出会いは吐き気と共に
数時間後…
私は船酔いに悩まされていた。
「誰かー助けてー気持ち悪いー!」
うめきながら固いベットに横になっていた。
そういや、私
車や船って乗ったら酔うんだったー
忘れてたわー
助けも来ず、何時間か
船酔いに悩まされていると
外から争うような音が聞こえてきた
金属音と怒号や叫び声。
えー何よー
静かにしてー
頭に響くから、ほんと吐くからー
勘弁してー
吐き気と戦っつていると
いっそう大きな音がした後
ガチャっと
ドアが開かれた
「あれ?女がいる…」
船酔いで酷い顔のまま見上げると
夜空のような深い黒の髪に
炎のような熱のある綺麗な赤目に整った異国風なワイルドな美形がそこにいた。
王子とか攻略対象の人達もイケメンだったけど、
比較にならない程の美形だった。
わーイケメン
と思って顔をあげたが
吐き気が急にきて
私は盛大に吐いたのだった。
「えっ!マジかよ!
大丈夫か!おい!」
嘔吐物の臭いの中
イケメンがイケボで何か言ってるわーと
思いつつ
スッキリした私は意識を手放したのだった。
☆☆☆
暖かなモコモコした手触りに包まれて
私は目を覚ました。
「んーここは…私何してたんだっけ?」
そこは知らない豪華な部屋の
ベットの上だった。
働かない頭で
とりあえず、モコモコの正体を探る。
白くて大きな犬だった。
めちゃ可愛い!!
モコモコ白わんこは
私が気がついたのを察知し
ペロペロとなめてきた。
可愛いすぎかよ!
モコモコと戯れていると
「おい!目が覚めたのかー?」
低くて素敵なイケメンボイスが聞こえた。
聞こえた声の方に顔を向けると
さっきの黒髪の赤目のイケメンがいた。
「あーどうも…」
ボーとイケメンに見とれて返答する
「盛大に吐いたから、スッキリしたか?
それとも船酔いは、まだ辛いか?」
心配顔のイケメンの顔が近づいてきた。
「うひゃ! はっはい!だっ大丈夫です!
そっその節は、失礼致しました!」
裏返った声をだして
恥ずかしくて、顔を真っ赤にしたのが、バレないようにとモコモコに顔を埋めて返答する
「ふーん」
イケメンがニヤニヤしながら遠ざかる。
「それにしても、ドジャーが懐いてるなんて珍しいな」
モコモコ白わんこを片手で撫でながら
イケメンが話す
「ドジャー?」
まだ赤いだろう顔を隠しつつ、小首をかしげる問いかけると
「そっ!こいつの名前!
こいつはなー、実は魔獣なんだぜー」
得意気な顔をするイケメンと白わんこ改めて魔獣ドジャー
「まっ魔獣!?!?」
魔獣ってたしか…
この世界にはいる魔物になった動物で
人を襲う怖い生き物では?
「大丈夫、こいつは人を襲わない。実際にあんたに懐いてるだろ?
まーお前以外には、ここまで懐いてはないけどな!本当に珍しい…」
私が恐々とびくついていると
ふっとイケメンの顔がゆるみ、片手で私の頭をガシガシっと撫でた。
「腹が減っただろ!
あーえっと、お前名前は?」
またイケメンの顔が近づいてくる。
「もっ桃花です!」
戸惑って焦りすぎて、日本人の前世の名前を名乗ってしまった。
「モッモ・モカ?
モカって呼べばいいか?
俺はライアンだ!よろしくな!モカ」
屈託のない少年のような笑顔に、私は不覚にも
ときめいてしまったのだった。
「さっ飯食いにいくぞー」
ライアンがそう言うと、ドジャーはのっそりと立ち上がりドアの方へ悠然と歩みだした。
私も立ち上がり
ドジャーの後をおって歩きだしたが
ふらついてしまった。
「おっと!大丈夫か?」
ライアンが私を抱き止めてくれ
近づいた顔に、男らしい腕に、シュガーの臭いに
顔が真っ赤になった。
「あっ!ごっごめんなさい!」
あわてて離れようとするが
上手く足がたたず、また、ふらついてしまい…
「あっ!おい!ホント危なっかしいなー」
そう言って、ライアンは右手で自分の頭をガシガシっとかき
「ほらよ!っと、病みあがりなんだ。無理すんなよ」
私をお姫様抱っこしてくれた。
私の顔は余計に赤くなり、タコのようになったのだった。