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8/11(木) 月見里 蛍③

「アタシが第一発見者で。救出して一生懸命、月見里に声をかけたのよ。そしたら彼女、一瞬だけ目を覚ました……」






月見里! 月見里!!


……あ。せん、せ……。


これから手術するから、大丈夫だから、ね!?


しゅじゅつ……?


だから! 絶対諦めるな!!


しゅじゅ……つ。わたしがうけたら、たかなしくんも、こわがらずに……うけてくれる……かな。


絶対受けさせるから!


美原先生、そこどいてください! けが人意識わずかに有り。ストレッチャーに乗せるぞ、おいっ!


せーのっ!



月見さ……




……ほーたーるの ひーかーあり。


!?


まーどーの、ゆーうーきー。



や、やめて……



ふんふーふふ、ふんふーふふ。



だって、その歌は……。



ふんふーふふーふーふー。



やだ、終わりの歌じゃない……。






        せんせ、わたしね。


    こんなからだで、びょうきなのにね。


       ふふ、かれしがいたの。


      せかいいち、すてきな人なの。



        しあわせすぎるね。


     しんじゃっても、しかたないね。






小鳥遊が戻ってくるまで待って!

まだ早い、だめよ!!

あと少しで、帰ってくるんだから!

だから、月見里。お願いっ。


…………いかないで!!!






「……ストレッチャーであの子、歌ってた。苦しいはずなのに、そんなそぶりも見せずに、安らかな顔で、蛍の光を、歌ってたの」



 背中に回された腕の力が痛い。美原さんの肩や背中が、こんなにも小さかったことを初めて知った。



「それがあの子との最後の会話だった。自分のことより、あんたを心配してたのよ」


「ほたるは……」



 聞くのが怖い……。


 でも、聞いておかないと、ほたると出会ったこと、そして話したことが、全部、上辺になってしまうから。



「……ほたるは、最期、ひ……ひとりぼっちじゃ、なかったよね……?」



 涙があふれるのが抑えられない。


 それは美原さんも同じだったらしく、嗚咽をこぼしながら。



「バカ。アタシや医者、あんたの元相部屋の人たち、看護師、みんながいたわよ。あの子に寂しい思いなんかさせるわけないでしょ?」



 なんだよ、約束を守れなかったのは、俺だけじゃん。


 でもよかった。やっぱり、お前のまわりには人があふれていたな。



「美原さん……ありがとう」


「…………うん」

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