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彼女たちを守るために俺は死ぬことにした  作者: うんちん丸
第4部 お姫様に寵愛を
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9/9(金) 部田凛々子③

 部活動まわりをしているとスマホに連絡が入った。全員虎蛇に集合とのことで戻ったけど、控えめに言って、お通夜だった。



「資料は見つかりましたけれど、犯人はわかりませんでしたね……」


「え、そんなの生徒会しかいないじゃんー!」



 立ち上がって抗議する七瀬の横で、いちごが七瀬の制服の裾を引いて首を振る。



「でも平澤くんも犯人見たわけじゃないし、証拠がないんだよ」


「えー証拠ってなによー! そんなのコ◯ンが勝手に見つけてればいーじゃん!!」


「確かに怪しいけど……虎蛇が留守のときは鍵かけてるし、ここの鍵は先生か会長しか持ってない。職員室で聞いたけど、貸出記録はないって言ってたよ」


「えっ、じゃあ幽霊的な!?」


「!?」



 音和がビクッと反応していた。



「……」



 そして気になるのがやっぱり凛々姉だ。紙束を見つめたまま一言も喋らない。


 不安が室内に蔓延し、誰もが無言になる。


 みんなが凛々姉に注目していると、彼女はふうっとため息をついて椅子を揺らした。



「明らかに悪意のある遺棄とは、遺憾だわ。しかも学校の資料をね」


「指紋を調べるとかできないのかな?」


「それはあたしたちでできることじゃない。この程度では警察も来ないだろうし、来ても犯人がわかる保証もない。その場合、むやみに時間をとられて進行が遅れるだけね」



 俺の提案をバッサリと叩っ斬る。


 うう……。でもきっと、凛々姉のことだからほかに考えがあるはず。



「じゃあチュン太、枚数確認して。揃っていたらコピーを取って、急いで生徒会室に提出してもらえる?」



 手元の紙を軽く俺の前に投げて、凛々姉が言った。


 ……それだけ?


 期待ががらりと音を立てて崩れる。



「え? それじゃ、犯人探しは諦めるの? これを盗んで捨てたやつを不問にするって言うのかよ!」



 苛立って声を荒げる。



「出し物の差し戻しだって、確かに凛々姉の言うことはもっともだよ。それでも納得してないやつらになんとか譲ってもらって、考え直してもらったんだ。それをさっき、無くしたって話したらどれだけ言われたか! 音和だってひとりで頭を下げて、怒られてきたんだけど!?」



 俺はいい。クラスのことでも傷ついているこいつを、さらに苦しめた挙句がこの結果ってあんまりじゃないか?



「虎蛇の信用が落ちている今、それを取り戻さなきゃいけないんじゃ」


「何を言ってるの。あたしたちが今やるべきことは、本日提出のその書類を揃えて生徒会に持っていくこと。三度は言わない」


「……ああ、凛々姉は正論しか言わないよな!」



 プリントの束を持って、パラパラと確認する。隣で、音和がじっとその作業を待っていた。



「……邪魔が入るのは想定内。いくらでも来ればいいのよ」



 ぽつりとつぶやいた凛々姉の声は、そのときの俺には届いていなかった。

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