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文明国の焦り

ツヴァレンティア城 執務室



「大公閣下!大公閣下!一大事でございます」


「うるさいな。聞こえておるぞ」


面倒臭そうに部下に対して返事をするが次の言葉を聞いて状況が変わった



「港に大型蒸気船及び大型装甲艦が入港しています!」


それを聞いたコラトス大公は思考停止を起こし咥えていた高級葉巻をぽとりと落とした。だが、すぐさま思考を開始し声を上げる



「蛮族国家ではなかったのかッ‼︎」


「ええ、彼らは間違いなく文明外地域の国家であります」


部下は焦りながら受け答えをする。彼らは日本と大英帝国のことをパントール共和国と同じくらいの文明レベルであるもしくは劣った文明レベルと考えいたためであった


だが現実には、列強並みもしくはこの世界の列強たる六天を超えるほどの国力を有する国家である。驚くのは無理もない


「どうすればいいのだ!」


彼は可能な限り思考を巡らせる。だが、あまりの衝撃に有用なアイデアは思い浮かばなかった



「とりあえず、謁見の準備だ!」


慌ただしく日英の代表団との謁見の準備に取り掛かる。下手をすれば戦争になりコラトスという国自体が滅ぶ可能性が浮かび上がったためであった








一方で日本と英国の皇太子、王太子ら交渉団はツヴァレンティア城に向かっていた。


馬車内


「馬車とは風情なものですな」


エドワード王太子は馬車での移動を楽しんでいた


「しかし、まさか同じ馬車に詰め込まれるとは思いもよりませんでした」


皇太子殿下は苦笑しつつ眉を顰めながらエドワード王太子に話す


「仕方ありませんよ。彼らはどうやら我々の国家レベルを知らなかったようですから」


「今頃、この国の大公閣下は大慌てでしょう」


両国の殿下達は、雑談を交わしつつ城までの風景を楽しんでいた。彼ら2人は最初のうちは、この行為に不満に思ったが今となっては特に気にしていなかった







コラトス公国 港町


停泊中の戦艦三笠に群がるように民衆たちが観察をしている。その様子を見つつ2人の男が停泊中の戦艦三笠の左舷側甲板上で雑談を交わしている


「さぁて、なんぞなもし?この注目度は。なぁ、高野」


「秋山少将、私に言われても困ります」


「やっぱり、異世界の人間や亜人種とやらは、がいなのお」


「あのぉ、少将。わたし、伊予弁わからないのであまり伊予弁使わんといてください。ちなみにさっきの‘がいな’の意味はどういうものですか?」


「まぁ、ケタ外れとか妙なとかそんな感じやけん」


しばらく雑談は続く。実りのあるような無いような話だった。時たま、秋山真之は炒り豆をボリボリ貪りさらに放屁をしていた。隣にいた高野五十六大尉はそれを見て顔をしかめていた



「まぁ、ワシらは居残り組やけん。暇ぞな」


「そう言われても...」


暇を持て余していた彼らに突然の訪問者が現れた。三笠を停泊させている埠頭の下の方から声が聞こえる


「おーい!そこのニホンの兵士の人!」


秋山と高野は怪訝な表情を浮かべる。だが秋山がすぐに返答をする


「なんぞなもし!」


「俺はコラトス兵士だ!話がしたい!」


「話とはなんぞな」


「この国の名物を紹介したいから降りて来てほしい」


「名物とは何ぞな!」


「我が国の料理だッ」


「行かせてもらう!」



コラトス兵は安堵した。彼らが誘いになれば様々なことが聞けるからだ。ご馳走して持て囃せば気を緩め軍の機密をぽろっと話してくれる可能性があるからだ。日本側の艦だけではなく大英帝国側にも誘いをかけていた。彼らも誘いに乗っていたのであった



そんなことも知らないもしくは勘付いてない秋山は高野の襟を掴み引きずりながらタラップに向かい始めた


「おっしゃ!タダ飯じゃ!行くぞ!」


「やめてください少将!」


「ちょうどいい山口も着いてこい」


たまたま、書類の整理などが終わり歩いていた山口多聞少尉も誘われた。引きずられている高野を見てなんとも言えない表情を見せたがすかさず敬礼をして同意をした


「ハッ!」


「確か山口は大食いじゃったな。コラトス兵士のおごりじゃけんな、食いたいだけ食え」


支払いをするであろうと思われるコラトス兵にとって死刑宣告に等しいものであったが秋山はそこまで考えていなかった




港町 カパルシス 料理屋



「美味いのぉ!」


「確かに美味しいですね」


彼らは出された料理に舌鼓をうち陽気になっていた。それゆえに油断しきっていた


「しかし、ニホンと英国のあの軍艦はすごいですね。あれが最新鋭のものなんて」


コラトスの兵士は日英の軍人に話しかける。だが秋山の次の言葉が彼のプライド、文明国人としての誇りを打ち砕くことなった



「何言っとるぞな。あれは旧式ぞなもし」


「はっ⁉︎」


彼は、あれですら旧式なのかと驚愕した。その様子を見た腹黒紳士たるイギリス兵はさらに追い討ちをかけるように語り始める。


「しかも日本側のは、アレでしたな。一世代前の」


「ロイヤルネイビーのドレッドノートが登場したせいで世界最新鋭から転落したぞな。自慢げに話すのはよしてつかあさい」


「ええっ!」


コラトス兵の彼は情報の整理がつかなくなってしまった。だが、彼は優秀な兵士であるがゆえに即座に上官に報告した。この情報はすぐさまにコラトス大公に伝えられることとなった




コラトス兵の彼は報告後、再び料理屋に戻って来てさまざな話を聞いたのであった


秋山らは空腹を満たし各々の艦に帰っていた。そして、コラトス兵の1人が最後まで残っていた



「ちょいと、兄ちゃん」


「なんですか?」


「お会計だよ」


あっそうかと言う表情を浮かべ注文書に目を通す


「わかりま...エッ!」



目を疑うような金額であった。主に、山口多聞のせいであった

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