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7/25(月) 月見里 蛍②

 UNOの途中で、ほたるはじいさんズを見回した。



「おじいさんたちは、もうすぐ死ぬの?」



 おいほたる。それはなんでも直球すぎだ!


 じいさんズは笑いながらお互いを見合う。



「ほっほ、わしがいちばん長生きじゃろうな」


「何を白岩さんがいちばんに死ぬんじゃないか」


「いや、海老沢さんが先にポックリじゃわ」



 大爆笑である。じいさんズの年の功すげーな、おい。



「私が、いちばんかもしれません」



 ほたるはそう言うと、下を向いてしまった。



「ふむ……」



 じいさんズはそれで察したのだろう。爆笑は止まった。



「おじいさんは、死ぬのに。なぜ、私や看護師さんと、話すの?」


「ほう、変なことをお聞きなさるな? ほれ、ココで鬼、じゃ。カードを出せ」


「そこはわしが持っておる。ほれ」


「ほたるちゃんは、人を愛したことがあるかな」



 なにー!! ちょっとウチのほたるにそんな話はまだ……。



「タッキー、前のめりになってる。きもいぞ落ち着け……」



 ハッ。保護者キャラが出てしまい、ザキさんにたしなめられた。



「……ない」


「そうじゃろうな。人を愛すること、愛されることは、とても気持ちのよいことだ。幸せの灯も、それに似ているのかもしれんのう」



 そう言うと、じいさんは目を細めた。昔のことを思い出しているのかもしれない。



「他人を拒絶するのは、歩み寄ってきた人を傷つけるということだ。君が知くんに無視されると辛かろう?」


「……でも、どうせ死ぬから、耐えられます」


「そんな気持ちのまま人生を終えるのかい?」


「それは、仕方ないから……」


「生は平等ではなくとも、死は平等。みんないずれ死ぬんじゃ、早かれ遅かれな。それまでに、いかに幸せな気持ちで人生を終えるか。死ぬためにみんな生きているんじゃよ」


「死ぬため……?」



 ほたるの顔が少しだけ歪む。



「そうじゃ。終わりよければ全てよしという言葉をご存知かい? ほれ、手持ちがなくなった。わしの勝ちじゃ!」


「お前さん、ずっとビリだったのにいつの間に……。まあ、そういうことじゃよ、ほたるちゃん」


「わしらも死ぬのは怖いよ。だからこうやって、無理にでも笑っていたいのかもしれんな」


「おい、琵琶さんは無理に笑っていたのか」


「ほっほっほ、どうじゃろうな~」


「……」


「死を恐れなくなることはいけない。でも、死は敵ではないんじゃよ。常に自分の隣にいる……お友だちだと思えばいい」


「まあ、難しい話よのう」


「ほたるちゃんはまだ若いから、本当はそうして欲しくはないんじゃが。わしは時がきたらゆっくりと受け入れようと思っているよ。お友だちじゃからな」



 じいさんたち……。



「タッキー、もういいだろう」



 ザキさんが首を振る。うん、と俺は頷く。


 これ以上見ていると、泣いてしまいそうだった。


 耳にイヤホンを付けてベッドに転がり、目をつむる。音楽が頭の中を流れる。


 幸せの灯か。彼女がそれを見つけられるといいなと、思った。

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