最低だな」


「あはは〜。二人とも机の陰で握手してるの、しっかり見えてるー」



 まったく男子って……。


 それからまたしばらく作文に取り組んでいたら、ひとりだけ課題が終わって暇そうにしていた知実くんが身を乗り出してきた。



「なあなあ、いちご。なんかやりたいことない?」


「やりたいこと?」



 手を止めて首を傾げる。



「授業ないから時間はたっぷりあるし。前に話した青春回収、本格的にやろうぜ」


「何それ、なっちゃんまたそんなことしてんのかよ」



 今度は野中くんが呆れ顔に。っていうか……?



「また、なの??」

「いや、またじゃない、してないよ!?」

「虎蛇のやつらが困ってたらすぐに首突っ込むだろ。お前のそういうおせっかいで目が離せないところも俺好み、だけどな?」



 うーん……、したいことかぁ……。



「おせっかいなら、お前にいちばん焼いてやるって。今夜も存分に可愛がってやるぜ野中」

「学校で鍋とかピザパーティとかも楽しそうだよね! でも、もっとキラキラな青春って感じの方がいいかなー?」



 さすがに、教室で火使うと目立つよねー。もちょっと、青春っぽいもの。なんだろう。甲子園……?? うーん??



「ねえ野中、いちごちゃんにスルーされたんだけど、ギャグって伝わってたかな……」

「ツッコミ不在だと、大怪我の予感しかしないわ」

「3人でいるときはカップルネタは封印しとこうか……」

「あ!」



 パチンと柏手が決まる。



「せっかくここの制服着られてるから、これで街に遊びに行きたいかも!」



 超いい案が思い浮かんで、どうかな?という視線を送った。だけどなぜか知実くんは目をまん丸くして、



「えっ、そんなんでいいの?」



 って、困惑した顔、してたけど。

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