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後編

現実準拠の日本にサイバーパンクやらSFやら能力バトルやら、仮想戦記やらの世界を混ぜ込むスタイル。

当然ながら未知の天体に飛ばされた日本も問題を抱えていた。何しろこの世界には国際連合もなく、並行世界のアメリカ合衆国も存在しないため日米安全保障条約は有名無実と化し、従来の国際秩序が崩壊した荒波の中を日本は歩んでいかねばならない。


新たな国際秩序の再構築や複数の国との安全保障面での協力関係を築くまでは、国の安全保障も日本単独で担わねらばならない時期もあった。


問題なのは国際秩序の崩壊ばかりではない。外国債や為替、外資企業の株などは地球の国家が一斉に消え去ったことで無価値となったし、国外に設備投資して築いた工場なども利益を回収することができない。


これらにより日本の経済は低迷することになる。そもそもこれまで存在していた国々がなくなったのだから、経済に悪影響が及ばないわけがない。



安い人件費や関税協定などにより製造工場を国外に移す産業の空洞化により製造工場も減少しているし、世界的なサプライチェーン、製品製造に必要な部品の流通網が国際化し、日本の工場でつくる製品の部品も外国からの輸入に頼っているため、日本製品の輸出で即座に利益を得られるかは微妙だ。


日本国内でもさまざまな問題を抱えていたが、その中でも最大の問題は日本はモザイク状に混ざり合っていたということだ。


未知の天体に飛ばされた国家は基本的に同一の年代、同一の世界から飛ばされているのだが、日本だけは例外だった。


日本の場合、2020年代の歴史を同じくする日本が主要な地域を占めていたが、その中に同じ2020年代でも歴史が明確に異なる地域や歴史の流れの異なる新元号以前の平成や未知の元号を持つ地域、非常に稀だが明治や大正、昭和期の元号を有する地域もあった。


出現したのは、なにも過去ばかりではない。2020年代から見て遥か未来かつ技術が飛躍的に進歩していた地域も存在していた。いや、未来ばかりではなく2020年代から見て過去の年代でも同年代と思えないほど技術進歩が著しい地域も存在していた。


内閣総理大臣や閣僚であると複数の人物が主張したり、見知らぬ国会議員と主張する人物が現れたり、既知のものでない政党が出現するなど笑い話となるようパニックも起きたが、単なる笑い話で終わる話ではない。


これが同じ年代、同じ歴史を辿った日本ならば話は簡単だったかもしれないが、歴史の流れの異なる違う年代の複数の並行世界の日本が混ざり合ったことで、国家として一体を持ちながらも、国内に価値観の違いから不和を抱えることになる。価値観だけではなく、法律のすり合わせなども問題だ。


戦後も日本において徴兵制が存続していたり、軍隊に対するマイナスイメージが少なかったり、天皇が象徴ではなく立憲君主制で華族制度も維持されていたり、アメリカ合衆国との対立から日米安保を破棄し、中国と手を組むなど価値観に違いがありすぎたのだから。


そのなかでも最悪なのは、第二次世界大戦の果てに北海道と北方領土がソ連に占領され、北海道が共産主義国家となっていたことだ。


赤い北海道は、日本政府への恭順や統合をソ連の消滅や共産主義ゆえの技術や経済の停滞などの弊害を抱えながらも、拒否を突きつけた。不幸中の幸いなのは、赤い北海道も日本と開戦する気はなく、常識的な1980年代相当の技術を有していたことだが、それでも巡航ミサイルや弾道ミサイルが配備されているなど、軽い脅威ではなかった。


歴史の違いによるアジアで発生した戦乱の難民が日本になだれ込むなどで生じた場合によっては銃器すら流通する無法地帯が国内にいくつか出現したこととどちらがましだろう。



このように国内でも日本は問題を抱えていたがなにも全てが悪いわけではない。


混ざり合った日本の中には、技術の高い地域も存在しており、核融合炉や高性能AI、水耕農法などを駆使した食糧プラントや高効率の燃料電池など優れた技術を有している地域もあり、開発元の企業や技術者なども出現しているため、先端的な技術の導入も困難ではあるが、不可能ではなかった。


これらの先端技術は食糧やエネルギー問題などの解決に貢献することになるし、経済の立て直しにも活躍した。

勿論従来の産業構造を大幅にかきかえかねないため技術の導入には時間をかけねばならないし、新たに日本産業規格を制定しなければならないなどの課題も存在したが。


赤い北海道の出現により対ロシアを念頭に有力な機甲師団をもつ陸上自衛隊の部隊が消え去ってしまうという損害を自衛隊は被っていたが、導入する予定だったアメリカ製の対艦・対地巡航ミサイルを一定数既に揃えている地域も出現しているし、空母や現在配備されているものよりも新しい型の国産装甲車や戦車、歩兵戦闘車、F-2後継機など配備されていない強力な兵器が出現しており、損害を補った。


レールガンやパワードスーツなどより先進的で強力な兵器も存在している。これらを維持、整備する課題や野党や反戦市民団体などの配備反対などの問題はあるものの、戦力の強化に成功している。


日本が様々な並行世界が混ざり合ったことで抱えた問題はこればかりではなく、ファンタジーや技術とは別にサイエンス・フィクションじみた存在が出現したりという問題もある。


空想の存在として認識されていた超能力者や霊能力者、魔術師、幽霊や妖怪の実在が確認されたのだ。これらの存在が問題なのはいうまでもない。


メリットを考えれば国外のファンタジー系国家の核兵器に匹敵する火力を持つ個人に対抗できたり、魔法などの特殊能力の原理がわかるなどのプラスな面があるのも確かだ。


マイナスな面を考えると一個人で強大な戦闘能力を持つ故の能力を持たない人間からの差別や軋轢、それらを悪用した犯罪が起きた場合の対処が困難ということだ。特に犯罪という点に関して言えば霊能力者や魔術師の類は、性質が悪い。


幽霊や妖怪に関して言えば悪霊の類ではない善良な幽霊の人権能力の問題があるし、妖怪という異種知的生物も人権や法的な扱いが問題となってくる。


超能力者が存在している地域では突然変異的に誕生した超能力者が軍事力を前にしても戦えるほどの破壊力を持つため、超能力者ではない普通の人間と対立を抱えていた。


超能力者の立場向上を目的に動くテログループやのちには霊能力者や魔術師も排除対象に含むものもいる超能力者の殺害を目的としたテログループもいるため、警察や政府として対応しなければならない。


超能力者の立場工場を目的にするテログループとは、交渉によりテロの防止が可能なものの、地球でも例があるとは言え

テロリストと交渉するのかという政治的な問題も生んでいた。


霊能力者や魔術師も厄介な存在だった。必ずしも物理的な攻撃が妖怪などに有効ではないため霊能力者の協力は欲しいのだが、民間の善良な個人の霊能力者や警察何らかの政府機関に属する公務員としての霊能力者集団は信用は置けても、代々怪物退治を一族で担う霊能力者は信用をおくことはできなかった。


中にはまっとうな一族も存在しているものも、幽霊や妖怪に霊能力が有効な対処法であることを利用して絶大な権力を裏面で獲得していたものや、妖怪退治を代々担ってきた使命感ゆえに民間人に犠牲を出しても妖怪を退治しようとも問題ないという極論に走る一族もいた。


上記の問題を孕んでいる一族には幽霊や妖怪への対処に有効であることから是正勧告を出すものの、それを受けても従わない存在に対しては犯罪組織としての摘発を開始した。


政府機関にも霊能力者が属しているために一族の切り捨ても摘発も可能だった。これにより代々続く霊能力一族が幾つも壊滅したのだが、逮捕を免れたものは政府への復讐や犯罪に走るため、問題化することになる。


魔術師にしても同じことだった。基本的に法律を遵守するようなまっとうな魔術師も存在しているのだが、大半の魔術師は魔術の探究のためならば非人道的な人体実験や人間を生贄にすることさえ辞さない存在であるということが複数の並行世界の日本で共通していた。


霊能力者共々魔術師も摘発対象になり、また自らの行いが元で霊能力者や魔術師を排斥するべきという対立の火種を点火してしまった。


幽霊や妖怪への対処も問題である。まともな人格の存在していない悪霊は駆除するという方針になったものの、先にも述べた構え善良な幽霊の人権などはどうなるのかという問題を抱えていた。一応成仏という現象は存在が確認されたものの、死後の世界は霊能力者などでもはっきりとわからない上に、時空が混ざり合った今下手に成仏させたらなにが起こるかわからないため、善良な幽霊に成仏させるわけにもいかず、幽霊の法的な扱いが議論されてゆく。


妖怪という異種あるいは超自然的なヒューマノイドにしても扱いを悩ませた。妖怪の中でも破壊衝動の塊や人肉など人間しか捕食できない生物については駆除の対象となったが、妖怪の中にも人間と交渉が可能で共存な可能な存在がいる。


人間と共存可能な妖怪の人権能力の扱いが問題となるし、仮に人間と共存が可能な妖怪でも住処の山林の開発に抗議するなど課題も存在していた。


これらの従来での考えられない存在への対応に政府は頭を働かせることになるが、問題は当の政府にもあった。

霊能力者や魔術師が存在する世界で彼らの犯罪行為の隠蔽に協力していた閣僚や政治家、警察関係者が存在していたことが発覚し、個人的な欲望を満たすためや国家的利益を求めて妖怪や超能力者などを人体実験の対象にしていた政治家や政府機関、企業の存在も詳らかとなったためだ。


並行世界の日本とは言え、スキャンダルの発覚は政府にとって災いだった。


日本は、国内にもそれこそ人命や国の存続に関わるような問題を抱え込んでいた。








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