閑話 神の盾と神の焔
大英帝国 海軍省
「困りましたな。日本が強くなりすぎては」
そう話すのは海軍大臣のハーヴェスト侯爵であった。数人の男は頷き己の意見を言い始める
「確かにこのまま我々の海軍力の劣勢が続けばいささか日本人の増長が見られる。話は変わるが我が栄えある大英帝国海軍の戦艦が旧式戦艦十数隻とドレッドノート、オライオンしか存在しないとは」
「全く腹立たしい。その旧式戦艦すらほとんど日本からの払い下げ品だぞ。その上、それすら我が国が作ったものばかりだ」
日本の国産戦艦の数隻除けば大英帝国含む欧米列強で作られたものである
「だが、嬉しい誤算があるぞ」
「誤算?それは一体?」
海軍大臣の彼はニヤリと笑みを浮かべながら伝え始める
「日本人はお人好しさには感謝だな。旧式戦艦を改装していたようでレシプロ機関から高出力蒸気タービンになっていた」
参加していた人のほとんどが驚きの表情を浮かべる。見下した発言も飛び出す
「奴らにそんな改装が可能なのか?」
「たかだか我らが関わり育てて始めてから50年も経つか経たないかぐらいだぞ!」
「黄色い猿の分際で我らを超えるだと?悪いジョークだ、貧民街で流行っているジョークにも劣るぞ」
「まぁ、文句を言うのは構わないが話の続きをするぞ」
そう言うと胸元から写真を数枚取り出し投げ出され注目する。彼らは怪訝な表情を見せる
「なんだこの奇妙な装甲巡洋艦は?」
「それに筒状の物体とこのダーツ状のような物体は一体?」
「こっちの装甲巡洋艦は平面が多いし前部と後部に一門の主砲。副砲は見当たらないな。それにガトリングガンのようなものも見える」
「諜報員が日本の防諜を掻い潜ってかなりの犠牲を払って手に入れてくれた物だ」
海軍大臣の彼は自慢げに語る。だが1人が眉を顰めこの成果に対して苦言を発する
「そんな三流国家に遅れを取るとは諜報部も落ちたものだ」
宥めるようにそんな彼らに語りかける
「彼ら諜報員には感謝しておきたまえ。さもなくば余計な事をすっぱ抜かれてマスコミに送られ'コレ'だ」
親指で首を切るジェスチャーをして《失脚させられるぞ》と暗に示した。それを見て彼らは諜報員に対する悪口や嫌味を控えた
「レーダーという電波兵器があっただろう?」
「ああ、あのよくわからないものだろ?」
「電波を飛ばして跳ね返ってきた電波を受信して位置を割り出すだったか?」
「確か日本海軍が使って砲戦の命中率を上げていたな」
「奴らはそのレーダーと主砲や副砲と連動するような仕組みを作り上げたらしい」
彼らはハッとする。そして一つの結論にたどり着く
「ということは命中率が100%近くなるのか...?」
「そうだ」
「それでは単装砲だけで事が済むではないか!」
なぜこの時代の軍艦が主砲を連装以上にして何基も設置したか?
発射した砲弾が当たらないからである。当たるか当たらないかはほとんど運任せと計算の速度と砲手の練度に依るものであった
「クソっ!」
「落ち着きたまえよ。まぁ話を続けるがこのダーツ状の物体について説明しよう。それは誘導式噴進弾、ミサイルと呼ばれるものだそうだ」
「誘導式だと...」
「さらにはこれから建造される我らがロイヤルネイビーの戦艦クイーンエリザベスの15インチ砲を大きく上回る射程を持つそうだ」
「なっ!」
説明された彼らは驚きの連続であった。そしてすぐにその脅威に気づき声を上げる。今までの大砲の技術が役に立たなくなる可能性を秘めているためだ。当たりにくいもしくは当たらない砲弾よりも確実に当たることができる可能性の高いミサイルの性能に恐怖した。その上、日本海軍の主砲はゴドワナ戦役で見せた以上の命中率を叩き出せるからだ
「今までの戦術戦略、技術が崩壊するではないか!」
「モタモタしてられんぞ!直ちに外圧を与えそれらの技術を取り上げるように手配しなければ!」
あまりの恐怖により日本との戦争を辞さないことを考え始めた彼らだったが海軍大臣のハーヴェストは落ち着かせるように話し始めた
「だが日本はその軍艦を我が国で建造したいとと言って来た」
ピシリと空気が固まり各々が叫びそうになるが抑え話し始める。もはや混乱しすぎて冷静になってしまった
「我々に喧嘩売っているとしか思えないな。我が国でそのような軍事機密の塊を建造しようとは」
「情報を抜き放題だぞ」
「勝手に言うのは構わんが日本政府の方針は彼等のついでに我が国にも強くなって欲しいらしい」
「なぜだ!」
「日本人は舐めているのか?」
「どういう事かはこれを見たたまえ」
そこには、この世界のこととどういう経緯でこのような事になったのか日本政府がぼやかして書かれた書類をだった。それを読み彼らは青ざめ項垂れる。
「もはや、小説の世界だな」
「しかし現実なのだ。受け入れるしかないぞ」
「このことは国王陛下とその他のお偉方は知っているのか?」
「無論だ」
「なぜ我々のところにこのような情報が回ってこなかったのだ?」
「情報の精査などに時間がかかったからだ」
その後も論争を繰り広げていたがふと男の1人が思い出したように話し出す
「そう言えばこのシステムにも名前があるのだろう?」
「そのような高度なシステムことはなんと呼んでいるのだ?」
「コードネームとかあるだろう?」
ハーヴェストは腕を組み思い出す。彼は数分考え込み思い出した
「たしか彼らはこの艦のシステムをAigis、つまり神の盾と名付けているらしいぞ」
大日本帝国 北海道 試験場
「ムムム!これは!」
「教授 どうしましたか?」
「魔石と呼ばれる物質について調べていたのだがとんでもない発見をした!」
「教授が驚くほどなものですか?」
「ああ、そうだ!こうしてはおられん!元老に知らせなければ!」
「電話を持ってこい!」
「わ、わかりました」
この魔石の特性の発見は今後建造される軍艦に用いられることになるがまだ先の話だ




