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彼女たちを守るために俺は死ぬことにした  作者: うんちん丸
第4部 お姫様に寵愛を
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9/26(月) 部田凛々子①

 今日の早朝集合は二人だけにしてもらった。


 俺が投薬治療明けで全員のフォローはキツイ(主にツッコミ面)というのもあるけれど、みんながいるといろんな仕事は捗っても、凛々姉は自分の仕事に集中できなくなる。


 それに少し話しもしたかったし。



「つうわけで凛々子さんや」


「……」



 初っ端(ショッパ)から机に伏せっていた。おいおい。と思ったけれど飲み込む。



「そっちのも手伝うよ」


「……うん。やらないとね」



 のそりと体を起こす。だいぶ具合が悪そうだった。



「そだ凛々姉、手え出して」


「ん……」



 うつろげに、疑いなく素直に手の平を出してくる。

 本当に大丈夫かよ……と思いながら、その上にラムネをいくつか転がし出した。



「……なにこれ」


「ラムネのブドウ糖って頭動かすのにいいらしいから、たまに食ってんだよね、俺」


「だからって、なんでアンパンマンなの」


「あっ!? これはもう癖っつうか……」



 子どもの頃、音和の機嫌が悪くなったら口に含ませるために買ってたからなあ。癖でずっと同じの買って、今は自分で食ってるけど、もう大人だから普通のラムネを買ってもいいんだよな。

 つかなんだよアンパンマンって、恥ずかしすぎじゃん俺。


 わたわたしていると凛々姉は柔らかく微笑し、ひとつぶラムネを口に含んでノートPCのふたを開いた。




 こうやって二人で作業をしていると、中学生の生徒会選挙を思い出す。

 俺でも地味にクるものがあるんだけど、凛々姉ももしかしたらどこかでストレス感じてるのかもしれんな。


 だったら、本当は俺といないほうが、精神的にはいいのかもしれない。

 でもきっと、これは乗り越えなきゃいけないような気もしてる。そうしないと俺たちの関係は、文化祭が終わったら消滅してしまうんじゃないかって。そんな不安がどうしてもぬぐえない。


 俺だけサヨナラとかなら仕方ないって思えるけど、凛々姉の性格的に俺だけじゃなく、俺に関わる全ての人を。七瀬や詩織、音和、いちご……。全員との関係を初期化してしまわないか、心配なんだよな。



 朝日が凛々姉の顔を照らす。もくもくと手元の資料をPCに打ち込んでいる横顔が美しいと思った。造形だけじゃなくて、真剣な表情が綺麗だった。


 凛々姉の茶色がかった黒目が、つつと横に流れて目が合う。


 げ。見てたのバレた。


 怒るかと思いきや、ふっと困ったように笑って、再びPCに目を戻した。


 ……よし。俺も頑張ろう。

 きっと文化祭までうまく進む。そしたら、わだかまりもなくなるよ。


 手元の山積みの資料をつかむ。

 俺たちは特に会話を楽しむこともなく、未来のために、まじめに手だけを動かし続けた。

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