表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女たちを守るために俺は死ぬことにした  作者: うんちん丸
第4部 お姫様に寵愛を
194/301

9/20(火) 部田凛々子⑥

 ……たっしっかー。あったあった。



 野中のロッカーを探って、目的のブツを出す。凛々姉にはバケツに水をくんで待ってもらっていた。



「ありがとっ。行くよー」



 凛々姉の手からバケツを受け取り、階段をのぼる。



「チュン太、これ以上はなにも……」


「あれ? 凛々姉って屋上行ったことなかったっけ?」


「え、屋上?」



 屋上の扉を開ける。凛々姉は恐る恐る外に出て、しばらく言葉を失っていた。



「……きれい」



 ようやく口からこぼれたとおり、今日は星がよく見える。



「黒い海もまたいいよねー」



 バケツを下ろして、フェンスに寄りかかる。凛々姉も隣に来て、夜を眺めた。



「気持ちいい……」



 潮風が吹き、夜空はきれいで、自然に囲まれた俺たちの街。


 そしておもしろい先輩が隣にいる。いい人生なんだよなあ、俺。



「で、この時間から掃除?」


「いやだ、これだからまじめちゃんは!! ほら、花火しようぜ」


「…………ええっ!?!?」



 手に提げていたビニール袋から、「お徳用!」と書かれた割とでかめの花火を取り出す。



「ばっ! ここ学校! 火災探知機とか……」


「屋上だからないけど」


「いやでも、向かいの校舎の先生に見つかったら……!」


「端でやれば大丈夫っしょ〜。野中といつかやろうって買ってたんだよなー1年のときに」


「だったら、そんな大事なものを使ってもいいの?」


「また買えばいいし。今日、凛々姉と、学校で思い出作りたいなって思って」



 凛々姉が無言になる。暗くてよく見えないけど、たぶん怒ってはない……よね?


 花火を出して並べて、スマホのあかりで説明書をなんとなく見る。



「あ、あたしこんな校則違反、今までやったことないし。これ誰かに見つかったら、虎蛇だってかなりヤバいわよ」



 隣で凛々姉はそわそわし始めた。確かに今問題を起こすとまずい……。



「んじゃ、今日はちょっとだけにしようぜ。どれからやるー??」


「やるのはやるのね……」



 観念したように、凛々姉はカバンを置いて隣にしゃがみこんだ。


 あたしはこんなとこにいられるか! って出て行かなかったのが意外だったな。

 まあそうやってひとりになったら、殺人鬼に殺されるのがオチだもんね。フラグ回避してえらいぞ凛々姉♪


 先生たちに見つからないように奥側のフェンスに座って、手持ち花火に火をつけた。チリチリと先の花びら紙が燃え、根元に点火し、色のついた火が噴射する。



「わあ……!」



 あかりに照らされた凛々姉の目が輝く。



「そのままじっとしてて。火もらうね」



 自分でも手持ちを選び、凛々姉の花火に近づける。先端が燃え、少し待つと同じように火が噴出した。



「火はバトン方式でつけてください」


「わ、わかった」



 ただの火なのに、どうしてこんなにわくわくするんだろうなあ。令和になっても古くからある花火、みんな好きだし。


 と、凛々姉の花火の威力が弱々しくなっていく。



「凛々姉、次の花火の用意用意!」


「ええっ、どれ?」


「いや俺もどれがどんなだか知らんし」


「確かにそうよね。じゃあこれにする」



 選んだ花火の先を、俺のまだ元気な花火の根元に寄せてくる。

 ……なんかこの行為、改めてドキドキするな。


 妄想がたくましいせいで、ちょっと口数が減ってしまう俺だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ