表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女たちを守るために俺は死ぬことにした  作者: うんちん丸
第4部 お姫様に寵愛を
213/301

9/27(火) 部田凛々子⑥

 再び全生徒の注目が向かうが、吉崎は黙ったままだった。


 おいおい。さっきあれだけ、学校のためにって笑ってたのに。あれ全部、嘘だったのかよ……。

 ちょっとだけ見直したと思ったら、結局こうなのか。


 痛む胸を押さえて呼吸を正す。悔しさにまかせて問いただしたいけれど、ひとまず冷静になろうと努める。


 ああーーー、辛いなあ。もう、誰も裏切らないでくれよ。

 裏切るほど嫌いなら、関わらないでそっとしておいてくれよ。


 凛々姉の痛が少しわかった気がする。誰かに気持ちが入ると、脳みそバグるわ……。



「……私に弁解させてください」



 ついと吉崎をかばうように前に出てきたのは、生徒会副会長の八代だった。



「今回の虎蛇会への妨害行為について。全て生徒会の行動だったと認めます」


「八代?」



 吉崎は困惑した表情で八代を見上げる。



「申し訳ありません、会長。……全て僕が独断で指示をしていました」


「っ……!?」



 吉崎の顔色が絶望に染まる。



「それはあなたが文化祭実行委員会を疎ましいのだと思い、排除しようという僕の判断です。でも本日、会長が文化祭実行委員会を嫌ってはいないという話を聞いていて驚きました。あなたは真に学校のことを考えていらっしゃったのですね……。僕はあなたのことを一番に理解していると思っていましたが、どうやらそうではなかった。それが本当に遺憾でなりません。全責任を取って、生徒会副会長を……辞任いたします」



 八代は罪を一人でかぶっているのか? それとも、本当のことなのか……?

 吉崎……っ!



 パンッと乾いた音が響き、メガネが宙を飛ぶ。


 八代は頬を押さえることもなく、打たれたままになっていた。



「なに、言ってるの……。これは、生徒会全体の責任です。とうの昔に、あなたが生徒会をやめれば済む話ではなくなってるのよ?」



 吉崎の口調は力強い。けれど、最後は涙声になってかすれた。



「あたしの軽率な行動が、あなたたちを追い込んでしまったのね。本当にごめんなさい……」


「謝らないでください……」



 いつも堂々として自信ありげな八代の、生徒会長にだけ見せる顔を見てしまった気がした。


 吉崎は目を閉じて頭を横に振り、こらえるように口を一文字に結ぶ。そして意を決したように凛々姉を正面に、頭を下げた。



「うちが迷惑をかけてごめんなさい。あたし、あなたとやり合うの、嫌いじゃなかった……」



 凛々姉は吉崎が頭を上げるまで静かに見守ってから、いつもの強気の顔を作った。



「あたしもあんたの単純なところ、嫌いじゃないわ」


「……まったく最後まで減らず口なのね。……今後の生徒会については、これから話し合い、結果を報告します」



 そして吉崎はぼそりとこぼした。



「もし解散しても、いち同級生として、話してあげてもいいわよ」


「……今くらい静かならね。うるさいのは苦手なの。うちのメンバーたちだけで手一杯だから」



 吉崎は口元だけで力なく笑うと、八代の腕を引いて観衆の中に突っ込んだ。

 鈴見も慌ててそのあとを追う。



「おい鈴見」


「なんだ」



 俺の呼びかけに、眉を寄せて振り返る。



「達者でな……」


「……武士じゃねえよ」



 生徒会とももうこれで、話すこともなくなったのかもしれない。


 むかつくことばかりだったけど、これはこれで寂しい気がした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ