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九月の出来事B面  作者: 池田 和美
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九月の出来事B面・⑤



「向こうの二人は、放っておいていいのか?」

 握手を交わしてから椅子に腰かけたマサミチが、対面で同じセーラー服を着るヒカルに訊ねた。

「難しい話をしても分かんねえし、それに秘密を知っているのはなるべく少ない方がいいだろ?」

 冷め始めているコーヒーに、なにも加えずに口をつけたヒカルは、ちょっと眉を顰めた。

「酸味がきついな」

「そうなのか?」

 あまり考えなかったマサミチもホットコーヒーをボーイに言いつけていた。まだ届けられていないが、口をつける前に味の良し悪しを知りたくはなかったようだ。

「飲んでみりゃわかるぜ。そろそろ来るだろ」

 ヒカルに言われて、マサミチの目が店内を泳いだ。

「あっ」

「?」

 マサミチの視線が固定された事を訝しんだヒカルは、その視線の先を追った。

 ちょうど男装の麗人といった感じの人物がボーイに話しかけられるところだった。

「あれが昨日、おまえが言った『もう一人』か?」

「ああ」

 ボーイに案内されてやってくる麗人を出迎えようと、マサミチは席を立った。

 ヒカルも腰を上げようとしたが、途中でキャンディを咥えながらの挨拶は、無礼すぎるかと思いなおし、だいぶ溶けて小さくなったそれをソーサーの端へと置いた。

 今度こそと歩いてくる麗人を観察しながら立ち上がった。

 人種で言えばゲルマン民族といった特徴を持った容姿であった。

 足運びからして格闘術は修めていそうである。腰回りや脇に不自然な膨らみが無いので、銃などを所持している可能性は低そうだ。しかし、なによりドーンと主張が激しいモノが胸部で二つも揺れているため、小型の銃なら服の内側に仕込んでいても目立たないかもしれないので注意だ。

 化粧はワザとなのだろうか、きつめにしてあった。派手目のアイシャドーに真っ赤な口紅という印象だ。だが逆に言えば、そのメイクを落としてしまうと誰だか判別がつかなくなる可能性がある。何かで逃亡しなければならない時などを想定しているのかもしれなかった。

 目尻にも頬にも皺は一切ないが、若いと表現する歳でも無さそうである。三〇代か、もしかするとそれ以上行っている可能性もあるように見えた。

(ちょっと待てよ)

 ヒカルの眉が顰められた。

(という事は、カナエと同じぐらいってことか?)

 ヒカルの頭の中で海城家の奥さまがマジカルロッドにフリフリピンクな魔女っ娘衣装に身を包んで呪文を唱えていた。

 着ている女性用のスーツは上等という言葉の前に超が三つほどつきそうなブランド物だ。手にしているショルダーバッグと同じブランドで揃えているが、合計して幾らなのか考えたくもなかった。

 髪は金髪であるが、染めているような不自然な色合いであった。これもメイクと同じで軽い変装術なのかもしれない。おそらく長く伸ばしているのだろうが、手間をかけて両脇で三つ編みにした束を上に巻いてシニヨンにして纏めていた。

 心の内に秘めた物を表しているかのような眉は濃くて、性格を示しているような角度であった。

 紫色をしたアイシャドーに囲まれた瞳は、眉の下からこちらをランランと見つめてきていた。その色は髪と同じ金色に見える程の茶色であった。

 意志の強そうな口元に、出るところが出て締まっているところが締まっているボディライン。目立つところにホクロなどは見受けられないが、ヒカルはマリリン・モンローを連想していた。

「軍人か?」

 長い経験から導き出した答えを呟くと、マサミチは認めるように頷いた。

 二人が出迎えるように立ったので、ボーイが脇にはけた。丁寧に頭を下げるボーイにはもう興味がないとばかりに歩み寄って来ると、厳しく引き締めていた表情をフッと緩めた。

おはようございます(グーテンモルゲン)、伯爵」

 マサミチはドイツ語で挨拶をして、丁寧に胸に手を当てて頭を下げた。借りて来たネコというより、出張展示で他の動物園に行ったライオンのような態度であった。

「おはよう」

 相手の女性は、落ち着いたとても耳触りの良い声だった。やはり口から出たドイツ語は滑らかな発音であった。

「今日も暑いわね」

 時候の挨拶をしつつ右手を差し出してくる。マサミチは何の疑問を抱いていないかのように握手を交わした。

「そちらは?」

「今回の件での相談相手…、こういった事に慣れている者です。紹介します。こちらはエッシェックさん。こちらはレーヴェンハルト伯爵」

「エシェック?」

 ちょいと彼女の眉が顰められた。それには構わずヒカルは胸を張って(身長差から)相手を見上げた。

「紹介に預かったエシェックだ。よろしく」

 ドイツ語ぐらい喋れるぞとばかりに、ヒカルも彼の国の言葉を口にした。

「こちらこそ、エシェックさん。私の事はマサミチのように伯爵とでも呼んでくれたまえ」

 右手を差し出しながら麗人は微笑んだ。ヒカルは遠慮なく握手を交わした。

「彼女は、そのう…」

 マサミチが何と説明していいのか迷う素振りを見せた。

 マサミチが困っているようなので、ヒカルは自己紹介する事にした。

「その道のプロフェッショナルってヤツで」

 ニヤリと不敵に笑って宣言したが、白いセーラー服では迫力に欠けた。

「プロフェッショナル?」

 不思議そうな顔をして伯爵は半分だけ振り返った。

 伯爵の視線の先では、丸テーブルで向かい合ったアキラとダイヤが楽しそうに歓談していた。

「ああ。あれは、私がいま取り掛かっている仕事関係だ。コチラとは無関係だから気にしないでくれ」

「そう…」

 ちょっと不安そうに表情が曇ったが、すぐに鉄面皮の仮面を被るようにそれを消した。

「まあ、立ち話もなんですから」

 マサミチが丸テーブルを身振りで指し示した。

「そうね」

 マサミチが引いた椅子に伯爵が浅く腰掛けた。マサミチは丸テーブルを回り込むと、対面の椅子をヒカルのために引いた。

「こりゃどうも」

 当然と言った態度で着席した伯爵とは違い、ヒカルはちゃんと礼を言ってから腰かけた。

 マサミチがどこに座るのかと思ったら、ヒカルの隣にちょっと間を作って椅子を置いた。半分ぐらい通路に体が出てしまうが、まあ巨躯の彼自身が狭いところで女性と並んで座ることに無理があることを自覚しているようだ。

 三人が席に着いた事により、ボーイが音もなくやってきて、メニューの書かれた冊子を差し出した。

「コーヒーを」

 差し出された冊子を開くどころか受け取る事すらせずに伯爵は注文を口にした。

 どうやら何も考えずに注文したようだ。冊子がボーイの脇に収められてから、ヒカルの前に置かれたコーヒーカップに気が付いた。

「ついでに彼女にお代わりを」

 ドイツ語のままでボーイに注文したが、どうやら彼は理解したようで、一礼するとメニューを下げに歩き去った。

 もう会話が聞かれることがないだろうという距離を確認してから、伯爵がヒカルへ視線を移した。

「エシェックさんは…」

 そこまで言って伯爵の口が止まった。

「ええと、玄人(ファッハウ)なのよね?」

「いちおうな」

 まだ不敵な笑みを顔に浮かべているヒカルを、伯爵はとても胡散臭そうに眺めた。

 まあ無理もない話だ。なにせ同じ制服を着た女子高生が向こうの席で和気あいあいとお喋りしているのだ。

「こういう…、裏の仕事?」と伯爵がマサミチに確認するように言葉を切ると、彼は大きく頷いた。

「裏の仕事をこなすには、全然歳が足りていないようだけど?」

「まあ若いからできることもあるんじゃないかな」

 貼り付けた笑顔のままピクリとも表情筋を動かさずにヒカルは言い返した。

「でも、その呼び名は止めた方がいいのではないかしら」

 年上が忠告するように伯爵は告げた。

「たしかエシェックっていう凄腕の狙撃手(イェーガー)が、裏の世界? そういう世界にはいるはず。その人と間違われたら、余分な仕事が増えるのではないかしら」

「お褒めに預かり光栄だぜ」

 ヒカルは実際に照れたように後頭部を掻いて見せた。

「?」

 話しが分からず伯爵は説明を求めるようにマサミチへ視線を移した。

「そのエシェックさん本人なんです」

「え…」

 一回だけ目を見開いたが、感情を面に出してはいけないという貴族社会で暮らして来た経験からだろう、すぐに表情を霧散させた。

「パラオの墜落事件の?」

 伯爵は確認するように口にした言葉に、二人揃ってそうだとばかりに頷いた。

「カナリヤ諸島大騒動の?」

 次に口に出された言葉にも、二人が揃って頷いた。

「えっと…」

 話しが分からないとばかりに伯爵は眉を顰めた。今度はそれが演技なのか本心なのかは読み取る事はできなかった。

「まさかエシェックというのは、集団を指し示す符丁(コードナァム)なのかしら? どちらも前世紀どころか冷戦(たけなわ)の頃の事件よ?」

「本人なんだからしょうがねえだろ」

 半ばからかう様な声でヒカルが言うと、再び彼女の視線がマサミチへと移動した。

「信じるか信じないかは伯爵の自由ですが、そのエシェック本人なんですよ」

 伯爵は再び値踏みするようにヒカルを見た。当のヒカルはキザっぽく肩をすくめてみせた。

「どうでもいいわね」

 小さく溜息をついた伯爵は、マサミチへ視線を戻した。

「マサミチは彼女の実力を疑っていないのね?」

「はい。それは間違いなく」

「ならば信じましょう。本物でも偽物でも構わないわ、実力があればいい。私には他に頼れる者がいないもの」

「信じて下さいよ。大丈夫『実力』も『美しさ』も、私が保証しますよ」

「おう、マサミチ」

 ヒカルが軽口を挟んだ。

「今ので、あたしのおまえへの評価がプラス一〇点されたぞ」

「そう言わないと怖いじゃないか」とか何とか呟いていたような気がするが、黒部第四ダムの臨時放水のごとく聞き流したヒカルは、改めて名乗った。

「エシェックだ。よろしく」

「よろしくお願いしますね」

 伯爵は座ったまま右手を差し出し、二人は二度目の握手を交わした。その握手が終わるタイミングを計っていたかのように、ボーイがトレーを持ってやってきた。静かに三人の前にコーヒーカップを置き、冷めたヒカルのカップを下げて行った。ソーサーの上に嘗めかけのキャンディが置いてあったせいか、ボーイの眉がピクリと動いたのをヒカルは見逃さなかった。

「彼女の正体が理解されたところで、今度は逆に伯爵の紹介をさせていただきます」

 マサミチは了承を得るように伯爵の顔を見た。湯気の立つカップを、まるで摘まむように持ち上げた伯爵は、瞼だけで頷いた。

「エルデーイ王国北方領当主マーリア=ヨーゼフ・レーヴェンハルト伯爵。王女親衛隊隊長にて階級は国家警察隊(クロンウーラン)大佐(シュタンダルテンフューラー)を務められています」

「しんえいたいって事は、依頼人の…」

「そうです」

 ヒカルの質問に本人が頷いた。

「姫に相談されて困った私は、亡き女王陛下から何かあった時のために頼るようにと教えられていた住所に連絡を取ったのが始まりです」

「じゅうしょ?」

 説明を求めて視線をマサミチに移すと、意を得た彼が教えてくれた。

「ほら、俺はよく行方不明になるだろ? そのためにアメリカにある代行サービス会社に、電話の受電代行を頼んでいるんだ」

「電子メールでちょちょいじゃないのか? 通信環境が悪くったって、そうそう着信メールが消えたりしねえだろ?」

「一回、ヨーロッパのサーバーが大規模ダウンしたことがあったろ? あれで長期に渡って伝言を任せられないことが分かってさ」

「あ~、あの某C国からのハッキング騒ぎか。なるほどね」

 納得したと言うように、ヒカルは何度も頷いた。

「じゃあ、どうしたいか説明の必要が無いどころか、依頼人と言ってもおかしくない立場なんだ」

「そうだ」

 ヒカルの確認に伯爵でなくマサミチが頷いた。

「で? 肩書からして、お忙しいはずの伯爵さまが、なんでこんな東方の辺境に?」

「経済規模で上から数えた方がはやい先進国を、辺境とは呼べないと思いますが。まあ仕事ですよ」

 伯爵はハンドバッグの中から、ちょっとした大きさの物を取り出した。外側を見るだけだとブランド品のクラッチバッグのようだが、小さなタブレット端末であった。

「このご時世、どこも優秀な人材は枯渇していてね。姫の来日に関する下準備のために、わざわざこうして足を運んだというわけです」

「親衛隊長自ら?」

 左眉だけ額の方へ上げたヒカルに、残念そうに伯爵は頷いた。

「当日の警護態勢などを、世界一優秀と言われている日本の警察と話しておかないといけませんから」

「どれだけ部下を信用してねーんだよ」

「いえ」

 ヒカルの小言のような言葉に、しれっと伯爵はこたえた。

「部下の能力は完全に把握しているからこそ、自分でやってきたのです」

 ヒカルは隠さずに溜息をついた。

「そちらの事情は分かった。つまり、あたしらは日本の警察と合わせて、そちらの警護の人間も欺かなきゃいけねーってことだな」

「そういうことになる」

「簡単に言ってくれるぜ」

 ヒカルは腕組みをして、しばし天井から下がるシャンデリアを眺めた。

 考えを纏めてから伯爵に向き直った。

「おそらく皇室関係だから、外務省の条約審議官とか、公安とか、さらに余分な勢力も首を突っ込んで来るぜ。まず、なんとか当日の予定(プログラム)に空きを作る方が何倍もマシだ」

「じょうやくしんぎかん?」

 不思議そうにマサミチが聞き返した。

「外務省にあるヤバい仕事を片付ける部署だよ。表は各国と締結する条約に不備など無いか照合する部署ってことになってるが、実態はアレだ。米国で言うところの中央情報局(ラングレー)だよ」

「日本にそんな部署があるなんて」

 疑わしそうな目で見る二人に、ヒカルは肩をすくめてみせた。

「別に信じなくっていいぜ。公安の方にも外事課ってあるから、ソッチも噛んで来るかもな。外事課以外の公安の部署だって、ちょっかいかけて来るかもしれねーし。なにせ奴らの仕事といったら、いらんトコに手を出して、各都道府県の警察本部に煙たがられる事なんだからな。あ、あと自衛隊(セレプトフェタイディゴンスカルフト)…、伯爵には日本軍(ヒアー)って言った方が通じるか? 公安は日本軍の情報本部と所謂『協力体制』のはずだから、ソッチの心配もあるな」

 ヒカルは指折り数え始めた。

「警察に公安に外務省、日本軍…、そっちの警護官。あといちおう皇宮警察…、これは伯爵と似たような仕事をしている日本の連中のこった。大雑把に数えても六つ。いや、内閣調査室なんていう組織もあったな、これで七つ。警察も本店(ほんちょう)支店(しょかつ)では別々に動くだろうし、公安の中でも部署ごとに競うように動くだろうから、あれやこれやで…。少なくとも(とお)ぐらいの組織が敵に回るって勘定になる」

 パッと折った指を広げたヒカルは、丸テーブルに乗り出した。

「プログラム調整の方がなんぼかマシだって」

「それが出来れば、こう相談はしていない」

 能面のように表情を変えなかった伯爵だが、どうやら怒ったようだ。ヒカルは肩を竦めてみせた。

「仮病ってのもあるぜ」

 ニヤニヤと笑ってヒカルは指を立てた。

「いきなりのご懐妊じゃあ嘘臭えが、たしか本番は二月だろ?」

 確認するようにマサミチを見ると、彼は頷いた。

「風邪をひきましたじゃダメか?」

「そうなると医者まで抱きこまなければならなくなる」

 即答であった。伯爵の言葉を聞いたヒカルは眉を寄せた。

「たしかに、金と手間暇が余計かかるな」

 ちゃんとした医者にわざと誤診をさせるとなると、それなりの用意が必要になる。外国からの要人を診るような立場の医師だと、ちょっとやそっとのワイロだけでは動いてくれないだろう。なにせ、その後の自分に対する評価にも関わって来る問題だ。弱みを握っている相手などならば、スムーズに話しが進むであろうが、都合よくそんな人物が居るわけもない。となると、今からそういった人物を作り上げる等の裏工作から進めなければならなくなる。

「あと半年はあるから手間暇はいいとして、金の問題があるな」

 面倒くさそうにヒカルは言うと、またマサミチを見た。彼にも、そんな都合のいい医者の知り合いはいないようで、プルプルと首を横に振った。

「じゃあ、この案はボツだな。で? いつ抜け出すつもりなんだ?」

 クラッチバッグのような端末に情報を浮かび上がらせた伯爵は、丸テーブルに置くと二人に画面が見えるようにクルリと回した。画面には大雑把なスケジュールが表示されている。どうやら昨日マサミチが、ざっと見せてくれた物と同じ物のようだ。いや、昨日の物より、もう少し具体的になっていた。

 ヒカルの質問に、伯爵の細い指が伸びてきて、端末の一か所を指差した。

「ここならばどうだ? 昼食前の文化交流に関する懇談会だ。姫が和服(ナッツィオナールタハト)に着替えた後に、華道の正道(しょうどう)光花流(こうかりゅう)を体験される」

「どれどれ」

 ヒカルは参加者などの情報に目を通していった。開催場所はこのホテルでは無く、入谷にある猪心山(いのしんさん)山車蛙寺(だしのあじ)というお寺の境内にある文化会館のようだ。

「うん。外なら警備に隙があるかもな」

「ちょっと待った」

 マサミチが止めに入った。

「どうした?」

 二人が不思議そうに訊ねると、なぜか冷房の効いている室内で汗を流し始めたマサミチが答えた。

「相手が悪い」

「あいて?」

 キョトンとしてヒカルは伯爵と顔を見合わせてしまった。

「光花流って言うと、家元が九〇にもなろうかっていう婆さんなんだが…」

「知り合いなのか?」

 まさかと思っての問いかけに、マサミチはガクガクと頷いた。

「その寺に行く途中なり、寺の境内なりで殿下が抜け出す事件を起こすとしよう。その事件に俺が噛んでいる事がバレたら…。間違いなく俺の首が飛ぶ」

「はぁ? 日本のマフィア…、ヤクザとか言ったか? この老婆はそういった関係者なのか?」

 伯爵が問いただすのも当たり前だ。そんな脛に傷がある物を、自国の王族に近づけるわけにはいけないからだ。慌ててマサミチは首を振った。

「いや、そうじゃない」

 マサミチは、せっかく整えていた髪を掻きむしった。

「日本の文化たる華道を世界中に広めようと、色んな国に直接乗り込んで、講習会を開くほどの元気な婆さんなんだ。九〇にもなって、いまだにだぜ。たしか娘はもちろんのこと孫娘すら結婚して曾孫までいるっていうのに、現役バリバリだ。そのせいか日本の政財界だけじゃなく、外国の色んなお偉方にも顔が効く。あの婆さんに敵認定されたら、日本で暮らしていくのに不便なんてものじゃないぜ」

「どのみち、こういう(たくら)みをするなら、どこかに恨まれるのは避けられないと思うが」

 伯爵のもっともな意見にヒカルも頷いた。マサミチはタオルのようなハンカチを取り出して、額に浮かんだ汗を拭った。

「いや、まったくの他人なら問題はないと思うが…」

「なんだよ、そんなところとも顔見知りなのかよ。冒険家っていうのは顔が広ぇなあ」

 ヒカルが呆れた声を上げた。

「外国に行くと、やっぱり同じ日本人同士で固まるじゃないか。そういった共同体を利用して、その国へ光花流を広めて回っているんだ。で、色んな所へ冒険に出かけると、やっぱり地元の日本人共同体に世話になることが多くてな。ほら通訳だの、物資の調達だの…」

「じゃあマサミチは、その婆さんと、どっかの国でばったり出会ったことがあるんだ」

 ヒカルの質問に素直に頷くマサミチ。

「ブリティッシュ・コロンビアとか、カーボベルデとか、スリナムとか…」

「そんなにか」

 数の多さにヒカルは目を見開いた。

「とにかく元気な婆さんなんだ。これが普通の御隠居とかだったら、もう体も言うこときかないし、私も丸くなったし、あとの事は後進の物に、とか言って怖くないんだが…」

「まあマサミチが苦手とする人物ならば、わざわざ敵にする必要もあるまい」

 伯爵が慰めるように言った。端末を自分の方へ向きなおすと、何回か画面を行ったり来たりし始めた。何とか警備の隙を探しているようだ。

 もしあからさまに隙があるのならば、それを潰すのが伯爵の本来の仕事のはずだ。これこそマッチポンプという言葉が似あう事はないだろう。

「ならば二日目と三日目の間の就寝時間ではどうだろう」

 クルリと端末の画面が戻って来た。

「まあ寝る時間ぐらいは確保されて…、なんだこりゃ」

 ヒカルが端末の情報を確認すると、二日目の夜は午後十一時半に就寝予定とある。そして三日目の起床は午前三時であった。

「寝る時間が無ぇじゃねぇか」

「二日目は天皇陛下主催の晩餐会が催される予定だ。終わる時間も遅いし、さらに終わった後も皇族の方々や政府首脳と『懇談』されるのが通例なのだ」

「朝の方は?」

「三時に起きて色々と始めないと、準備が間に合わないではないか」

「化粧を重ねなきゃ表にも出れない身分は大変だな」

 そう言うヒカルは現在ノーメイクである。いちおう学生を装うという大義名分があるが、実際は半分以上面倒臭いからであった。

「で? 三日目朝のご予定は?」

「朝食を摂りながら、エルデーイと日本の間での投資に関する懇談会」

「まあ、確かに皇族の誰かとか、総理大臣とか、相手がヤバそうな感じはしないが…」

 ヒカルの視線が、まだ大雑把な列席予定者の欄を撫でると、美しい眉がキュッと顰められた。

「経済の話しをほったらかして大丈夫か?」

「どの国でも商人は利益最優先であろう? ならば実際に儲け話が出る以外の集まりは、重視されないのでは?」

「まあ看板としての王族よりも、実際に札束をやり取りする商人同士の方が重要か…」

 ヒカルには珍しく奥歯に物が挟まったような言い方であった。

「その後の予定は?」

「近くの幼稚園のご視察に行かれてから、昼食を兼ねて今度は安全保障に関する意見の交換会。小休憩を挟んで午後からは国営放送局へ移動されてインタビュー、それと付属する映像研究所の視察…」

「国営放送局?」

 眉をしかめたヒカルがマサミチに視線をやると、彼は苦笑いで「日本放送協会(エヌエイチケイ)」と訂正を入れた。

「じゃあこの日に抜け出しても大丈夫そうだな。次は泊まるホテルの図面が必要か」

「ココの図面なら、警備に必要と言って、すでに入手済みだ」

「ココに泊まるのかよ」

 伯爵の言葉に、ヒカルは周囲を見回した。

 何度も確認するが、上に超とか星とかが何個もつく高級ホテルである。調度類は派手すぎて成金趣味のような下品さとならないよう、ある程度控えめな装飾が為されていた。だが一つ一つを取り出してみれば大したことがないように見えるが、全体を見回せば調和された空間となり、豪勢さでは追随を許さない出来となっていた。そこにさらに歴史の重みも加わっており、日本国内では並ぶものが少ない世界が広がっていた。

 そうだからこそ外国の王族が泊まるのに、ふさわしい場所とも言えた。

「まあ他の国の王さまやお姫さまも泊ったことあるし、銀幕の有名人(ベリンタイト)とかいう人種も泊まるホテルだもんな」

「ちょっと待ってくれ」

 今度は、間取り図面を呼び出すためだろう、端末に向き直った伯爵は、画面を撫でるだけでなく、玩具のようなキーボードを指先一つで叩き始めた。

 忙しそうな伯爵を放っておいて、ヒカルはゆっくりとコーヒーに口をつけた。頬に視線を感じたので、目だけで振り返るとマサミチが何か言いたそうな顔をしていた。

 声を発せずに唇だけが動いた。どうやら日本語のようだ。

(誰か知り合いでも居たのか?)

 先程の朝食における懇談会の出席者の事だろうとすぐに分かった。

(まあそんなところだ)という意味を込めてウインクを返しておいた。ついアキラとお喋りしているダイヤの方へ視線を向けそうになったのを、強引に意志の力で捩じ伏せた。

(あのバアサン、こんな所にも首を突っ込んでいるのか)

 朝食会に参加する名簿の中に、醍醐クマの名前があった。ダイヤがメイドとして勤めるお屋敷の主人、醍醐クマの肩書は商工会顧問であった。まさか同姓同名で同じ役職の人間はいないと思うから、まず間違いなく当人であろう。

(あんな死にかけのくせに、こういった席には出るのか…。商魂逞しいな)

 ヒカルは面に出さないようにしながらも、醍醐クマの行動力に驚いていた。ヒカルが彼女に持つ印象はアキラと同じで、大きいベッドに横になった寝たきり老人といった物だった。

(自分が出席する予定の朝食会を潰したのが、あたしらだって分かったら、後々面倒そうだが…。まあ協定の範囲外だよな)

 ヒカルが思考を遊ばせている内に、伯爵は必要なデータの検索を終わらせたようだ。再び端末の画面が二人に見えるように差し出された。

「姫がお泊りになるのは、ここのエンペリアル・スイート・ルームだ」

 伯爵の指が各階層の案内図を指し示した。

「屋上のヘリポート(フープシュラオバーランデンプラッツ)、その直下にある展望食堂(レストラーン)。エンペリアル・スイート・ルームは、その下の二階層をぶち抜きで設置されている」

メゾネットタイプ(ミゾネットチュープ)か」

 贅沢さに呆れた声しか出なかった。

「部屋の配置だが、下の階には主に居間があり、上の階は寝室となっている」

「だいぶ贅沢だな」

 ただの感想として口にしたが、どうやら非難したと勘違いされたようだ。伯爵は表情を変えはしなかったが、ちょっと厳しい声で言い返して来た。

「一国の王族がそこら辺の木賃宿というわけにはいかないのだ。見栄という物もあるが、やはり格式という物があるのでな」

「ここに一人で?」

 ヒカルは構わず事務的に訊いた。

「いいや。姫の身の回りの世話を、長年面倒を見て来た侍女(ディンステメイヒェン)と二人でだ」

「ここにはどうやって上がるんだ?」

 続けての質問に、伯爵は喫茶店から見えるフロントカウンターの方を指差した。

「あの上がエンペリアル・ラウンジとなっていて、重要な客がエンペリアル・スイート・ルームを使用する時は、一般客は立ち入り禁止となる」

 伯爵の指は、フロントカウンターの背後に、まるでバルコニーのように張り出した部分を差していた。

「あそこから専用昇降機(ファールシュトゥール)で直通だ。途中階には止まるどころか扉すら無い」

「他の行き方は?」

 エンペリアル・スイート・ルームの間取り図に切り替えた画面を覗き込みながらヒカルは訊ねた。

「ない。エンペリアル・スイート・ルーム専属の従業員が交代する際にも、同じファールシュトゥールを使用する」

「この階段は?」

 ヒカルの指が建物の両脇にある階段を指差した。

「非常階段だ。火災などで地上へ避難する時に使用する事になっている。東側の物は内階段。西側の物は外階段となっている。両方とも下の階には繋がっており、扉は内装で隠されている。繋がっていると言ったが、階段側からは開けられないような仕組みとなっている」

「抜け出すとしたら、この階段を下りるしかないか」

 マサミチが腕組みをしながら言った。

「いや、それには無理がある」

 伯爵の指がさっと画面を撫でた。まるで牢屋のような鉄格子の写真となった。

「エンペリアル・スイート・ルームから下の階へと繋がる場所に、このような鉄格子が東西両方の階段に嵌っている」

「おいおい、非常時に使え無いんじゃ、非常階段とは言えないだろ」

「いや、下から上に上がれないように施錠されているが、上から下には自由に開けられるようになっている。が、開けると防災センターの警報が鳴るようになっているし、さらに監視カメラも設置してあった。ちなみに同じように一階の扉にも警報が鳴る仕組みと、監視カメラが設置してあった。こちらは不審者対策でもある」

「では使えはするが、使ったらバレバレということかな」

 マサミチが探るように伯爵の顔を見た。彼女は当たり前のように頷いた。

「そうだ」

「当日の警備体制は?」

 ヒカルの質問に、伯爵は指を立ててこたえた。

「まず大前提として、わが国には現在、大きな敵は存在しない。EUに加盟してからというもの、希臘(グリッヒランツ)へ併合を求めていた派閥や、逆に土耳古(トータン)と一体になろうとしていた派閥などが起こしていた抗争は下火になっている。同じように共産主義者(コミュニスト)も冷戦後は静かになった。だが過激派回教徒(イスラームシェイク・エグトリミステム)といえる一派が国内に浸透しており、敵と言えばこの勢力となる」

 一旦言葉を切った伯爵は、コーヒーで唇を湿らせた。

「とは言っても、この一派も財源や人材に豊富では無く、国外しかも極東までテロを行う部隊(グルッペン)を派遣する程余裕はない」

「つまり、お姫さまの外遊は成功する事は確実ってやつだ」

 ヒカルの言葉に伯爵は頷いた。

「それでも国際テロ組織という問題を世界は抱えているから、手を抜くわけにはいかない。私たちは、武装した正規軍の一個小隊に襲撃を受けることを前提に警備体制を敷くことにした」

「まあ、備えあれば憂いなしって言うもんな」

 マサミチの言葉にも頷いた伯爵は、二本目の指を立てた。

「よってエンペリアル・ラウンジに二十四時間体制で私の部下を一個分隊常駐させることにした。普段は背広に警棒という、日本に合わせた装備で警備につくが、いざ正面から武装集団が侵入した際には、あそこの調度類を阻塞物(バリカーダ)とし、分散して用意しておく防弾ベストと突撃銃(シュトルムゲヴェーア)で武装して、反撃する事になっている。一時間粘れば、日本警察の鎮圧部隊や、日本軍の一個小隊が救援に来てくれることになっている」

 ヒカルは今いるホテルのロビーと、二階ラウンジを見比べた。戦闘では上を取った方が有利だ。しかも二階へ上っていく階段は、幅が広くて動きやすそうだが、逆にそれが仇になって上からの射線を防ぐ物が見当たらない。人数差で押し切るにも限界があるだろう。伯爵の警備計画は間違いが無いようだ。だが撃ち合いをしていれば、いずれ負傷したり、最悪死亡したりする者も出て来るだろう。

「もし突破されたら?」

 ヒカルの冷静な質問に、伯爵も冷静にこたえた。

「一時間以内に、こちらが全滅しそうだった場合はファールシュトゥールの操作盤を破壊し、使用不能とする。そうすれば襲撃者は上の階へ行くことが困難になる。登るだけでも一時間ぐらいはかかるだろう」

「階段は?」

「あそこまで足で上がるのは苦労すると思うが、この鉄格子…」そう言って画面を非常階段の鉄格子に戻した。

「いちおう超合金でできていて、並大抵の爆破作業では突破できないと説明された。それと…」

 再び伯爵の指が画面を撫でてエンペリアル・スイート・ルームの間取り図に戻った。

 寝室の奥に不自然なほど厚い壁がある。

「図面には書かれてはいないが、ここに避難室がある。内側から施錠すれば、戦車砲の直撃にも耐えることができるようになっているらしい。中には二十四時間立てこもれるだけの食料と水。七十二時間分の酸素が用意されていた」

 断言したということは自分の目で確認したということだろう。

「襲撃があった場合、相手がどんなに小規模…、たとえ一人であっても即座に上に連絡する。脅威が去るまで姫は侍女と共にここへ籠城することとなる」

「ふむ」

 ヒカルは顎に手を当てて考え込んだ。

「他に必要な情報はあるか?」

「とりあえず保留だ。マサミチ…」

 まさか自分に話しが振られると思っていなかったマサミチが、口をつけていたカップを慌てて置いた。

「おまえなら、どうやって脱出する?」

「どうやって…」

 うーんと唸って間取り図を睨むと、表情をいきなり明るくした。

「この非常階段は上にも繋がっているんだろ?」

「繋がってはいるが、上の階のレストラーンに出るのは無理だぞ。さっきも言ったが階段側からは施錠されていて入れないようになっている」

「いやいや、そのさらに上だよ」

「?」

 伯爵は面白くなさそうに眉を顰めた。

「屋上には階段側から出られるのか?」

「出られるようにはなっている。火災などで下りることが不可能になった場合、飛行機で避難することができるように備えてだ」

「じゃあ簡単だ。そこからフリークライミングの要領で外壁を伝って地上まで下りればいい」

 溜息が二つ重なった。

「冒険家のおまえなら、それができるだろうけどさあ」

 ヒカルの口から百万言を圧縮したようなセリフが出た。

「ちなみに屋上には、宿泊中は私の部下で構成する対狙撃班(アンチ・シュネッフ・グルッペン)が常時警戒する事になっているが?」

 これは伯爵だ。

「なんだ、じゃあソコで掴まっちまうな」

 バリボリとマサミチは頭を掻いた。

「伯爵は? なにか思いつかないか?」

「自分が思いつくなら、君たちに相談してはいない」

 ヒカルに話しを振られた伯爵は毅然と言い返した。

「確かにそうだな」

 軽く笑ってからヒカルは、真剣な顔で間取り図を睨みつけた。

「コレは?」

 エンペリアル・スイート・ルームの下側の階にある一角を指差した。伯爵は一回端末を手に取って確認すると、テーブルに戻した。

ルームサービス(ゼマーサービス)用の台車(ワーゲン)を上げ下ろしするリフトだな。一階にあるサービスセンターと繋がっている。食事などを注文すると、このリフトで下の厨房から料理が上げられる。だから、これを利用して下っても二十四時間体制のサービスセンターに出るだけだ。もちろんそこには二十四時間体制で人が詰めている」

「リフトの画像はあるか?」

「少し待て」

 伯爵はまた端末を取り上げると操作した。しばし暇になったヒカルは、チラリとアキラとダイヤを視界に入れた。どうやら楽しそうに歓談を続けているようだ。

「この写真でいいか?」

 エンペリアル・スイート・ルームでルームサービス等の業務を行うためにある従業員控室の写真が提示された。簡単な料理ならば作れるような小さなキッチンや洗濯機、おそらく掃除用具が入れてあるだろうロッカーに、従業員が休めるような二畳ほどの畳の一角まであった。

 控室の奥に、小さな荷物用のリフト用の金属製の扉が写っていた。タッチパネルなどの最新技術で操作される機械では無いようだ。扉の右側に丸ボタンが並んでおり、どうやらこれを押し込むことで上昇下降、扉の開閉などの操作が出来るようだ。こんな高級ホテルにしてはアナログな機械であった。いや確実な動作をする機械だからこそ、今でも使われ続けているのかもしれなかった。

 普通の乗客用エレベーターと違うのは、一階のサービスセンターとの往復を指定するボタンしかないことだ。途中階同士を連絡する必要が無いはずだから、当たり前の仕様ではあった。

「なるほど、このタイプか…」

 つい日本語で呟いたヒカルが視線を感じて顔を上げると、二人が縋るような顔をしているのが目に入った。

「じゃあ、こういうのはどうだ?」

 ヒカルは思いついた案を喋り出した。


 まず寝室に引き上げたお姫さまは、すぐに悲鳴と共におつきの侍女とやらを呼び出す。

「今そこにネズミ…(まあ虫でもいいが、冬だとちょっと不自然かな)ネズミが出ました!」

 不審がる相手に余計な事を考えさせないように、悲鳴を浴びせるのがコツだ。

「はやく退治しなさい」と命じて、自分は内線電話でゼマーサービスに繋げる。

「ネズミが出ました! 叩く棒かなにかを持って来なさい!」

 虫だったら「殺虫剤を持って来なさい」だな。

 侍女と従業員が揃ったところで、二人の死角を指差して、さらに悲鳴を上げる。

「ほら! そこに!」ってな感じだ。

 二人が不届き者を捜している間に、お姫さまは寝室を抜け出し、下の階の従業員控室へ行く。そこでリフトの扉を開ける。なあに開けるのは簡単だ。この隙間に、下から盆か何か薄い板を差し込んで、内部の金具を押し上げれば、手動で開くようになっている。点検の時に便利なように、そうなってんだ。で、お姫さまはリフトのピット(グルーベ)を下る。

 ちょっと待って? なんだよ?

 さすがに地上まで六〇メートル近くを下るのは現実的じゃない?

 いいや、下るのは一階層だけでいい。下の階で内側から金具を操作して扉を開ければ、安全にフロアーに戻れる。

 リフトの操作盤を見てみろ。階数指定はできないが、いまドコを通過しているか分かる階数表示が全ての階にあるだろ。お客用のファールシュトゥールは専用の物を用意したが、サービス用のリフトは各階共通ということだ。おそらく、すぐ下の階にも扉があるはずだ。ま、後で確認しておいた方が確実だな。

 で、下の階からは非常階段で一階出口に向かえばいい。一階に警報や監視カメラがあっても、警備員は飛んでこないだろ。なぜかって? 中華系の旅行者なんかは、旅費をケチるために飲み物なんかを持ち込むことが多いんだ。で、足りなくなった連中は、夜に非常口から抜け出して、買いに行くことが多い。警備員も出て行くときは無反応さ。帰ってきてから取っ捕まえて、お説教なり、持ち込み品に対する追加料金の請求なりすればいいんだからな。

 無事に外に出たお姫さまは、真っすぐ道を北上すればいい。すぐに東京駅に行き着くから。

 東京駅まで行ったら、決行した時刻が一一時半だとして、中央線快速の最終電車に、まだ間に合う時間だろ?

 最終電車は武蔵小金井駅行きだから、終点まで乗ればいい。それなら不慣れな交通機関でも分かりやすいだろ?

 で、マサミチ、おまえが武蔵小金井駅まで迎えに行って、一晩(かくま)え。

 朝になったら東京観光なり、思い出の土地だったり、ロマンの探求だったり好きにできる。


 ヒカルは喋り終えると「ざっとこんな物でどうだ」と言わんばかりに両手を開いて見せた。

「注意点は?」

 端末に打ち込むでなしに、要点だけメモを書き取った伯爵が質問した。

「たくさんあるぜ」

 ヒカルは、また指を立てた。

「まず、お姫さまには、演技の練習をしてもらわないとな。ヘラヘラ笑ってネズミだの虫だの言っても、相手にしちゃくれないだろ」

「確かに。実際にそれらを持ち込むというのは?」

 伯爵の提案に渋い顔をするヒカル。

「やめといた方がいいぜ。理由は二つ。まず、いくら抜け出すためだからって言っても、お姫さまもそんな物を扱いたくはないだろ? それと、ここら辺にいる在来種を調達しておかないといけない手間が面倒だ。これがエルデーイと同じ種類で、ここらに居ない種類の生物だと、すぐにカラクリがバレちまう可能性がある。お姫さまが行方不明になったら、警察なんかはまず誘拐や拉致監禁を疑って捜査を開始するだろう。それなのに最初から自分の意志で出て行ったことを悟られたら、初動捜査に手間をかけなくていい分、早く捜査の手が伸びて来る可能性がある」

「たしかに」

 納得した顔で伯爵は頷いた。

「次に服装だ。ナイトガウン(ナハトヘムト)だけで外に出るわけにゃいかねえだろ? 東京の二月は寒いぜ。ちょっとした厚着を下に着てから侍女を呼び出し、リフトの扉を開ける前に、脱ぎ捨てられるようにしないとな。もちろん靴もスリッパーってわけにゃいかねえからな」

「夏の暑さの中だと忘れちまうなぁ」

 マサミチが頭を掻いた。

「もちろんスカート(ローク)じゃダメだぜ。ロングパンツ(ランゲホーゼン)とかじゃないとな。欲を言えば手袋もあった方がいい。グルーベを下る時に鉄骨などに手をかける事になるから、怪我の予防だ」

「グルーベの中はどうなっている?」

 伯爵が不安そうに訊いた。

「あとで警備に必要とか言って、他のファールシュトゥールを覗かしてもらえばいい。大抵点検のための梯子が設置されているから。上り下りにはそう大した手間はかからねえ。船のラッタル程度の感覚だ」

「中に居る時にリフトが動き出したら?」

 不吉な物を目にするような表情でマサミチが訊ねた。

「運を天に任せろ。って言うのはウソだ。可動部に気を付けてカウンターウエイト側に身を寄せれば、簡単にリフト本体は避けられる」

「まるで経験したみたいだな」

 伯爵の一言に、ヒカルはただ肩を竦めただけでこたえた。

「あ、あと下の階のリフトの扉もチェックしておけよ。すぐ下の階がダメでも、二階層ぐらいなら、お姫さまでも下れるだろ。これが三つ四つなら、また別の手を考えよう」

「一階の出口を通る時、仕事熱心な警備員が当番だったらどうする?」

 マサミチの質問に、ヒカルはわざと唇を歪めた微笑みをみせた。

「仕事中毒の日本人でも、そこまで真面目だとは思えない。が、不安を感じるなら、それこそ伯爵が警備の名目で、監視カメラの映像をモニターしている部屋に居て、雑談なんかで画面に注意がいかないようにして誤魔化せばいい」

「そこでは私の演技力が試されるわけだな?」

「そういうことだ」

 少々機嫌を損ねたような伯爵の声に、些事であるような態度でヒカルはこたえた。

「外の警備は?」

 マサミチの質問に、伯爵は端末を手に取り、新たな情報を呼び出した。

「表と裏に一台ずつパトカー(パンダ)がつくことになっている」

「そこで、警官に呼び止められたら?」

「普通、そこまで職務熱心なオマワリなんていねーよ」

 ヒカルが呆れた声を出した。

「警戒線の外から中へ入ろうとする奴には厳しいが、中から外へ出て行く奴なんて、ほったらかしだよ」

「そう…、かもな」

 マサミチはだいぶ歯切れの悪い声を出した。

「まあ声をかけられたら、それこそ宿泊客だが、飲み物が足りなくなって買い足しに行くところだとか言えばいい。中で頼むと結構なお値段を取られるだろ?」

 金銭の話しになって、伯爵は曖昧な微笑みを浮かべた。

「次の注意点は、東京駅までの道筋だ。これは最近便利になったから、ネット検索で町並みを見ることができるだろ? それで予習しておけば道に迷う事は無い」

「いまから周辺の様子を撮影しておいてもいいな」

 伯爵は頷いて付け加えた。

「それはそっちの領分だ。やりやすい方法を自分で工夫してくれ。あと重要なのは、切符の買い方だ。日本の自動券売機なんて使った事ないだろ? あと値段に見合った小銭も用意しておかないとな。あーっと、いま買っておくのはダメだぜ。有効期限が切れるから」

「そこら辺も、私が日本にいるうちに撮影しておいた方がよさそうだ」

「ついでに、武蔵小金井まで行ってみたらどうだ? 車内の画像もあった方が、お姫さまは安心だろ」

「考慮しておこう」

「なんで武蔵小金井なんだ?」

 マサミチが当然の質問をした。

「簡単な理由だ。出口が二つしかないうえに、夜には片方が閉まって、中央改札口しか出入りできなくなるからだ。待ち合わせに最適だろ?」

「豊田でも同じだろ?」

「だが豊田は電車が一階で改札は二階じゃねえか。武蔵小金井は逆に電車が二階で改札は一階だ。改札出ればもう道だろ? しかもでっかい歩道ときてる」

 ヒカルは自信たっぷりに言ったが、先週、香苗の買い物に付き合う形で武蔵小金井駅まで出かけていたのだ。実際に見たばかりなので間違いようがなかった。

「そうだが、そこに理由があるのか?」

「お前が迎えに行きやすいだろ? いくら駅前だからって、真夜中に無人になるわけじゃねえ。だが改札が一か所なら行き違いなんかも起こりにくいしな」

「そうそれ。なんで俺が迎えに行って匿うまでしなきゃならねえんだ?」

「おいおい」

 ヒカルは首を振りつつ舌打ちを重ねた。

「お姫さまを冬の町に放り出すつもりか? おまえは」

「あっ…」

「寒い中をしかも真夜中に抜け出して来るんだぜ? 男だったら一晩ぐれえ匿ってやれよな」

「たしかに」

 腕組みをして頷いたマサミチにも注意事項を上げた。

「もちろん駅に迎えに行くときは盗難車でお願いするぜ。足がつくからよ。しかも自動二輪車(モートアラート)がお勧めだ」

「バイクじゃないとダメか?」

 唸り声をあげるマサミチに、ヒカルは馬鹿にするような声を出した。

「盗みやすいし、足がつきにくい。駅前の歩道へ直接乗り入れて拾い上げることができる。何なら武蔵小金井だと改札の真ん前まで行けるぜ。しかも、事が終わったら海岸とか河原にでも捨ててこれるから、片付けが楽。さらにNシステムが無い裏道を走れる。いいことづくめだ」

「Nシステム?」

 聞き慣れない単語に伯爵が眉を顰めた。

「自動車のナンバー(ヌマー)を自動で読み取る装置だ。盗難車なんかも簡単に追跡できる。こいつは都内だけじゃなくて全国的に張り巡らせてある装置だから、そこら辺で盗んだ車で観光なんて洒落こんでいると、すぐにパンダに囲まれるぜ」

「日本お得意のハイテックという奴か」

「伯爵の国には無いのか?」

国境のゲート(フルークシュタイン)にはついているな。後は狭い国だから、市民からの通報で間に合ってしまう」

「それはそれでいい形の治安じゃないか?」

 ヒカルの誉め言葉に、伯爵は肩を竦めた。

「んで、マサミチは、二月までに家を片付けておけよ、という話しになるが。なにせ、お姫さまがお泊りになるんだからな」

 ヒカルが皮肉めいて指摘したが、割とあっさりとマサミチは頷いた。

「大丈夫。俺の部屋以外は綺麗なもんだ」

「おまえの部屋だって、そんなに散らかってないだろ?」

 マサミチの家など行った事も無かったが、まるで見て来たかのようにヒカルは言った。

「なにせ滅多に帰らないんだから」

「あいたた。痛いところを…」

 まるで本当に胃が痛むようにマサミチは腹を抱えた。そんなマサミチからクルリと向きを変えてヒカルは訊いた。

「んで? 男性の家にお姫さまが一晩泊まる事に、伯爵として意見はあるか?」

「ない」

 断言してから説明不足と気が付いたのだろう、伯爵は理論だって話し始めた。

「まさか恩人の娘に不敬を働くような男ではないと信じているし、なにより妻帯者であることはとうに知っている。それどころか奥方が居るということは、姫が泊まられても不自由を感じる事は少ないと思われるからだ」

「不自由?」

 不思議そうに顔を向けてきたマサミチに、ヒカルは仕方がない奴だなといった態度で言った。

「女にゃ色々と支度があるんだよ」

「そういうものか」

「そういうものだ」

 伯爵と二人がかりで念押しされて、マサミチは不承不承と言った感じで頷いた。

「まあ、ウチのカミサンなら大抵家に居るから、大丈夫だろう。カミサンの仕事の手伝い(アシステンティン)も、同じ年ごろの女の子ばかりだしな」

「家で仕事をしているのか」

 伯爵が意外そうに訊いた。

「まあね。もしかしたら〆切とやらで大騒ぎの真っ最中かもしれないが」

「で?」

 素案がまとまったところで余裕が生まれたのか、ヒカルは冷めてしまったコーヒーカップを手に取った。

「マサミチの家まで行けば、あとは日本のドコへだって行けるだろ? 北の端から南の端だって簡単だ。まあどっちかの一番端までとか言われたら飛行機とかの手配を考えなきゃいけないが…。お姫さまがロマンを感じるその学校とやらはドコにあるんだ?」

「俺もまだ聞いていなかったな」

 ヒカルに訊かれてマサミチも伯爵に向き直った。

 二人とも喋りすぎて喉が渇いたので、コーヒーに口をつけた。

「別に秘密にしていたわけでは無いのだが」と断りを入れてから、伯爵もコーヒーカップを摘まみ上げながら行先を口にした。

「東京の西側にある中高一貫校(ギムナジウム)らしい。セーリュー・ガクエンという名前に心当たりはないか?」

 思わずヒカルはコーヒーを噴きかけたが目立たずにすんだ。なぜなら隣のマサミチが本当に黒い液体を口から噴き出していたからだ。

「ウチのチビが通っている学校じゃないか」

 二度目の衝撃的な事実も、なんとかおくびにも出さずに受け入れ、ヒカルは余裕のある態度を意識しながら丸テーブルに肘をついた。

「なんだ清隆学園なら、この前の仕事で覗いた事があるぜ。あそこなら周囲の様子がまだ頭の中に入ってる」

 カップを置いた手で自分の頭を突いて見せた。

「子供が通っているということは、マサミチの家からそんなに離れてはいないのか?」

 伯爵の当然の質問に、マサミチは大きく頷いた。

「自転車で一〇分から一五分ってところだ。チビも自転車で通学しているよ」

「ならば話しが早い。マサミチの息子に案内を頼めるか?」

「むー」

 マサミチは難しい顔をした。

「チビは真面目だからなあ。授業を優先するからって断られるかも」

「朝から潜り込めないと、ちょっと大変だぞ」

 ヒカルはスカートのポケットからスマートフォンを取り出した。画面に清隆学園高等部の映像を呼び出して、テーブルの上に置いて他の二人も見えるようにした。

「まるで刑務所のような壁に囲まれている要塞のような学校なんだ。授業が終わるまで門が閉ざされているから、入り込むのは容易じゃない」

 高等部校舎を高いコンクリート製の壁が取り囲んでいた。もちろん正門や裏門といった出入口はあるが、授業中は閉じられて施錠されることになっていた。生徒たちには『ベルリンの壁』と悪口をつけられているほどである。

「唯一、学生寮に続く渡り廊下が貫通しているところだけは開けっ放しになってるが、逆に言えば不便な道なんで、寮生以外はあまり通らないぐらいだ。表からズーッと回り込まなきゃならない」

「こんなに調べがついてるなんて、いったい何の仕事だったんだよ」

 マサミチがヒカルに呆れたように訊いた。

「まあ、色々」

 そこは何とか誤魔化した。

「朝に侵入しないとなると、午後からか? 門が開くのは三時とかけっこう夕方だぞ。今は夏だから明るいが、冬の三時って言ったら、もうだいぶ夕方だ」

「学生に変装して…、は無理か」

 マサミチが腕組みをしながら言った言葉を聞いて、ヒカルは背中に冷や汗を搔いていた。王太子殿下の容姿を事前に見せられていたから分かるが、さすがに高校生の格好には無理がありそうだ。教育実習に来た大学生がギリギリの線である。

「さすがに、そこまで日本の警察がトンマだとは思えない」

 ヒカルもマサミチの真似をするように腕組みをした。

「翌日の午後なら、ホテルからいなくなって、おそらく全ての駅に仕掛けてある監視カメラで東京駅から中央線に乗って武蔵小金井駅で降りた事ぐらいは把握している頃合いだ。駅まで誰かと一緒に行動していないから誘拐などでは無くて、自分の意志で失踪劇を演じているとバレているだろうな。あとは察しのいいヤツがお姫さまのロマンに気が付くのと、こちらの動きと、どちらが早いか競争だな」

「じゃあ授業中に入り込むことを考えた方が楽か」

「渡り廊下の方へ回り込むのは得策じゃないと思うぞ。教員用の駐車場への通路にもなっているからな。その日の授業が終わった講師なんかが帰ろうとして偶然出くわす可能性がある。流石に勤務を終えた後でも、不審者が校内に入り込もうとしてたら、声をかけるぐらいするだろう。最悪、騒ぎになる」、

「とすると、なんとかして壁を乗り越える方法を考えた方が楽か」

「乗り越えるとしたらココだな」

 ヒカルはスマートフォンの画像を切り替えた。外壁の様子が写された一枚である。

「これは北東側の壁になるが、こんなに蔦が生えていて、まあ登る時にザイル代わりにできる」

「たしかに」

 垂直の壁でも登山の経験があるマサミチの目には大した障害には映らないようだ。軽い調子で頷いた。

「下側の一メートルぐらいはマバラで頼りないが、補助の人間が押し上げれば、後はツタをザイル代わりに登れそうだ」

「おまえがやるんだぜ、その補助とかやらを」

「そうなるな。つまりこの日は、昼ぐらいに俺は盗んだバイクで殿下を送り届け、この壁を超える手伝いをするところまででいいのか?」

 思ったよりも簡単な仕事で終わりそうだと胸を撫でおろすマサミチに、ヒカルは釘を刺した。

「それから必死に追っ手をまいて、どっかの河原にそのモートアラートを捨てるっていう仕事も残ってるぞ」

「追っ手をまくって…」

 再び不安げな顔になるマサミチの顔の中心を指差して、ヒカルは言った。

「だから察しのいい連中なら、もう清隆学園の周囲に網を張っていてもおかしくはない時間だ。壁の中は学校ということで手出しは出来ないだろうが、脱走劇を助けたおまえを見逃してくれるほど、日本の警察も甘くはねえよ」

「はぁ。面倒だなぁ」

 マサミチはまた頭を掻いた。

「その面倒事を持ち込んだのは、おまえ自身だろ」

「わかったよ」

 肩を落としたマサミチは、ふと気が付いたように顔を向けた。

「だけど殿下はどうなる? 警察やら何やらに取っ掴まって、酷い目に遭わされるんじゃ…」

「さすがにオマワリが校内に無断に入り込むとは思えないが、逆に言えば許可を得れば幾らでも入れるってことだもんな」

 ヒカルは両手を上げた。

「大人なんだから、そこからは自分で何とかしてもらおう。それに…」

 ヒカルは、ふと学内の協力者として明実に紹介された少年を思い出していた。いつも正体不明の彼だが、騒動が大好きという一面がある。彼ならば、普通にお姫さまが掴まるよりも、彼女に協力して事態を引っ掻き回す方に動くのではないだろうか。

「意外と脱出に成功して、大使館あたりまで一人で帰って来るんじゃないか?」

 希望的観測であるが、その予感が当たる気がして、ヒカルはマサミチに微笑んでみせた。

「つまり、君が助けに行ってくれるということか?」

 ヒカルのセーラー服を眩しそうに眺めた伯爵が確認した。

「いや。その時、あたしが東京に居られる保証は無い。アテにしてもらっても困る」

 今度は脳裏にどんな攻撃も無効にした筋肉質の男が浮かんでいた。もしかしたら明日にも再襲撃があって、死ぬまではいかなくとも、重傷を負って動けなくなるかもしれないのだ。それなのに無責任な安請け合いはしたくなかった。

「なんなら、おまえのトコのチビに言っておけばいいじゃないか。校内でお姫さまを助けてやれって」

「いちおう考えておくか。だが…」

 また腕組みをしたマサミチは深刻そうに言った。

「チビは俺と違って優しい子だからなあ。こういう荒事には向いていないかもなあ」

「おい」

 眉を顰めたヒカルは言った。

「やっぱり、おまえの子じゃねえんじゃねえか?」




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