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彼女たちを守るために俺は死ぬことにした  作者: うんちん丸
第4部 お姫様に寵愛を
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9/7(水) 部田凛々子②

 あーーーー疲れた。結局、今日は7人のお相手をした……。


 最終的には3人同時に俺の膝で泣く神々しいアートが出来上がり、七瀬と音和が変な顔で笑いをこらえてたな。詩織先輩も嬉々としながらスマホで写真撮ってたし。


 凛々姉が別室から帰ってきたのを合図に、本日の受付終了。つーわけで、やっとトイレにも行けた。


「ゥチの膀胱、マヂ強くねあざまる水産系じゃね?」と下半身に声をかけ、ご機嫌で男子トイレを出る。



「……」


「……聞こえてました?」


「えっと…………ちょっとだけかな」


「忘れてください」



 詩織先輩と、トイレの外でばったり出くわしてしまった。


 口元に手を当ててくすくすと笑い、先輩が頷く。それから自然と並んで、虎蛇へと歩き始めた。



「今日、すごい人気者でしたねえ、トモくん」



 う、やばい。慣れない名前呼びについ顔が赤くなる。



「……いや、たくさんの子羊を抱えたけど、俺の膝なんかで良かったんかね」



 つか俺なんかより、詩織先輩みたいな癒し系の人のほうがよかろうに。



「トモくんは優しいですから」


「先輩のほうがいいでしょ。ってだめだ、先輩の膝は誰にも貸せん! ……なるほど、消去法的に俺になるのは必然だったのか」



 自分で解決しちゃった。



「なんだか、久しぶりにお話ししますね」


「ね。合宿が最後で……」



 と言ってから、先輩が背中に頭コツンをしてくれたのを思い出して、もはや顔が大火事になってしまう。



「夏休みは全然連絡取ってないし、2学期になっても話せなかったから……。ちょっと寂しかったです」



 待って待って、もう超胸キュン! どんだけ俺を燃やす気なの!!


 人たらしな人だわと隣を伺うと、うつむきがちだからよくわからなかったけれど、先輩の顔も赤い気がした。



「そっちは夏休み、なにしてたの?」


「私はお勉強が多かったですね。両親に大口叩いてしまったので、大学はきちんと合格しなければいけませんし」



 そう言う先輩の顔は、だいぶ晴れやかだった。ご両親とうまく行ってるみたいだな。



「トモくんは? 連絡くれなかったですね」


「え! ああ、ちょっと自分探ししていて。ほとんど誰とも連絡は取ってなかったのですよ」


「? お肌真っ白ですけど」



 おかーん! やっぱり自分探しは全然言い訳につかえーん!!



「……オーストラリアに行きまして」


「確かに今は冬でしょうけど、確かあちらって紫外線はまあまあ強いですよね」


「……そうなんですか?」



 だめだ、先輩は騙せないぞ!



「……誰にも内緒ですよ? 念のために検査入院とかいろいろして、あとは家に引きこもってたんです。おかけでもうバリバリに元気!」



 詩織先輩は納得したように頷いた。



「そうだったんですか。私にできることがあったら言ってくださいね」



 真剣な視線を向けてくる。先輩、嘘ついてすみません。



「それからトモくん。文化祭と中間考査が終わったら、また遊びませんか?」


「ん? 俺でいいの?」


「トモくんがいいんですよ」



 顔を見合わせてほこほこと笑う。

 疲れていた気分が、いつの間にか消えていた。

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