読んでも時間しか潰れない、チラシの裏的エッセイ 第一話山崎賢人様
テレビで、ジョジョの奇妙な冒険の映画CMを見た。
主演の山崎賢人さんを見ると『せめて彼の50パーセント、いや、30パーセントくらいイケメンだったら、もっと人生イージーモードだったかも』なんて思いつつ、五月に彼が主演を務めた舞台を見に行った日の事を思い出した。
どうして私がキャラに似合わないな舞台見学に出かけたのかというと、親戚がチケットを取ったが、急用で見に行けなくなり、是非どうぞと両親に郵送してきたからだ。
チケットは一枚しかないため、基本ボッチの私に託されたというわけだ。
色々と思う事はあったのだが、どうせチケットが二枚あっても一緒に行く彼女なんていないので結果は同じだと思う事にする。
当日、無事劇場に到着した。
山崎賢人さんが主演する舞台の題名は『里見八犬伝』。
真田広之さんが主演した映画は見た事があるし、これが恋愛物とかだと困ってしまうところだったが、題名的には当たりではないかと。
私でも楽しめそうなという意味で。
ところが私は、この舞台の会場で未知の世界と遭遇する事となる。
まず『里見八犬伝』なので、山崎賢人さんを含め、多くの若手イケメン俳優達が出演する。
ここまで言えばわかると思うが、基本観客の95パーセント以上は女性である。
お嬢ちゃんも、お嬢さんも、お嬢様もいた(みのもんた風)。
私は、いきなりアウェー感を感じてしまった。
男性もいるにはいるのだが、みんな夫婦かカップルで『奥さん(彼女)のつき合いで来ました』的なオーラを漂わせていた。
男性一人で来ているのは私だけ……同じボッチ仲間がいたところで、だからどうなる話でもないので探さなかったけど……。
舞台の外では、ピンバッチ、パンフレットなどのグッズが販売され、出演俳優さん達のファンが大量に購入していた。
舞台出演を祝う花輪や鉢植えなども、まるで『笑っていいとも』の大物ゲスト出演会並に大量に置かれており、しかもファンが連名で出したり、個人で出しているのもあった。
このもの凄いファン力!
どうしてそんな物を見ていたのかって?
舞台が始まるまで、どうやって時間を潰していいのかわからないかったからだ。
だって、周りは女性ばかりだから……。
ようやく席に座れる時間になって安堵していると、そこは二階席だった。
チケットに書いてあったから知ってたけど。
どうも一階の、特に最前列席などは俳優さんのファンクラブ会員が優先らしい。
どうして山崎賢人さんのファンクラブに入っていない私にそんな事がわかるのかというと、同じ二階席で一階席を取れなかった悔しさを語っていたレディーの方々がいたから。
気持ちは……わからんでもないのか?
早速劇が始まり……確かに二階席だと俳優さんの顔はあまり見えない。
私は目が悪いので余計に。
でも、お芝居自体はとてもよかった。
八犬伝だからであろう、躍動感溢れる殺陣のシーンなども豊富で、結構集中して見ていた。
場面の切り替えもスピーディーで、昔の劇よりも演出やスピード感は進歩しているように思えた。
たまには、観劇に出かけるものいいものだと思う私なのであった。
一階の最前列、俳優さんが席の傍まで降りてきて芝居をするのか。
今の演劇って、ファンサービスが豊富なんだな。
これは、ファンクラブ会員がチケットを取り合うのがよくわかる。
それで、どうして題名が山崎賢人様なのかというと。
劇は一部と二部に分かれていて、一部が終わった休憩時間の事だ。
さてトイレにでも行くかと席を立とうとしたら、後ろから女性達の会話が。
「やっぱり、二階席はイマイチね」
「そうね、賢人様の顔が全然見えないもの」
賢人様……様つきとは……。
さすがは、ファン多数の人気若手イケメン俳優。
というか、様なんて呼ばれ方、昔の少女向け学園アニメに出てくる王子様的な男性キャラくらいか?
あと、なろうの総合二位。
さらに、観客は女性ばかりで若干居心地が悪かったものの、まあお芝居自体は面白かったなと、劇場を出て最寄りの駅へと向かう帰り道。
同じく、観劇を終えた女性達の会話が聞こえてきた。
「日程も後半になって、賢人様、疲れているみたい」
「心配よね」
……凄いな、またも賢人様か。
というか、あなた達。
前半のまだ疲れていない賢人様も見ているのですね。
ファン魂恐るべき。
こうして私の観劇は終わったわけだが、せめて山崎賢人様の15パーセントくらいイケメンだったらなぁ……。
人生もうちょっとイージーモードだったかもしれないのに……。
もう一つ、よかった事。
一部と二部の間の休憩時間にトイレ行ったら、女子トイレは行列だったけど、男子トイレは私ともう一人しかいなくで空いてたなぁ。
並ばなくてよかった。