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彼女たちを守るために俺は死ぬことにした  作者: うんちん丸
第4部 お姫様に寵愛を
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9/8(木) 穂積音和⑤

 2限3限4限と、自分の席で大人しく過ごした。怖くて立てなかったからっていうのもある。


 4限の終鈴が鳴って、ホッと肩の力が抜けた。お昼休み、早く知ちゃんと合流しよ!



「ねえ」



 お弁当を出していると、中村さんに呼ばれた。後ろに田中さんと水川さんもいる。



「ちょっとさ、話があるんだけど」



 中村さんはくいっと親指をあげた。顔めっちゃ怒ってる。



「……二人でなら」


「は? お前が指図すんなよ」


「じゃあいやです」



 だって怖いから絶対むり!



「いやじゃねーよ、今日ウチらにあんなことしておいて!」


「あんなことがどのことかわかんないけど、なにかしたなら、あたしじゃなくて中村さんじゃない?」


「だから、あんたのそーいうところがっ……!」



 ハッとした顔で中村さんは口を閉じた。いつの間にか、クラスのみんなが注目してたからだ。



「ミサー、あんま穂積ちゃんいじめんなよー(笑)」



 少し離れた机でお弁当を広げていた中村さんの彼氏が茶化した。



「別にそんなんじゃないっ。女同士の話だから口挟まないで!」



 中村さんの彼氏はわかったよというふうに、ひらひら手を振った。


 中村さんが振り返る。



「あのさ、手間かけさせないでくれる?」


「さよならっ」


「あ、ちょっと!!」



 捕まる前に弁当箱を掴んで、あたしはダッシュで教室を出た。

 まじ無理です。




 ◆◇




「……で、怖かったから逃げてきた」


「なんなのソレ、お前やっぱ変わってんなー(笑)」



 屋上でさっきまでの話をすると、たかおみがウケた。

 でも、知ちゃんと日野さんは困ったような顔をしている。



「うーん。はいっ!」


「はい、なんだねコミュ強のいちごさん」


「はい。コミュ強のあたしの見たところ、その子たちとの亀裂、どんどん深くなりそうなんですけど」


「そうだな、同意。なあいちごさんや」


「はいなんですか」


「この場合の最適解ってなんだと思いますか?」


「そうですねえ……。ひとまず刺激になりかねないあい活!は一旦やめて、別の作戦を考えるべきかなーと。あたし的には食料がもらえなくなるのはちょっと痛いけど、音和ちゃんファーストでいきましょ!」



 あれやめるんだ。やっとちょっと慣れてきたのにな。



「なあ。強気なのはいーけど、嫌がらせひどくならんの?」



 たかおみ、心配してくれてるのかな? なんか変な気分……。



「多分だけど、クラスが仲いいって自慢してるし、誰かが見ているところでは派手なことしなさそう。だから、人気のないところについて行かなかったらいいかなって」


「確かにうちの高校偏差値高いほうだし、堂々と怪我させるようなバカっていないよな。その分陰湿なのはありそうだけど……」



 知ちゃんもいろいろ考えてくれてる。


 今日はちょっと階段から落ちるかと思ってひやっとしたけど、でもあれを事故って言われたら、証拠とかないし。



「女って面倒くさいね!」



 ごろんと寝転がって、あくびをしながらたかおみが言う。



「んじゃ俺と付き合ってることにしたら? 先輩の女には手を出さねえだろ」


「むり」



 すぐに断った。



「あ? なんで俺が振られてるみたいになってんだよ! ブチ××(規制)すぞ!?」


「嘘でもそういった経歴を残すくらいなら死を選ぶ。それにあたしには知ちゃんがいるもん」


「ハハハ、あの子たち、俺のこと絶対下に見てるよ……。役に立たないと思うよ……」


「ねえ俺も死んだほうがマシって言われたんだけど!?」



 知ちゃんとたかおみが抱き合ってメソメソはじめた。かっこ悪……。



「……むー」



 日野さんだけお弁当を持ったまま、もぐもぐしてた。




 相手のスペースに飛び込んで行かなければいいと思っていたけど、実際のところは難しくて、5限目の体育に捕まってしまった。

 友だちがほかにいないあたしは中村さんに引っ張られて、球技の相手をさせられた。小さくあざになった。


 教室に戻ると、6限のノートがなくなっていた。

 斜め前の席の中村さんの彼氏がルーズリーフを貸してくれたけど、たぶんそれも気付いたと思う。


 今日は早く虎蛇に行こ。上靴も、持って帰ろうかな……。

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