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彼女たちを守るために俺は死ぬことにした  作者: うんちん丸
第4部 お姫様に寵愛を
231/301

9/30(金) 穂積音和⑦

 先輩の教室を出てから、次の場所をスマホを覗き込みながら考えていると。



「なっちゃーん!! しおりん先輩っ!」



 顔を上げた先に、七瀬が走ってきていた。



「よかったー! あたしも時間空いたから、一緒に回ろうと思って!」


「おー。よく俺たちのこと見つけたな」


「うん! ほづみんからメッセがあって、なっちゃんとしおりん先輩が二人でいるから混ざったらって! いやー、ほづみん気がきくわー!」



 あいつ、俺らに置いて行かれたからって嫌がらせかよ!



「んじゃ行こ行こ! あたし昭和レトロ縁日、気になってたんだー!」


「あ、うん」


「そ、そうですねっ」



 今度は元気いっぱいな七瀬のあとをついて行く俺らだった。




………………


…………


……




「わーーーー! パチンコたのしーーーっ!」


「言葉だけ聞くと大変よくない語弊が……」



 昭和レトロ縁日という模擬店で、早速スマートボールという、パチンコ玉をはじいて穴に入れるゲームに興じる七瀬。


 小さいころに行った熱海のゲーム屋でも見たことあるけど、きちんと木で作って本格感出しているところが好感を持てた。



「おーっし! このままノナカの記録越すー!」


「センスはあると思うけど、せいぜい頑張れー」



 横から野中も口を出している。


 こいつ、俺と解散してからクラスの男子と集まって、だいたいここで遊んでいたらしい。


 詩織先輩はというと、紙でできたエコ金魚をすくうたらいの前に座って、水面を眺めていた。



「詩織先輩〜取れた?」


「いえ、なんの成果も。私が不得手なばかりに、いたずらにポイを破き、水面を汚すだけで。1匹も……救うことができませんでした……」


「あらスペクタクルなお話ですね」



 ポイが破れていても未練がましく、漂う金魚を見つめている。


 そんな先輩の頬に、飲み物をぺたりとつけてみる。驚いて「ひゃん!」とかわいい声を上げた。



「外の屋台で買ったんだけど、タピオカ。よかったらあげる!」



 二人で回る約束が途中で反故になっちゃって、申し訳なくて買ってはみたけど。お嬢さまってこういうの飲めるのかな。



「何組の、たぴおか、誰さんですか?」


「ぴってどんな苗字だよ! 流行ってるじゃん、雑誌でも見るでしょ?」


「!! この黒光りが、そのタピオカ……!」



 先輩は好奇心に目をキラキラと輝かせて、おそるおそる口をつけた。そしてひと口飲むと、表情がとろんと崩れる。



「えっと、気に入った?」



 そのままこくこくと何度も頷く。

 知性、飛んで行くほどお気に召したようでよかったです。


 その後、違う味もあることを教えると、先輩はあと2つ買って飲み比べをしていた。


 とろとろにとろけている先輩を見てると、俺も幸せな気持ちになる。


 ……見た目よりハイカロリーなことは黙っておこう。



 七瀬の分は自分で買わせて文句を言われたが。

 ククク……。世の中は不平等だということを教えてやったのだ。


 勉強代にパンチを頂戴することになったので、結局あいつの方が一枚上手だったわけだけどな。

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