表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女たちを守るために俺は死ぬことにした  作者: うんちん丸
第4部 お姫様に寵愛を
195/301

9/20(火) 部田凛々子⑦

 新しい花火が火を吹いて、目の前でばちばちと閃光を発する。



「次はどれにしようかなー」



 お〜、楽しんでくれてるじゃん。



「俺さあ、今年の夏、花火してなかったから。最初で最後の花火ができてよかったよ」


「そうなの? ……でもあたしも結局これが今年初ね」


「お互い忙しかったんだなあ」


「あたし、こう見えても受験生よ」



 バケツに終わった花火を捨てて、次の花火を適当に掴んだ。



「凛々姉の誕生日に行った遊園地、楽しかった」


「……ありがと。いい誕生日だったよ」


「ロリ耳だっけ。あれさぁ、ずっと喜んでつけてたけど、夢の国のゲートを抜けたらスッと真顔になって取ってたのウケたんだけど」


「あれはそういうものだから」


「誕プレってことで買ったのに、ちょっとショックだったなー」


「えっ! そう、なの? それはごめん……」


「どうせ家に帰って捨てたんだろー。ちえっ」


「そんなわけないっ! ちゃんと机に飾ってる!」


「そ、そうなんだ?」


「まあいただきものだから。そりゃね」



 意外だった。ファンスタ好きだと思ったけど、そんなに大切にしてもらってるとは。可愛いところあるじゃん。



「んじゃ、写真は?」


「!」


「? ほら、ラビリンとのスリーショット」


「……スマホに送ってもらって、そのままよ」


「買ってた方は?」


「あぅ……べ、別にどう使ってたっていいでしょ!?」



 え、なんかに使ってんの? 俺に呪いとかかけてないよね!?



「というか、あたしがそういうの好きなの、誰にも言ってないでしょうね?」



 今好きって認めたよな。怒ってるから気づいてないのかな。やれやれ。



「言ってないけど。みんなで行けばいいのに」


「いや、だってあたし、そういう可愛いのは……」



 もごもご言いながら拗ねた。



「えー、凛々姉可愛いのになあ」



 自分のブランディングとかあるんかね? 女子はわからん。



「……可愛いとか、あんたそういうの誰にでも言ってるといつか刺されるわよ……」


「さすがに誰にでもは言わんぞ……。つかなんか音しない? ちょっと黙って」



 腰を上げてあたりを伺うと、渡り廊下を先生が歩いているのが見えた。しかもチラチラこっちを見ている気がする。


 結構煙も出てたし、バレたかな……。



「凛々姉、使ってない花火、全部袋に突っ込んで!」



 古い校舎だから足音が響いて気づいたのはよかったけど、俺たちの声も向こうに聞こえてた可能性もあるな。やべやべ。


 花火を落とさないように押さえて、バケツの水を校舎裏へぶちまける。



「こっちはOKよ!」


「んじゃそれと自分のカバン持って、そこのはしご上がって!」



 俺もカバンを引っ掴むと、凛々姉の後を追った。




ガチャガチャ……

ガタン。



「…………声が聞こえた気がしたけど、気のせいか?」


「幽霊とか見つけないでくださいよ〜」



 あぶねえ、危機一髪……。

 案の定、屋上に教師が来てしまった。


 俺たちは入り口から見えないように、給水塔までのぼり、はしごからも見えないように裏側で肩を寄せ合い息をひそめた。もちろん、教師がはしごを上がって奥まで調べられたらアウトだ。


 しばらく話し声が聞こえていたが、諦めたらしく、屋上の鍵を閉めて出て行く音がした。


 ふう。と二人で安堵のため息を漏らす。隣で凛々姉は非難めいた視線をよこした。



「不良はどうしてこういう、心臓に悪いことが好きなのかしら」


「カップルになりたいんじゃん。ホラ、吊り橋効果的な」



 適当なことを言うなとばかりに睨まれるが、すぐに顔ごと逸らされた。



「んじゃ、見つかる前に帰りますか」


「……そうね」



 ちらりと隣を伺うと、凛々姉はまんざらでもないような、久しぶりに柔らかい表情だった。


 優等生の女子とイケナイことをする、背徳感が楽しい夜だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ