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8/10(水) 月見里 蛍①

 病院脇にある駐輪場は、小さな屋根がついている。建物内から見えにくい位置にあるのも好都合だ。

 野中の原付にまたがって、ペットボトルのお茶を飲み、汗が引くのを待った。



 今日は外出許可を取り、一度家に戻ってきた。私服に着替え、途中のコンビニでお金を下ろした。

 時間を確認するために家から取ってきたスマホのディスプレイをつける。


 メッセと着信、結構きてるなあ。

 といっても、ほとんどが虎蛇メンバーからだ。

 というか、音和。着信35件中27件って、おま。



「お兄ちゃん?」



 呼ぶ声に顔を上げた。



「おお……」



 思わず言葉を失ってしまう。

 普段は薄ピンクのパジャマ姿しか見たことがなかったけど、赤みの強いオレンジ色のワンピースがまぶしかったから。


 ガン見していると、ほたるは居心地悪そうに下を向いた。



「へ、変かな……?」



 はっ! ちょっと遠慮なさすぎたな、俺!



「い、いや、に、似合うなーって」


「嘘。こんなの……」


「雰囲気違って、大人っぽいからびっくりしたんだって!」



 そういえば小学生くらいに扱ってたけど、俺の3つ下だった。こうやって私服になると、それっぽく見えるもんなんだな。女の子ってすごい……。



「ありがと……。お兄ちゃん、体調は?」


「今日はかなりいいよ。ほたるは? 寝られた?」


「超寝たし、万全だよ」


「そ、そうなの?」



 なんだ、楽しみにしすぎて寝られなかったとか、ないんだ……。寝付けなかったのは俺だけか。



「?」



 ふ、不思議な顔をされた!

 そうですよね! 体調整えないと、俺たち死の危険があるからな。リアルに。



「二人とも体調いいし、今日はデート日和だな!」


「デート……」


「つか、天気じゃなくて体調でデート日和って言うのも、病院ジョークだな」


「うん。そんな少女漫画、見たことないよ」



 ほたるは少し笑った。

 うんうん。やっぱりそっちのほうがいいな。



「じゃあ、駅まで魔法の乗り物使いますわよ」



 原付から降りて、ほたるの手を取ろうとしてはっと手を引っ込めた。


 う……なんだ?

 手をつなぐくらいいつもしていることなのに、なぜか気恥ずかしい。


 結局くるりときびすを返し、そのままロータリーに向かった。

 ヒマそうにしているタクシーを目印に。

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