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「ここなら誰も来ないしさ、ゆっくり話せると思ってね」
その言葉につられて、ぼくたちは並んで腰掛けた。
「それで、何か用事でもあるの?」
「うん、あるんだけどさ…………」
「じゃあ早く言ってよ」
「えーと、だからね…………」
その子はそこで言葉を詰まらせてうつむいてしまった。
「どうしたの?」
「やっぱり言えない!」
そう言うなり、その子はその場から駆け出してしまった。
わけがわからず、ぼくはその場に取り残されたまま、ただ呆然としていた。
教室に入ると、みんなが一斉にこちらを見た。
なんだか落ち着かない様子で、ひそひそと話し合っている。
「ねえ、なんだと思う?」
「さあ…………」
「まさか告白とかじゃないよね?」
「それはないと思うよ。だって相手は○○○だし」
「だよねぇ…………」
ちらりと見ると、例の子の姿があった。
いったいなんのことだろうと不思議に思いつつ席に着くと、今度は別の子が話しかけてきた。
「ねえ、きみってさ…………」
「えっ?」
「ううん、なんでもないや。ごめん」
それだけ言い残して、自分の席に戻ってしまった。
結局、最後までその繰り返しだった。
授業中になっても、みんなの様子がおかしいままだった。