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臨検作戦

不快な描写がありますのでお気をつけ。

海の波濤を蹴破るように力強く白亜の船が進んでいた。


その船は国交省管轄の海上保安庁の巡視船であり、一隻ではなく何隻かが船団を組んで航行していた。


海上保安庁の役割は海上における治安維持・法執行であり、日本が未知の天体に飛ばされてからも領海や領土、領空の範囲について新たな国際法が制定され、明確に日本の領海や排他的経済水域が定められて以来、再びその任に当たっていた。


どの巡視船の内部でも海上保安官たちは一様に緊張していた。物々しく防弾装備を制服の上から着ている当たり、通常の任務ではないとわかる。


彼らに課せられた任務は、民間の外国籍の貨物船への臨検任務である。問題の貨物船の積荷に違法性のあるものが積載されている可能性があるという情報が寄せられたためだ。


恐らく民間の貨物船が金銭的な報酬を目的に船会社にも内緒で、密輸行為に加担しているだけであろうから、抵抗される危険はないとは言え、万一抵抗されたことを考えると誰もが緊張していた。


海上保安官はあくまで法執行を担う公務員であり、決して英雄ではない。物語ならば恐怖を感じずに粛々と危険な状況でも任務を遂行する姿が描かれるかもしれないが、普通の人間である彼らはこれから取り組む任務が修羅場にならないかと恐れていた。


それに海上保安庁でも殉職者がこの天体に来て以来、発生していることが拍車をかけていた。


北朝鮮の不審船とかつて海上保安庁が対峙したように、密かに日本本土に諜報員や工作員を送り込もうとしていた赤い北海道の武装した偽装漁船との交戦やファンタジー系の地域から長い距離を経て日本近海に流れ着いたある程度なら大型船舶も撃沈可能な巨大海洋生物の駆除作戦によって、少なからぬ死傷者が発生している。


それでも海上保安官たちは任務に取り組む、それが彼らの仕事だからだ。



幸いして臨検対象の貨物船は、おとなしく停戦に応じ、抵抗しようとはしなかったため、命のかかった修羅場になることはなかった。最も抵抗するそぶりを見せないと言っても、ヘリコプターと高速ボートでさまざまな並行世界が混じり合ったことで開発されていた89式小銃のカービンモデルを片手に突入したSSTは、念のためブリッジと機関部を制圧していたが。



通報の入った違法貨物は、SSTの捜索ですぐにみつかった。それは正規の積荷の入ったコンテナに紛れたコンテナの中に隠されており、正体は人間の女性だった。正確にいえばエルフや獣人などの亜人と呼ばれるヒューマノイドも混ざっていたが。


逆らえないようにコンテナにぎゅう詰めにされ、食糧を最低限しか与えられず、衰弱していた彼女たちはただちにヘリで陸上の病院に搬送された。


 彼女らは性奴隷としてファンタジー系の地域から運び込まれてきた人々だ。近代的な科学文明に匹敵する水準の文明を築いたファンタジー系の地域はともかく、中世に近い水準のファンタジー系地域は捜査能力の低さから活発に人身売買が行われていた。勿論バレてしまえば厳しい刑罰が課せられるというリスクがあるが。


口減らしを目的に農民から女性を高額報酬で買い取り、公然・非公然に存在する現地の奴隷商人から奴隷を買い付ける。あるいは技術水準の高い地域でも言葉巧みに貧困層の女性を豊かな技術の高い国で高級取りの仕事にありつけると騙す。


これらのような手法で集めた女性を日本の犯罪組織の中でも過激な犯罪組織が買い取り、性奴隷として違法性風俗店で働かせている。陸揚げしたコンテナを密かに運んだり、港湾部を要する無法地帯から出発した船舶に移す形で性奴隷は運び込まれる。



かつてでは、考えられない犯罪がおきているのが現在の日本である。運良く海上保安庁に救助された彼女たちのように全てが救助されるわけではない。


また保護された彼女たちにしても、それぞれの出身国に強制送還されるため、必ずしも助かったことがよいとは限らない。過酷な性奴隷として搾取されないとしても、貧しい暮らしに逆戻りだ。


様々な並行世界の日本が入り混じっている日本政府としては、国内の統一のために難民などの受け入れは避けたいからだ。


現実は創作物のように甘くはない。






✴︎一応必ずしも人身売買被害者の場合は、強制送還とはならないかもしれないらしいですが、ここでは国内に価値観の違う並行世界や異能力者、異種生物がいるため厳しめになったとしてください。

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