表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼女たちを守るために俺は死ぬことにした  作者: うんちん丸
第4部 お姫様に寵愛を
151/301

9/2(金) 穂積音和①

 昼休み、いちごと並んで屋上へ向かっていると、後ろから声をかけられた。



「知ちゃん……」



 この学校で「知ちゃん」と呼ぶのはあいつしかいない。

 しかし覇気のない声だな?



「せんぱーい! 私たちもご一緒していいですか?」



 振り返ると音和の隣に、3人の見慣れない女子たちがいた。



「誰?」


「えっと……」


「あたしたち、穂積ちゃんと同じクラスなんです!!」



 パチンとウインクをした中央の女子は、薄い茶髪のセンターパートのロングヘアに切れ長の目が特徴的で、薄い唇には真っ赤なリップが色づいていた。


 うおお、正真正銘のギャル! ギラついてんなっ。


 隣のいちごを見る。



「ああ、なんか安心する……」


「どういうことかな、知実くん?」


「はっ! いや、他意はないです」



 やばい、いちごちゃんがジト目だ。


 ともかく!



「なんだよ、友だちがいるならそっちでメシ食えよ。ほらお前の弁当」



 袋から自分の弁当だけ抜いて音和に渡す。



「違くて、先輩! たまには後輩とも交流しましょうよっ」


「文化祭実行委員されているんですよね〜。かわいい後輩っちに、文化祭のこと教えてください〜♡」



 右サイドだけお団子にした金髪に、チュッパチャップスを3つさした超ミニスカートのギャル。それからピンクのベストを着た、ふわふわのロングヘアで目だけバチッと目立つ色白ギャルが、俺のシャツの袖をつかんで離さない。



「あ〜〜〜〜悪い。こういうの嫌がるのがひとりいるんだよね。可愛い女子に人見知りするっていうか」



 野中、騒がしい女子のあしらい方が鬼だからな……。



「え〜〜〜〜〜〜〜」


「んじゃ、うちの子をよろしく頼むよ!」


「知ちゃ……」


「偉いな音和。また放課後な〜」



 音和の頭をくしゃくしゃに撫でて、再び階段をのぼる。


 うんうん。二学期早々、いいできごとだ。


 数段上にいたいちごを追い越して、屋上の扉を開けた。



 それから、給水塔のふもとのいつもの場所へまっすぐに向かった。


 後から上がってきたいちごは、何か言いたげな顔をしている。



「? なに?」


「ううん。ちょっと心配になって」


「なにが?」


「音和ちゃん。大丈夫かなって」


「チャキチャキしてそうな子たちだから、音和のこと引っ張ってくれるだろ」


「うん。でもちょっと……」



 首を傾げるいちごを横目に、シートを広げた。

 俺が座ると、隣にちょこんと腰掛ける。



「そういえばあいつの友だちって、ちゃんと紹介されたことないな」


「初めてなんだ?」


「うん。まあなんかちょっとだけ、もやもやするかなー」


「友だちに嫉妬? それは過保護すぎだよ〜」



 さっきまで眉根を寄せていたいちごが、思いっきり笑う。


 うーむ。音和だってクラスに友だちくらいいるよなあ。


 でも、そんな自分の知らない世界が、本当にちょっとだけ、寂しいかもと思った。


 俺も保護者とか言わずに、音和離れしないといけないな。……頑張れ俺。




  ◆◇




 弁当を食べはじめたころ、野中が遅れてやってきた。



「暑い! 死ぬ! なんでおめーら平気で外でメシ食ってんだよ」


「おつ~」


「野中くんおつ~」


「おつ~」



 文句を言いながら野中もはしごをのぼり切った。



「せっかく掃除したし使わないと。また片づけるのやだし」


「せやけど小鳥遊ぃ」


「ネクストコナンズヒーント、動くのだりぃ」


「それは答えかな?」



 暑いがシートは給水塔の陰に広げてるし、我慢できないことはない。さすがに昼寝とかはしたくないけど。



「そういえばお姫がひとりでメシ食ってたけど、ケンカでもしたー?」



 ピタリと、箸を持つ手が止まった。



「は? 見間違いじゃね?」



 だって、さっき友だちとメシ食うって言ってたし。



「? 今日は俺らと一緒にメシ食うって言ってたのにいねーじゃん。それにあいつ、普段からよくひとりで昼メシ食ってるぞ?」



 野中は眉間にしわを寄せながら、パンの袋を開ける。



「ちょっと、知実くんってば」



 いちごが心配そうに俺を揺する。あぶね、びっくりして固まってた。



「野中、音和はどこにいた?」


「1階の渡り廊下。倉庫舎に行く途中の」


「なんでお前、そんなへんぴなとこ……」


「つか、行かねーなら俺が行くけど?」


「いや俺が行く」



 箸を置いてすぐハシゴに手をかけた。


 一体なんなんだよ、あいつは!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ