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彼女たちを守るために俺は死ぬことにした  作者: うんちん丸
第4部 お姫様に寵愛を
155/301

9/5(月) 穂積音和①

「いちごさん、これは……」


「手っ取り早く愛される方法だよ!」


「むちゃくちゃ不審じゃないか!?」


「え! なんで?」


「なんでって、なあ音和」


「……」



 頭にくま耳のようなお団子をたずさえて超ヤル気ないちごに対し、音和はこの状況にキャパオーバーらしく、スタート前から停止している。



 いちごの「友だちを作るための提案」より、俺たちの「あいさつ活動!(通称・あい活!)」が始まった。


 朝、校門の真ん中に立つ俺たちは、完全に登校してきた生徒たちに避けられているが、いちごなんかお手製の「あいさついちばん!」と書かれたたすきで仁王立ちしている。メンタル鬼かよ。



「あいさつか酒を交わせば、人類みな兄弟って相場が決まってるんだよ〜。あっ、誰かわかんないけど初めまして日野いちごです! おはようございまーす!!」


「なにこの人、スーパーコミュ強! 無理無理! 怖い!!!」



 しかもこのあい活!だが、主役の音和だけにさせるのではなく、俺といちごもあいさつに付き合うというのがポイントらしい。


 俺は嫌だったけれど、「人に頼んでおいて、自分はやる気ないのってどうなのかなって思う」とガチトーンで言われたので、従うしかなかった。



 だけど、結果的にその戦略は正しかった。一番の懸念は朝、音和が起きれるかどうかということだったが、俺といちごの二人っきりで何かすることを匂わせると、早朝にも関わらず音和もまんまとやって来た。


 まあ準備が終わった瞬間、「 だ ま さ れ た 」ってド蒼白になってたけど。




 三人で並んであいさつを続けていると、音和がぴくりと反応した。ひとりで歩いてきている黒髪ストレートヘアの女子は、どうやら今日初の知っている顔らしい。


 横から小突くと、ぷるぷると震えていた膝をぐっと手で抑え、音和は下を向いた。



「ど、ども……」



 さらりと前髪を揺らしながら不思議そうな顔をして、女子は音和の横を通り抜ける。



「!? 今の惜しいのではーーー!?」


「いやいや、反応はあったよー! やったね音和ちゃん!!」


「!?!?」



 俺といちごが、両隣から音和をもみくちゃにする。



「頑張ったな〜〜〜〜えらいな〜〜〜〜〜! あとは、朝のあいさつは、おはようが好ましいぞ!」


「どんまいどんまーーい☆ 次こそきっとサクセス!」



 大げさに音和の頭を撫でまわしてやる。


 無駄にテンションが高いこの儀式。いちごに「褒めてその気にさせようね!」と言われてヤケのつもりだったけど、普通に楽しくなってきて、俺たちは俺たちでノリノリだ。



「おー、朝からなにやってんの」



 音和を囲んでいると、目の前で立ち止まる男がひとり。



「なになに動画撮影? 俺もやりたい」


「ちがっ。たかおみは、行け!!」


「ひどくねー、仲間外れかよー」


「でかくて暑苦しいのっ! って、あっ……」



 強気に歯向かっていた音和の顔がひるんだ。全員がその変化に気づき、音和の視線を追う。


 野中のわきを通り過ぎるのは、あのときのギャル3人組だ。



「……」



 彼女たちは不機嫌そうに音和をにらみつけて歩いていく。


 音和はヘビに睨まれたカエルのように、口を一文字に結んでうつむいた。



「? おっす」



 なぜか、野中があいさつする。ギャルたちはそれに驚いて声を上げた。



「えっ!? あっ、おはよーございますっ!!」



 答えると、キャアキャア言いながら足早に校舎に向かった。



「……な?」


「フーーーッ!!」



 得意げな顔を見せる野中に、音和は威嚇していた。

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