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彼女たちを守るために俺は死ぬことにした  作者: うんちん丸
第4部 お姫様に寵愛を
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9/6(火) 穂積音和

 今朝のあい活!は一人ひとり、少し離れた位置にフォーメーションを変えてみた。


 ただし離れていても、いちごのスーパー元気な声はすぐ隣にいるかのように届いてくるのだが……。



「あっ……」



 機械的にあいさつをしていた音和が止まった。校門から派手な男子2人組が歩いてくる。おそらく1年みたいだけど、あいつらのこと知ってるようだな。顔も青くないし、いけるか?



「あっれ? おはー穂積ちゃん」


「おっすー! これなにやってんの」



 お? 向こうから声をかけられてる!?



「ぬ、ぬぬ……」



 音! あいさつだ、お・は・よ・う?(口パク)



「よーしよしよしよし。つか今日2限の教科書忘れちゃった。また見せてー!」



 なっ!? あの笑ったら目尻にシワのできるいやらしいタイプの男、ボディタッチしてないか!? しかもそれが爽やかでむかつく!



「ちょっやめっ、って、なんで今日もー!!」


「えー、なんかお前、穂積ちゃんと距離近くなーい? 俺とも仲良くしよーぜ」


「やっ、待っ……」


「いっかーーーーーん!!!」


「えっ、知……ちゃん?」



 はっ!! しまった、つい飛び出してしまった。


 我にかえるも遅く、目の前の全員、ドン引きしてるわな。



「え、誰? 穂積ちゃんの……彼氏さん?」


「んと……」


「あい活!メンバーの小鳥遊だ。みんな気持ちのいいあいさつをありがとう! しかしお触りは厳禁だぞ。さ、行きたまえ!! はーっはっはっは!!!」(野太い声)


「あ、はーーい」


「うむ! これからも音和をよろしく頼むよ!!!」(ダンディな声)



 不審そうに振り返りながら歩く1年を、爽やかな笑顔で手を振って見送った。



「ねー、音和ちゃんがお友だちできないの、もしかして誰かさんのせいなんじゃないかなあ?」



 肩を叩かれて振り向くと、いちごがにっこりと笑っていた。

 自覚してます。申し訳ありませんでした。




………………


…………


……




 自動販売機の脇のベンチで3人並んで休憩しながら、音和に昨日教室であったことを聞いて、やっと納得した。さっそく話ができたのなら、朝恥ずかしい思いしながら頑張ってるかいあったな!



「どうだ、あいさつは偉大だらう」


「さのよふで」


「さふさふ〜」



 音和といちごが喋っているのを聞きながらジュースを飲む。



「……あたしが無関心なの、みんな伝わってたのかな」



 手元のリンゴジュースのパックを見つめて、音和はひとつ大きなため息を落とす。



「周りの人、誰もあたしのこと分かってくれないし、やってることも下らないって思ってた。けど、ほんとはそんなあたしがいちばん幼稚くて、いたらなかったのかも」



 ……こいつ。


 元が素直で、真っすぐに育ってきたから、こうやって柔軟に意識を変えられるんだろう。

 それが音和のいいところで、尊敬している部分だ。



「すぐに全部がうまくはいかないかもしれないけど、お前の思いは必ず届くよ」


「……うん」


「そうそう。音和ちゃんなら、クラスの子も大事にできるはずだよ。知実くんを大事に思う気持ちの半分でいいから、それをクラスに向けてみて」


「半分か……結構大きいけど」


「じゃあ1/3?」


「ん。妥当」



 親指を立てやがった。



「そういうこと平気で言うもんなぁ……」


「知ってるくせに」



 真顔で言うものだから、恥ずかしさをごまかすために手で顔を覆った。



「俺も……これでも、お前のことかなり大事にしてるんだぞ?」


「うん。でもあたしの気持ちのほうが大きいよ」


「あはは、そうだよね〜!」


「……はは」



 いちごのように笑うことができなかった。


 それはすごく自業自得なのだけれど。

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