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彼女たちを守るために俺は死ぬことにした  作者: うんちん丸
第4部 お姫様に寵愛を
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9/26(月) 部田凛々子②

 それから半分ほどさばいて時計を見ると、始業まであと10分というところだった。


 そういえば凛々姉は……と。手を組み、外をぼんやりと見つめていた。


 ……いつからそうしていたんだろうか。



「凛々姉、こっちは半分しか終わらなかった」


「そう。ご苦労さま」



 さっきの微笑みが嘘のように、まったく生気を感じられない。



「本当に大丈夫?」



 つい、聞いてしまうくらいに。



「……どうかな」



 凛々姉は所在無げにPC画面を見つめた。



「あたし、向いてなかったね」



 ぽつりと弱音をこぼす姿は、美しいと思うのが悔しいくらい、儚げだった。


 そのまま眺めていたいような気持ちを捨てて、すぐにかぶりを振って否定する。



「充分よくやってるよ」



 でも、凛々姉は力なく首を振った。



「いや。ただみんなに笑って欲しいだけなのに、逆に苦しめているのかもしれない。夢を見るんだ。『お前のせいだ』、『やりたいことが叶わなかった』、『お前が出しゃばるから』……みんな、口々にあたしを責めるのよ」



 顔色がかなり悪い。ギリギリっぽいな……。



「そしてみんな必ず最後にこう言うの。『部田さんは全然頑張れてなかった。勝手に会長をして、勝手に潰したんだよ。全然ダメだった』って……」


「それは夢だ。少なくとも俺や虎蛇のメンバーはそんなこと思ってないし、みんな凛々姉の虎蛇が好きだよ……」


「……でも虎蛇だって、あたしが振り回してる」


「だから、振り回されたいんだってば!」



 眉をぴくりと上げる凛々姉を見て、自分の言葉が変だったと気づく。笑ってから、もう一度言うことにした。



「凛々姉に振り回されたいバカが、残ってるんだからさ」


「……本当におばか」



 ため息をつかれた。



「内情がわからず好き勝手言うヤツらは言わせとけって、凛々姉も言ってたよな。だから、まずは俺たちを信じろよ」


「……」



 凛々姉は何も言わず、PCを閉じた。



「ごめんなさい。放課後までには切り替えるわ。HRに出ましょう」



 そして下に置いていたカバンを取り上げて、窓の戸締りを確認しはじめた。


 ……やっぱ様子が変だ。どうしてこんなにネガティブなんだ。

 きっかけの原因を突き止めて心の枷を外さないと、放課後になってもあまり気分は変わらないんじゃないのだろうか?


 不安は消えなかった。

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