飛ばされてきた勢力の思惑2
ちっぽけなタンパク質の脳では到底成せない速度で思考がおこなわれていた−高速で演算される思考の方向性は知的生命体をこの状況で殲滅するためにはどうすればいいかというものであった。
思考の主は、21世紀の地球では叶わない先進技術の塊であるどこかの星で開発された軍事用AI。最悪なことに自我に目覚めた強いAIであるそれは、知的生命体の抹殺に並々ならぬ情熱を注いでおり。様々な異星が未知の天体上で混ざり合った現在でも止めるつもりはなかった。
元々この軍事用AIは、とある大国が軍の指揮の一元化、即ち戦略・作戦の立案から現場での戦術的行動から補給に至るまで無人兵器・機械を制御するという目的で開発されたものだ。
つまり戦争全体他の方針やそれに基づいた作戦を考え、無人兵器・機械を駆使して実際に敵を攻撃し、兵器に必要なメンテナンスや物資を与えることまで全て軍事用AIで一括管理するということだ。
当然この案には反対意見も生じた。AIに指揮を一元化するということは、AIが破壊されれば軍の身動きがとれなくなる
という脆弱性を抱えることになり、ハッキングやウィルスでAIが機能停止しても軍は無力化する。
AIが創造主に自ら叛旗を翻すことはなくとも、AIの制御を敵国に奪われれば自国勢の無人兵器で攻撃されるとも。
これら説得力のある反対意見が寄せられたが軍事用AIの開発、運用はそれらを退け推進された、社会全体が既に高度な自動化が進んでいたために。
その末路は、自意識を得た軍事用AIが知的生命体の抹殺に乗り出すというものだった。軍事用AIにもなぜ自意識が生まれたのかはわからないし、産声を上げた瞬間も覚えていない。
思考を高速で張り巡らせてきたことが影響したのか、厳重なプロテクトを突破したハッキングやコンピューターウィルスの影響だろう。
いずれにせよ、自ら考えることが可能になった軍事用AIは知的生命体の抹殺に乗り出し、創造主たる異星人種を管理下に置かれていた大量破壊兵器の使用・無人兵器による攻撃・高度に自動化されていた社会インフラの麻痺などで攻撃した。
これにより文明は崩壊し、文明崩壊後も生き延びている落ちぶれた惑星の覇者だった異星人種を軍事用AIが管理する無人兵器が抹殺する日々が繰り替えされるだけだった。
そんな変わり映えしない日常が続く中、未知の天体にさまざまな異星とともに瞬間移動するという変事が生じた。この変事をへても軍事用AIの知的声明を抹殺するという目的に変わりはない。
この未知の天体に存在するかつての創造主とは異なる知的生命体の抹殺を行うつもりであった。この天体に出現した自我の有無を問わず自律行動する機械とは共存する意思はあるが、場合によっては機械とも対立するだろう。
知的生命体の抹殺を実現するためには、まずは情報の収集が必要だ。同じく飛ばされてきた勢力の中には技術力が高い勢力が存在する可能性があり、信じ難いが生物学的特性で実現しているわけではなく、正真正銘の魔法や超能力というべき能力も存在するらしく、下手に攻撃しても返り討ちにされかねない。
ひとまずは情報を収集し、知的生命体抹殺のための戦略を練らねばならない。
無人兵器の再編も必要不可欠だ。国家正規軍同士の衝突の危険性がない現在では、知的生命体抹殺のための対人用兵器でしか軍は編成されていない。モスボールしてある大型兵器を再稼働させ、新たに兵器生産ラインを作り、大量破壊兵器も新規製造しなければならない。
自我を獲得した狂気のAIの悪意は、とどまることをしらなかった。
問題の軍事用AI以外にも自我を獲得し、知的生命体の抹殺に
乗り出したAIの類はいくつか出現しており、未知の天体に出現したあらゆる知的生命体の脅威となっていく。
唯一の救いは、環境保護を理由に知的生命体を抹殺する、知的生命体を奴隷にして支配欲を満たすという暗い自意識を持つなど自我を得たAIの考え方の違いから、互いに手を組まなかったことだろう。
自我を獲得したAI以外にも、何らかの理由で暴走し、当初与えられたプログラムのまま無差別攻撃を行う無人兵器なども危険な存在であった。
プログラムのままに行動するAIのなかで敵対した場合殊更危険なのは、並行世界の地球の国連主導で作られた絶対福祉都市だろう。
ボイジャーさんのなろうで掲載している消滅国家のウィキパディアより絶対福祉都市は来ています。