テロリストの思惑2
この作品において自分達の政治的思想を実現するために事件を引き起こして、世論を自分達の政治的思想に賛同するように仕向けるという描写があります。
先月安倍晋三首相が射殺される事件が発生しました。犯人の動機は、繋がりがあるという報道もあるものの、いわば逆恨みで自分の母親が入信していた宗教団体が原因で不遇な生活を送ったために、恨みのある団体と関連があるという理由で安倍晋三元首相を射殺に至りました。
この射殺事件以来、問題の宗教団体を叩く意見が増えています。
現実に小説内のような犯人に恐らくその意図はないにせよ特定の事件をきっかけに世論が誘導されるというような状況が起きていますが、この小説はテロ行為や暴力行為を認める物ではありません。
行動を起こそうとしていたのは、超能力者排斥思想を掲げるテロリストグループの一つだった。但し、彼らは状況の変化を考えずに超能力者の抹殺などを変わらずに行おうという同類の組織もいるなか、比較的冷静だった。
彼らがもともと属している並行世界の日本では、超能力者とそうでない人間との対立が世界的に発生し、それは日本でも変わりはなかった。そのため過激な超能力者排斥思想を支持し、密かに支援する者もいた。
しかし、超能力者の脅威を認識しておらず、軋轢も存在しない日本が大部分を占める状況では超能力者に対する攻撃や超能力者の排除を行うよう政府を攻撃したところで、自らに支持は集まりはしないと認識していた。
かと言って超能力者への排斥を諦めたわけではない。個人の意思で任意に発動可能で、威力的に対人殺傷が可能、強力なものになれば所謂サイコキネシスなどで戦車や高層ビルさえ破壊できる威力を発揮できる超能力者が自由に生きるなどテロリストグループにとっては受け入れ難い。
超能力者の排除という民族浄化に等しい過激な思想を抱くテロリストグループだが、現実的な超能力者の危険性という排除するに至る理由づけがそのテロリストグループにもあるのだ<単純に暴力を振るいたいや格好いいからなど思想性を持たないものもいないわけではない。>
それに加えて現在では超能力者のみならず霊能力者や魔術師、妖怪も排除するべきと新たに認識してもいた。
能力行使を行うに際して下準備や道具が必要な面があるにせよ、霊能力者や魔術師も破壊力は超能力者と遜色はない上に、妖怪に至っては人間でない超自然的存在である。
人間にとって脅威といえる超能力者以外の特殊能力者も放置しておくべき対象ではなかった。
特殊能力者の排除のために件のテロリストグループが目論んだのは、単純だが有効な手だ。自らの手で特殊能力者の排斥を叫ぼうと指示されないならば、特殊能力者そのもののてで危険な存在と認識されればいい。
特殊能力者による大量殺人や破壊行為を起こさせることで、その危険性を認識させ、世論を排斥へと誘導する。それが目論みだった。
幸いチンピラじみた超能力者の若者や、問題行為が発覚した政府から門前払いを受けた霊能力者一門の関係者など、金銭と心理的な報酬で大量破壊に応じそうな人間は存在する。上手く焚きつけることで、破壊活動を行わせるつもりだった。
仮に裏面で破壊活動を仕組んでいたのが超能力者排斥のテロリストグループだと判明しても、恨みの矛先を逸らすことにはなるかもしれないが、直接的な破壊を行った特殊能力者への憎悪自体は残るだろうから問題はない。
彼らは、超能力者と新たな能力者の排斥という彼らの思想を成し遂げるためにテロリストグループでありながら、比較的冷静に計画をすすめていた。
ただし、その彼らもさまざまな世界が未知の惑星に飛ばされたため日本以外の国々にも特殊な力を備える存在が大量にいる現状で、特殊能力者の排斥に固執するあたり、全員が全員でなくとも狂気に囚われているか、先鋭化した思想の主であることに変わりはなかった。




