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旅行

現実的に考えたらできるわけがないが、最近の発電が消費電力においつかないやロシアさんの蕎麦の原料が手に入らずチェーン店が困るなどを見ると日本が異世界で無双するとか夢のまた夢ではないか。

その日、私は初めて異世界の地に踏み行った。いや、この言い方には語弊がある。国土ごと日本が未知の天体に飛ばされているため、既に異世界に来ていると言えなくも状況なのだから。


とは言え、船のタラップを降りた先に広がる中世ヨーロッパを連想させる石造りの街並みに、日本にも来ているとは言え人間に混ざって獣人やエルフが行き来する雑様を見ると感覚的には初めて異世界に来たように感じられるのも無理からぬことだ。


大学2年生である私は、夏季休暇を利用して日本からファンタジー系の国家に旅行に来ていた。それも比較的に技術水準の低い地域にだ。


何故そんなことをと思うかもしれない。日本が地球外惑星に飛ばされて以来数年、国交を結んだ科学技術文明の国やファンタジーであっても近代文明相当の国にいった方が快適に過ごせるだろうし、空港がある場所なら何日も船の上で過ごす必要もない。


だが、私はファンタジー作品が好きだ。本格的なハイファンタジーも好きだし、ライトノベルや、アニメや漫画、映画も好きだ。そんなファンタジー好きとしては現代ファンタジーやアジアンファンタジーも嫌いでないとは言え、中世ファンタジーそのままの世界にどうしてもいってみたかった。


ビルが立ち並ぶファンタジーなどファンタジーらしさが薄れてしまう。


だからその欲求に従い、比較的技術水準の低い地域を私は旅行先に選んだのだ。勿論、さすがに中世そのままの地域ではない。


中世そのままに魔法や亜人が存在するような世界だと、糞尿を都市部では街中でばら撒いているなど衛生状態は極めて悪いだろうし、身分制度や拷問じみた刑罰など旅行で過ごす上で気軽には過ごせない。


そのため、ファンタジー系の地域といっても魔法などで上下水道を実現するなど衛生水準がある程度高く、身分制が敷かれていても身分間による差別が薄く、技術発展や貿易のために外国資本の企業を受け入れているなど、快適に過ごしやすい地域を選んでいる。もちろん日本との交流があることも条件だ。


私は、ファンタジーの世界の嫌な現実を見るために旅行しにきているわけではないのだから、快適に過ごせる地域を選ぶのは当然だ。それともファンタジーを楽しみたいといっても、21世紀の日本人に過ぎない私は本当にファンタジー世界を楽しむことも、生きてゆくこともできないのかもしれない。


治安の観点や見れるものなら見たいが所謂魔物に襲撃されないようにこの国の首都しか観光する予定もないのだし。


とにかく、まずは予約してある外資系のホテルにいくことにしよう。港の近くには馬車や人力車の類が並んでいるが、喧騒を楽しむためにホテルまでには歩いて行くことにする。


間抜けな日本人が金銭目当てに殺害されたり、身包みを剥がされたといったニュースが流れないように気をつけなければならないが。


私は心を躍らせながら、人間や亜人がゆきかう人種の坩堝と言える街中に姿をとけこませていった。

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