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彼女たちを守るために俺は死ぬことにした  作者: うんちん丸
第4部 お姫様に寵愛を
233/301

9/30(金) 穂積音和⑨

 盗撮が引っ込んだあとに、メガネが出てきた。あの人も見たことがある……。



「うげ、八代!」



 生徒会の人か。

 でも、出るのを知らなかったみたいで、生徒会長は驚いてる。



「生徒会副会長、八代です。今日はみなさんに謝辞を申し上げに参りました」



 なーーにーーーー?



「話すと長くなりますので短くまとめますが、先日、私が原因で生徒会を解散するという話が出ておりました。しかしご迷惑をかけてしまった虎蛇会会長のはからいにより、生徒会が存続できることになったのです」



 わーーーーーー!!!



「凛々子、その節はありがとう」


「生徒会がなくなると不便だからよ」



 生徒会長とかいちょー、目を合わせずに言葉を交わしてる。



「虎蛇会会長、部田さん。本当にありがとうございました。そして度重なる非礼をお詫びします」



 ぱちぱちぱちぱち



「そして生徒会会長吉崎いのさん。好きです。付き合ってください」



 ぱちぱちぱち……

 えええええええええーーー!!?!?



 ワンテンポ遅れて地面が揺れた。

 今度は生徒会長に視線が集まる。


 真っ赤になってぐるぐると目を泳がせる生徒会長の背中を、武士道が「お気を確かに!」と叩いてる。カオス。



「え、え、え、あわわわわわわ!?」



 それでもまだ生徒会長は正気に戻らない。



「きゃーーー♡♡」



 日野さんが興奮して、あたしに抱きついてきた。メガネは、無表情で答えを待ってる。



「…………はぃ」



 生徒会長が頷く。

 会場は、大きな歓声と拍手に包まれた。


 ……いいなあ。良かったねえ。



 告白、謝りたいこと、将来の夢、後悔していること……。それから何人かの勇気ある人たちが、いろんな主張をした。


 みんな本気で叫んでいて、自分以外の人も、本気で生きてるんだなあって。当たり前なんだけど、改めて感じた。


 人の数だけ、いろいろな人生がある。みんな一生懸命生きてる。


 でも……。やっぱりあたしは納得ができない。



 なんで知ちゃんなの。

 なんで、他の誰でもなくて知ちゃんが選ばれたんだろう。


 友だちはできたけど、知ちゃんの代わりなんていない。

 知ちゃんがいなかったら、あたしは誰に甘えたらいいの?


 ……違う、甘えられなくてもいい。

 ただ、知ちゃんが生きていてくれたらそれだけでいいのに。



「穂積?」


「え、音和ちゃん大丈夫!?」



 隣の会長と日野さんに声をかけられて、涙が溢れていたことに気づいた。慌てて袖で目元を拭うけど、全然、涙、止まらない。


 日野さんが背中をさすってくれているうちに、主張も終わりに近づいてきた。



「それでは最後の方、お願いしますー!!」



 最後、というところで、周りが大きくざわついた。


 えづきながら涙をぬぐって、もうだいぶ暗くなった空を見上げる。



「……ど、どうも。成年のおじさんです……」



 ……。


 思わずぱちぱちと瞬きをしてしまった。


 だるだるなシルエット。


 ダサいポロシャツ……。



「え、なんでパパ……」



 口元がひきつる。


 知らないおじさんの登場で、ざわめきが一層大きくなる。先生たちも慌てはじめた。



「ねえ、なんで、日野さんっ」



 助けを求めると、日野さんはまた、ぽんぽんとあたしの背中を叩いてウインクして見せた。

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