9/8(木) 穂積音和②
「はーーームカつく!!」
昇降口で両脇の二人から解放された中村未彩が、ロッカーに拳を叩きつけ、怒りをぶつけた。
「ウチの彼氏とあいつ、さっき話してたじゃん!? ありえなくね!?」
「あーね、穂積チャンでしょ〜」
ゆるい語尾が特徴の水川もなかは、相槌を打ちつつミサの背中をぽんぽんと叩く。
「最近クラスでも喋ってんの見るけど、ホッント不快!」
それでも勢いが止まらないミサは喚き散らした。校門を振り返りながら、頭のお団子にチュパチャをさした田中杏樹が面倒そうに舌打ちする。
「男ウケだけはいいんだよねーあいつ!」
「これみよがしに野中先輩とも喋ってるし、最近ちょっと調子乗ってない?」
「あ〜わかりみ〜」
ケラケラと笑いながらもなかがミサを肯定する。それに満足したのか、ミサはようやく靴を脱ぎだした。
「せっかく忠告してやったのに、ありえないんだけど……」
ローファーをロッカーに入れながら、ぶつぶつと恨み言は止まらない。
友人のアンジュともなかも頷き合う。
「だいたいさー、ミサの彼氏に色目使った時点でアウトっしょ!」
「忠告も聞かないしぃ、100%向こうの過失だよね〜」
「んじゃ、ウチらがなにやっても正当防衛じゃん!?」
二人の会話を聞きながら、ミサは上靴を足元のすのこに投げて、眉間のシワを解いた。
「そうよね。こっちは傷つけられたんだから、わからせるしかないでしょ」
長い髪の毛をばさっとかいて、ミサはニヒルに笑うのだった。