不死身になった男
1
ある日、悪魔が現れて、なんでも願いを叶えてやると言った。
だから俺は、不老不死にしてほしいと頼んだ。
その時は、本当に叶えられると思っていなかった。
今やり直せるとしたら、決断を俺は変えただろうか?
2
俺は自由だった。
ずっと若いまま、俺は世界中を旅して過ごした。
たくさんの人と出会い、わかれ、人の一生の何倍もの時間を過ごすことができた。
そう、あの日までは。
3
ある日、地球に隕石が落ちたのだ。
隕石はまるで、地球を目指してやってきたようだった。
落下した衝撃とその後の影響で、地球から生物は全くいなくなった。
たった一人、俺を残して。
4
俺は決して死ななかった。
体が破損する度に、前よりも強くなってよみがえった。
地球の環境が悪くなればなるほど、俺の体は丈夫になった。
長い時がたって、俺はまた動けるようになった。
5
俺は、自分の体を運ぶためのロケットを作り始めた。
地球には、もう生物が生まれるとは思えなかった。
全て一人で準備しなくてはならない。
ただ俺には、時間だけはあった。
6
宇宙に出れば、もしかしたら他の生物に会えるかもしれない。
もしくは、自分を殺すことができるかもしれない。
そんな思いで宇宙へ出たが、決してそうはならなかった。
どこまで行っても生物に出会うことはなかったし、太陽に飛び込んでも死ぬことはなかった。
7
俺は、宇宙の一か所で動くのをやめた。
体は石のように硬くなり、宇宙の塵を吸い寄せて大きくなった。
地球から見れば、俺は一つの星になったように見えるだろう。
そして、長い時間がたった。
8
ふと、何かが動いた気がした。
必死に目を凝らすと、それは地球からの光だった。
長い時間、地球を見続けると、確かに何か動いているのだ。
それは、地球にまた生命が生まれたということだった。
9
俺はさらに目を凝らした。
地球に生物が生まれ、そして人間が生まれた。
人は文明を築き上げ、電気の光がまた見えるようになった。
俺は自分の中から込み上げてくる思いに気づいた。
10
少しだけ体を動かそうとしてみる。
長い時間がたっていたが、また俺は動かなくてはならない。
そして、絶対に帰るのだ。
俺が生まれたあの星へ。