婚約破棄
「マリアン・クローヴィス!お前との婚約を破棄する!」
貴族学園の卒業パーティー
きらびやかな舞踏会の会場で
金髪ストレートの髪に深い海のような青い瞳
眉目秀麗な
この国の第一王子
リチャード・アフガニ・ブロイアンは
ピンクブロンドのふわふわな髪、透き通った空のような瞳の
平民から男爵令嬢になった
目に涙を浮かべた、か弱い女の子
ソフィア・ローランを傍らに抱き寄せながら
婚約破棄だと大声で叫んでいる
私、マリアン・クローヴィスは
クローヴィス公爵家の長女で
目の前の第一王子の婚約者にと幼き頃から王妃教育を受けていた。
冷たい印象になるホワイトブロンドに、氷のような瞳は
きつい印象のつり目
誰もが淑女の鑑と称える洗練された身のこなし
公爵家の恥にならないようにと気をはっていた。
父上はこの王国の宰相を勤め
兄は文官として、王子の側近を勤めている
その兄も冷ややかな目線で私を見下ろしている。
「お前がソフィアにしてきた極悪非道な嫌がらせの数々!許しはしないぞ!」
私を睨み付けながら、王子は言い放った。
「お言葉ですが、殿下
全く見に覚えがありません」
りんとした姿勢で、礼儀正しく優雅に返答すると
「そんな!マリアン様酷いですわー!」
とソフィア男爵令嬢は涙を流して王子にもすがる。
「マリアン!よくもソフィアを泣かしたな!
ソフィアに謝れ!悪女め!
俺がソフィアを気に入っているのが気に入らず、醜い嫉妬で
ソフィアにきついことを言い
教科書を破き、階段から突き落としたそうだな!忘れたとは言わせないぞ!」
眉目秀麗なお顔を怒りに歪ませ
第一王子は大声で叫ぶ
「まあ、きつい事と申しますと…
ソフィア様は貴族社会に慣れていないと
他のご令嬢様がたから注意して欲しいと頼まれまして
『身分が下のものから話しかけてはならない』
『婚約者のある方と親しく名前でお呼びしたり、密室で二人きりになってはなりません』
『呼ばれてもいないお茶会に堂々と参加してはなりません』
という貴族淑女として当たり前の事を教えて差し上げた事でしょうか?
それと、教科書とか階段とはなんの事でしょう?見に覚えがありませんわ」
小首をかしげて返答すると
「言い訳をするな!
そんな性根の腐った悪女など、よもや国母に相応しくない!
婚約破棄の上、国外追放を言いわたす!」
か弱い男爵令嬢を
王子と側近達が庇いながら高々に宣言された。
「殿下…これは国王陛下もご承知なのでしょうか?
私と殿下の婚約は家同士の契約でしてよ。
私は父からは何も聞いてないのですが…」
困ったように優雅にたたずんだまま、お伺いをたてると
「はっ!何をいっている!事後報告でいいに決まっている!
嫉妬に狂った女の言動など、見苦しいにも程がある!
衛兵!さっさと連れて行けー!」
聞く耳を持たない、このバカ王子は
家同士の婚約を勝手に解消したらしい。
屈強な兵たちが回りを囲む
特に王妃にも王子にも未練はないため
「分かりましたわ、殿下
今まで有り難うございました。」
と、優雅に淑女の礼をして
私は会場を後にした。