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彼女たちを守るために俺は死ぬことにした  作者: うんちん丸
第4部 お姫様に寵愛を
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2019年 冬①

 “平均以上”じゃダメだった。

 常にトップにいなければ、誰も評価してくれない。


 だから勉強だけは誰よりもした。部屋に置いてある本はビジネス書や自己啓発本ばかり。

 体も、毎日浜で鍛錬していた。


 あたしは天才じゃないから、そうするほかなかった。


 間違えているはずがない。全てが必要だったこと。


 これらの下積みがあったからこそ、あたしは生徒会長に立候補する勇気が持てたんだから。




………………


…………


……




「じゃあ確かに拝受しますね。部田(とりた)さんのような優秀な人が生徒会長になってくれたら心強いわ。私の代よりも風紀がよくなるでしょうね」


「そんな、ありがとうございますっ」



 担任に出せばいいのに憧れの生徒会長にあいさつしたくて、直接生徒会室に生徒会長立候補の届けを持って来ていた。


 (ゆずりは)生徒会長はあたしの理想だ。


 ううん、あたしだけじゃない。先生も生徒もみんなが一目置き、先輩が生徒会長になってから、学校が穏やかになった。



 例えば掃除時間にポイント制度を取り入れたことで、校内だけでなく町の美化活動までも推進し、市長からも表彰されてたのが印象深い。


 他にも提案された新しい制度はどれも小さなものだけれど、生徒同士でのいざこざも減り、校内が穏やかになった。


 あたしも先輩みたいに人の役に立ちたい。自分の名前を、何か功績の爪痕を残したい。そんな希望に満ちていた。



(ゆずりは)の後任かー。うん、すごくいいね!」


「期待してるよー!」



 物珍しそうにしている生徒会執行部の先輩たちが、わっとあたしを囲む。



「でもまだ決まったわけじゃないんで……」


「えー、毎年立候補する人いないし。部田(とりた)ちゃんで決まりでしょ」


「そ、そうなんですか?」


「杠だって推薦だったしね」


「うふふ。そうだね。ここ数年は生徒会長は推薦の流れだよね」


「うちやること細くて多いからさー。内申書の点数稼ぎにしても割に合わないっ!! 会長になると仕事量これ以上でしょ。あんたやっぱりすごいよ(ゆずりは)!」


「そんなことないよー」


「それに代々の会長が立派すぎて、ポジションが恐れ多いっていうか。他薦じゃないと無理めな空気だよね……。でも部田(とりた)ちゃんは勉強も運動もトップクラスだって聞いてるし、非の打ち所がないよね!」



 やっぱり生徒会長ってすごいし楽しそう……!

 ちなみに、会長以外のポジションはすぐに埋まってしまうらしい。



「そんなわけで、期待してるわね。頑張って」



 杠先輩の握手は、両手で包んでくれる、丁寧で温かい握手だった。



「はい、頑張ります! ありがとうございます!!」



 生徒会執行部のみなさんに一礼してあたしは部屋を出た。


 みんなの期待を受ける高揚感、こんなに気持ちいいんだ。やっぱり自分に合ってるって確信。


 よしっ、演説考えなきゃね。杠先輩にも相談してみよう! 久しぶりにわくわくしてきたーっ!



 中学校になったら絶対に、生徒会長になるって決めてた。その目標を、これから1カ月で叶えていく。

 今までの努力を思えば、1カ月なんてまばたきの一瞬のようなもの。


 肩に力を入れるものでもない。たかが人生の通過点のひとつだ。


 こんなの、あたしの輝ける将来のための、踏み台にすぎないのだから。

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