大日本帝国と大英帝国
はじめましてしまーと申します
この作品をよろしくお願いします
明治40年
2年前に辛勝した日露戦争が終わり賠償金を得られず樺太の半分と朝鮮の独立、大した権益を得られなかった
支那大陸への足がかりは多少は出来たものの利益を上げるにはかなりの投資をしなければならないという苦しい状況である
帝都 帝国ホテル
「....」
「兄さん 久しぶりだね」
「真之か」
この二人の男のうち一人は黒溝台や奉天会戦で秋山支隊を率い活躍した《日本騎兵の父》秋山好古 そしてもう一人の男は日露戦争時に日本海海戦で参謀として参戦し大勝利に導いた《智謀湧くが如し》と言われた秋山真之である
真之は兄の好古に呼ばれ帝国ホテルに来ていた
「急に呼んだ理由は何ぞな?」
「こんな事を言うのもなんだがとある夢を見た」
「夢...?」
「そうだ。夢だ」
真之はなんとも言えない表情をして兄を見た
それを見た好古は少し弟を睨みながら
「そんな顔をするな。お前なら見てそうだと思うてな 」
「その夢って?」
「大声では言えないが...」
好古は真之に耳を貸せというアクションをした
「?」
真之は兄の方へ頭をやりその事を聞いた
真之は驚愕の表情を浮かべた
「兄さん...それは!」
好古は制し
「うむ、これは軍事機密でもある。後の話はわしの家でだ」
「わかった」
二人の男は帝国ホテルを後にした
日本 某所
複数の男たちが集まり話し合っている
「これは...」
「うむ」
「急いで国内の貯蓄を始めなければ」
「なれど、臣民や新聞社に知られてはまずい」
「あいつらは妙に鼻が効く。知られて仕舞えば馬鹿みたいに扇動するぞ」
「わかっておる。こういう時こそ陛下のお力であろう」
「貴様!その言いようは陛下に対し不敬であるぞ‼︎」
「怒鳴るな!そういうことは重々承知してある‼︎」
「臣民を納得させるにはそれしかあるまい」
「陛下に掛け合っておく。それまで各議員を説得しなければ法が通らんぞ」
「左様、地主の成り上がりの馬鹿はバカでも議員様だ。地主議員連中に変に結束されてはまるで困るからな」
「では、国内の資源の貯蓄や正貨(金のこと 金本位制度の時代は金のことは正貨と呼ばれた)の回収をする方向で」
複数の男が
「異議なし」
と唱えた
数ヶ月後
明治天皇による勅命が下された
備蓄法である
それは日本国内に各種資源の備蓄を行い国難に陥った際に使うという法律である
この法律は日清日露戦争の際に物資不足による戦争継続能力の無さが浮き彫りになったため今後そのようなことがないようにするためにと制定された
この法律の制定によって弾薬や兵器の備蓄を増やすため工廠や造兵廠はフル稼働を始め日露戦争で障害を負った人間や失業者を雇うことで失業者対策を行い福祉の整った職場を用意した
これに伴いひどい扱いを受けていた女工がこぞってそっちの方へ流れてしまったため紡績工場の経営陣は女工たちの待遇改善を余儀なくされた
珍しく新聞社や労働者らが政府の行為を褒め称えたが社会主義者や扇動家にとっては民衆を操りにくくなるのでこの法律を嫌った
さらに政府は農作物の生産量を上げるため地税や小作料を下げるという飛び切りド級な改革を行い科学者を率い地質や作物の改良を行わせ収穫量もかなり改善が見られた
小作料を下げることに対し多数の地主だった人間は政府に文句を言っていたが
異例中の異例である陛下が直々に
「これは苦しんでいる臣民らを鑑みてこれ以上の苦しみを与える事は朕への反逆である。そして、臣民の発展は大日本帝国の発展でもある。その発展を阻害する気なのか?」
と仰ったことにより地主連中は黙りこむしかなくなった
そして当時の階級のうちのほとんどを占めた農家農民の人間は狂喜乱舞し明治天皇への感謝や明治大帝聖下と崇拝する者も現れた
このドサクサに紛れ所得税を制定したが税率はそんなに高くなかったのでごく一部の実業家以外騒がなかった
同年 大英帝国 工業街
ガンガンと騒音を響かせ世界に冠たる工業製品を製造する工場の一角にて
「所長〜!いますかー!」
「なんだ。騒々しい」
「日本の大企業の幹部が来ましたよ〜」
「そうか、なら通せ。そしてティーの用意をしとけ」
「アイアイサー!」
所長からの言いつけを了承するとスタタタとかけてゆく従業員
「全くマークの奴は楽でいいよなぁ」
ハァと溜息をつく所長であった
このあと会った日本人は工作機械とその設計図を求めてきた かなりの発注数であった
ちなみにこの工場の所長は知日家であったため工作機械のノウハウを書いた紙を付けさらには値段もこっそり安くしていたという裏話がある
この時の大英帝国はかなり不思議がったが後進国なりの努力であり我が国大英帝国の製品を買い込んでくれるので損はないと考えた
数年にわたって大日本帝国は各種資源を買い込みを行なった
さらに大日本帝国は世界が驚くことを行なった。それは植民地の放棄である。帝国主義時代、植民地を手放すのは戦争での賠償と経営が苦しくなった以外でありえないと言える。イギリス、ロシア、アメリカこの三ヶ国に売るというトチ狂ったとしかいえない行為であった。この植民地の売却により日露戦争の戦費を完済にこぎつけたのである
列強は何かあると勘繰りスパイや工作員を送り込んだが日本本土の発展と内政の整理であることがわかった。欧米列強はすぐさまに朝鮮、満州へ投資を行った
数年後 イギリス植民地省
複数の男達は会議室で話し合っていた
「植民地の土人どもが叛乱を起こしていると?」
植民地大臣は訝しげな表情を浮かべた
それに対し補佐官は少し怯えながら
「は...はい、かなりの大規模で土人の全員が蜂起を起こしたと各地の総督から連絡を受けてます」
「ならば鎮圧をすればいいじゃないか」
軍服を着た男は吐き捨てるように言う
「そうだ。東洋艦隊に連絡を入れれば艦砲射撃で済むじゃないか」
軍服を着た男の意見に同意するように第一海軍卿は言う
「じ...実は東洋艦隊を植民地連中に押さえられ現地のイギリス軍が苦境に立たされてます」
補佐官は青ざめながら報告する
「何だと‼︎」
補佐官以外は驚きのあまり立ち上がる
「総督は無事なのか⁈」
「東洋艦隊が奪われただと?馬鹿を言うな!」
大臣らは狼狽する
会議室に別の補佐官が駆け込んでくる
「そ...総督や現地に滞在している邦人は中立国へ脱出完了しました!一つはっきりとしていることは電信の内容から植民地の連中は艦隊を率いて我が英国本土を襲うつもりです」
「大臣!これは一大事ですぞ!」
軍服を着た男は吼える
「わかっている!すぐに議会や第一大蔵卿、そして国王陛下に掛け合わなければなるまい」
「で、では私たちはさらなる情報を集めてきます」
補佐官らは足早に去って行った
これらを受け大英帝国政府は直ちに艦隊の派遣を決定しさらにヨーロッパ各国政府に協力を要請した
しかし、ほとんどの国は要請を渋った
渋った各国の理由のほとんどは財政難や仮想敵国に手を貸してどうするのかという民衆の意見を尊重した結果であった
艦艇を動かした国もあったがそれは単にパフォーマンス程度であり役に立たない
これは数百年前からの各国へのいやがらせのツケであった
英日同盟を理由に日本へも協力を呼びかけていたが日本は日露戦争による傷跡が深く艦隊や艦艇自体を派遣すらままならないほど財政難という理由で切り抜け大英帝国自身も日露戦争でガッポリ稼げたので強く言えなかった
紅海 スエズ運河周辺
ドガン ズドンと轟音が響く 戦艦からの艦砲射撃である
やや旧式化していたとはいえ34.3センチ砲から放たれる砲弾を喰らえばひとたまりどころか地獄でしかない
さらに側舷から放たれる副砲も陸上にある下手な大砲よりも強力であるためイギリス軍は反撃に出れない
インド人の指揮官は声をあげ
「撃てーッ!」
「さあ、みんなこの一発一発撃つごとに植民地支配から解放される!」
「俺たちの土地を取り返すぞー‼︎」
「俺らは奴隷じゃない!立派な人間なんだ‼︎」
鬨の声をあげ士気高く未来へ進み歩んでいく植民地の民たち
イギリスは植民地人の乗った植民地艦隊(仮)を凌ぐためにあらゆる手段を用いて邪魔をしたが圧倒的な士気の高さのあまり邪魔を全て排除されたという事態が起きた
この事態にイギリスを仮想敵国としているフランスは「数百年前からのツケ 耳を揃えて払うべし」というどぎつい皮肉の効いた記事が連日発行されたという
イギリス海軍は徹底的に叩き潰すため一部の旧式戦艦を残し最新鋭戦艦を含め全力出撃を行い。通信状況や植民地艦隊の動きからジブラルタル海峡で待ち伏せを行なった
下士官ら以下はトラファルガー海戦やネルソン提督に想いを馳せながらジブラルタル海峡へ移動した
ジブラルタル海峡
植民地艦隊は待ち伏せに気づいていたためイギリス海軍対し単縦陣を敷いた
大英帝国の提督は、いくら士気は高くとも訓練をやってなければ撃っても当たる事はないと植民地艦隊側の弱点を見抜いていた
数年前の日本海海戦のように完勝できると思い東洋のネルソンであるアドミラルトーゴーが行なったトーゴーターンをおこなった
しかしその瞬間、艦隊の搭乗員らは謎の白いモヤと光に包まれた
「なんだ!コレは⁈」
「前が見えない!」
「馬鹿者!うろたえるな」
「提督 いかがなせれますか?」
「電信を使い各艦に停船するように伝えろ」
「わかりました。通信兵!各艦に停船を伝えろ」
「わ、わかりました」
各艦に伝わり停船した
すると艦隊の搭乗員が誰一人いなくなった
これは世紀の謎として後年各国に語り継がれるようになった