9/30(金) 穂積音和⑧
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文化祭も、そろそろフィナーレ??
知ちゃんが出て行って、虎蛇本部でひとりお留守番をしていたけど、トラブルなんて全然来ない。
むしろ、なぜか代わる代わる知ってる人が来て、食べ物とかもらって食べたりして。本当にただのお留守番だった……。
あたし、役に立ててるのかなぁ。
そろそろ最後の全校イベントが始まる時間。あたしはここで文化祭が終わりっぽい。もうどうでもいいけど。
外に集まる人たちを窓越しに眺めていると、誰かが廊下を走って来る音が聞こえた。
その音に気づいたと同じくらいに、虎蛇のドアが勢いよく開く。
「音和ちゃん! 最後のイベント行こ!」
真っ赤な顔で飛び込んできたのは、日野さんだった。
「でも、本部誰もいなくなるよ?」
「いい、いい! もうラストだし、会長にも許可取ったし。文化祭みんなで楽しも!」
廊下に連れ出され、ガチャリと鍵がかけられた。ほんとだ。鍵はかいちょーしか持ってないから、わざわざ預かって来てくれたんだ。
「最後は外だよ、みんな集まってる! あたしこれ楽しみだったんだー」
うきうきとステップを踏みながら、日野さんが昇降口に走っていく。
あたしも小走りでそれを追いかけた。
昇降口を出てすぐ、校門の前にはもう多くの人だかりができていた。みんなが楽しそうに、頭上を見上げている。
日野さんは人混みをかき分けて、真ん中の方へと進んで行った。
「穂積、ご苦労さま」
「お留守番ありがとうございました」
かいちょーと詩織先輩が待っていた。そしてその向こう側に。
「あらおチビちゃん、お邪魔してるわ」
「……」
生徒会長がいて、ちょっと嫌な顔をしてしまう。
あれ? 知ちゃんはいないんだ?
「ねえ、知ちゃんは……」
「ほらほら、始まるよ!」
日野さんの声で、みんなで頭上を見上げた。
「はあーい、みなさーん。楽しい文化祭もラストでえーす! 青春してますかー!?」
屋上でマイクを通して叫ぶのは芦屋さんだ。
わーーーーっと、手を振ったり拳を突き上げたり、みんながこたえてる。
「いいねいいね、ノリうぃーね! んじゃーこれからですねえ、朝陽高名物でもある『未成年の主張』やっていくよー! 屋上から思いを叫ぶこのイベント、毎年カップルも生まれていますが、今年はどーかな? そんじゃみなさん、胸キュンな瞬間の立会人をお願いしまーっす」
ぱちぱちぱちと大きな拍手が起きる。
そして七瀬さんが引っ込むと、代わりに見たことある男の人が手すりの前に立った。
「2年B組、宮下コーキです! 3年A組部田凛々子さんに今日は言いたいことがありまーす!」
あ。盗撮の人だ。
かいちょをこっそり見ると、注目を浴びて、顔を真っ赤にして震えていた。
「……だからここにいろと言われてたのか……」
かいちょブツブツ言ってる。怖い。
「部田凛々子さんー! あなたの周りにいると、事件が多発して飽きません! これからもあなたの側にいたいです!」
え!? これって……
「そして、僕は……ジャーナリストに、なーるーーーーー!!!!」
告白じゃない!?
「ご勝手にーーーーーー!!!」
わーーーーーー!!!
青白い顔をしつつも、会長が雰囲気を壊さないようにちゃんとテンプレで返しているのは、あたしにもわかりました。とても大人だなと思いました。
「会長、告白じゃなかったですねー」
「こ、告白なんて、あるわけがないでしょ!」
「でも凛々子さん、おきれいですからね♡」
「〜〜〜!!」
日野さんがかいちょーを右肘でうりうりやって、しおり先輩がほっぺをぷにぷにしていた。




