妖怪武闘会
3つ目書いてみました。よろしくお願いします。
「第31415926535回妖怪武闘会もついに決勝戦を迎えました。凄まじい熱気と湿気です。私も非常に元気が出てきました。えー、実況は私河童、解説はこの方」
3秒に1回開催される由緒正しき妖怪武闘会、その決勝というだけあり、多くの観客が押し寄せている。今回の会場は日本のとある山の中、立ち込める霧は選手や観客から立ち上る湯気か、それとも雲か。どちらにしろ、このような湿度の高い場所では河童は非常に活発となり、口数も増える。
「……雪男です。暑いな」
観客たちから立ち上るのは湯気だけではない、熱気もまた然りである。そのような熱気に心底辟易しているような声音で雪男は言った。
「いやあ、わざわざヒマラヤの山中からお越しいただき有難うございます、雪男さん。雪男さんは既に5度優勝されており、殿堂入りなさっておりますが、貴方から見て、今回の勝負ずばりどちらが勝つと思われますか?」
「……分からん。暑い。どっちでもいいだろ、そんなの。冷房つけるぞ」
「どうぞ。冷房でも何でもつけて下さって構いません。ですが見解くらいはお話しいただけると――」
「……除湿にするか」
「それは駄目!」
「……じゃあ冷房にしとくか」
リモコンを操作し、冷房をつけると雪男は言った。エアコンが付いているだけの粗末な小屋である。
「……酒呑童子だと思うぞ」
「天狗さんではないんですね?」
「……あれは団扇が強いだけだろう」
「なるほど……羽団扇ですか。確かに強そうですね」
そう言って河童は、格闘が行われる予定のリングに目を遣る。間もなく決勝を戦う2人、いや2体だろうか――が入ってくるはずだ。
「天狗さんも、酒呑童子さんも既に4度優勝されており、どちらが勝っても殿堂入りということになりますね。天狗さんが出場された回は全て天狗さんの優勝、酒呑童子さんが出場された回は全て酒呑童子さんの優勝。このお二方の対決は今回が初めてです。楽しみになってきましたねえ。私も交ざりたいぐらいです」
水かきのついた指を広げたり閉じたりしながら、河童は言った。
「お前が交ざったらすぐに終わるだろう。第1回から7643連覇して、最初に殿堂入りしたんだからな」
「いや、でも最近はレベルも上がってきてますからね。1秒くらいなら耐えてくれるはずでしょう。という訳で実況はお願いします!」
雪男さん! とこれからの戦いが楽しみで仕方ない、というような声を残して河童は駆け出していった。尤も、雪男には視認することすら叶わなかったが。
「……除湿、つけるか」
汗を滝のように流し、片手で首筋を仰ぎつつ、彼は呟いた。
そのとき、地面が、否、山自体が傾いた。なす術もなく山腹を滑り落ちていく参加選手や観客たち。河童や雪男とて例外ではない。
「せっかく他人様が気持ちよく眠ってるところを、おれの膝の上で騒ぎやがってよお」
だいだらぼっちが、立ち上がったのだ。




