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彼女たちを守るために俺は死ぬことにした  作者: うんちん丸
第4部 お姫様に寵愛を
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8/30(火) 野中貴臣③

 教室で軽く担任の話を聞いたら、すぐに始業式のために体育館に向かうことになった。クラスメイトがぞろぞろと教室の外に出はじめる。


 面倒臭いんだよなーこの行事。もはや校内放送でいいじゃんって思うんだけど。


 野中も席を立ち上がってこっちに来た。

 俺の目の前で止まると、無表情のまま親指をくいっと上げる。



「屋上」


「誘い方っ! もっと優しくしてくださる?」



 しかもこの脈絡のなさだよ! それに集会に出ないという後ろめたさはひとかけらも感じられない。



「ちょっと話そーぜ?」



 ふと窓の外を見る。



「いーけど」



 あいにく空は晴天。屋上日和。


 ということは、そういうことなんだろう。



 クラスメイト全員が教室から出たのを見計らって、俺たちは屋上へと向かった。



  ◆◇



「知ちゃん?」



 屋上につながる最後の階段を登っているときだった。名前を呼ばれて振り返ると、なぜか音和がいた。



「あれ? 始業式は?」


「そっちこそ!」



 そう言うと、膨れっ面で階段をあがってきた。


 音和のほかに人の声は聞こえないし、もう1年生は体育館に行ってるみたいだけど。



「俺たちは大人だからいいんだよ。子どもはちゃんと行きなさい」


「1こしか違わないし! それにもう今からひとりで行きにくい」


「なにしてたんだよ……」


「トイレ行ってたの!」


「どんくせえなー」



 まったく、置いて行かれたのか。高校生なのになにやってんだ、大丈夫かよ。本当に、こいつだけはいつまでたっても世話が焼ける。



「おーい。そこで止まってると目立つんで。来るならはやく来い」



 先頭の野中からお許しが出たので、とりあえず屋上へと、足早にのぼって行く。



 そして久しぶりに屋上のドアを開けた。俺たちにとっては自由の象徴! と、期待に胸を膨らませて。


 ……結果、膨らませすぎてたんだけど。



「きたねっ!」

「きたない!」

「きたなっ!」



 ユートピアはもはやディストピアへと変わり果てていた。


 風で飛んで来た砂埃やゴミが、あちこちに散乱している。



「ヤダー、ここも全滅ーッ!!」



 先にハシゴをのぼり、給水塔の下を見に行った野中の悲痛な声が聞こえてくる。


 まあ大雨や台風のあとも、似たようなことにはなるんだけどさー。



「音和、来てくれてありがとうな」



 隣で呆然と立ち尽くす音和の肩を叩いて微笑みかける。



「音和クラス近いだろ。なんか掃除できるもの適当に持ってこい!」



 さらに上から容赦ない声が飛ぶ。



「ってことで、よろしくぅ!」


「!?!?」



 目をぱちぱちさせている音和の背中を問答無用に押し、屋上から追い出した。


 素行が悪いとか言われてるけど、休み明けに人知れず大掃除しようとする俺たちって、結構かわいくない?って思うんだよなーっと。

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