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文明国へ

オセニオ大陸 パントール共和国 首都マキナ



日英の交渉が成立してから数週間後



ゴドワナとの戦役が終わり日英パントールによる戦勝パレードが行われる。日英の国民はその様子をラジオから聞き取っていりパントール共和国の国民は国軍と日英両軍を祝っている




ーーーーーーーーーー




戦勝パレードが終わり日英とパントールの外交官が会談を行っていた




「「文明国への仲介?」」


在パ大使の日英両国人は声を揃えてパントールの外務卿に尋ねる



「ええ、そうです。我が国は文明外地域蛮族国家と言われておりますが唯一文明国とのチャンネルを保有しています」


「なぜ、文明国との国交をお持ちで?」


「それはこのような経緯がありまして」



パントールの外務卿は説明を始めた



パントール共和国は文明外地域の蛮族国家と言われている。しかしその国力は文明国の弱小国家レベルであり文明外地域の国家としては異例なほどの国力であった。その国力の高さから文明国との外交を六天の覇者グローンテルア帝国が許可をした経緯がある




「そうだったのですか...」


納得する日本の大使であった



「では、その文明国との国家外交チャンネルを仲介していただけるのですかな?」



「はい、我が国パントールが仲介をしたいと思っています。しかし、我が国の国交船では時間がかかり過ぎるとも思われます」


何かを含ませ日英両大使に話しかけた外務卿であったが即座に両大使は外務卿の真意を理解する。この世界のほとんどの船は帆船であり船速は遅い。それに魔石から精製される風神の息吹は貴重であり戦争や特別な理由を除いて使用ができない。つまり、彼らは日英の蒸気船や近代船舶を求めていたのである



「ええ、理解しております。我が国日本は貴国との友好を鑑みて、ちと旧式ですが蒸気船を寄贈いたしましょう」


英国大使は日本に便乗しつつある程度、日本よりも好条件を示した


「わが国大英帝国も蒸気船を寄贈いたしましょう。旧式軍艦ですが防護巡洋艦をお渡ししましょう」



日英の軍艦や艦船の提供は、はたから見れば馬鹿馬鹿しい考えである、情報の流失をさせていると思うだろう。しかし両国とも少なからずある程度の思惑があった



それは旧式艦艇の処分を兼ねて渡した艦艇の整備費と訓練費を頂こうと考えていた。軍隊とは単に、兵器を作り揃えることだけではない。それらを扱う人員の育成とそれの扶養も含まれている。軍隊で最も金食い虫は兵員の人件費と大型兵器の整備費であった。日英は、旧式艦艇の処理をしつつ最新鋭艦の配備を推し進めることができ一石二鳥であった


さらにパントールにはそのような大型ドックなぞ存在していない。つまり、建造はおろか整備すらできない。しばらくの間は日英に頼り切らなくてはならないということだ。


かなり悪辣な方法だったが理に適っておりパントール共和国の海軍力の増強に直結しているため外務卿とて文句は言えなかった。



「おおっ!それはありがたいです」


外務卿はうすうす日英のやり方に気づいていたがそんな贅沢は言っておられず文明国、一部の列強すら超えている軍艦が手に入るので良しとした。外務卿は素直に喜び感謝の意を示した。



「では、日程について話し合いましょう」










その後、日程について話し合われおおよその事が決定された。だが重大な案件が発生することとなった。それは交渉に誰が行くかというものである






大日本帝国 帝都東京 皇居 とある会議室


現在、明治天皇を除いて英傑たちは会議を開き異世界の文明国に誰を派遣するかを話し合っていた


「困りましたな。誰を異世界の国家に派遣するか」


髭をいじりながら山縣有朋はその場にいる英傑たちに問いかけている。その問いに英傑たちは唸る。皇族を連れて行って仕舞えば下手をすれば人質に取られ大変な事になる。だが中途半端な身分や血統の者では馬鹿にされる。だが、日本が華族を派遣するとしてもそれに対して大英帝国が王族を派遣して仕舞えば日本はその国との交渉で不利となってしまう



「わしが行くしかないぞ」


「それはならんぞ、狂介」


「何をいうんだ。本来ならハルビンで死んどった奴が止めに入るな」


「オレはお前が居なくなった後の影響を考えて言っとるだ。そして、重要な情報を見た人間を失うのは論外だ」




しばらくの間、誰が行くか行くべき人間について話し合われていた。だが、意外な人物が来たことによりこの派遣する人間が決まったのである




英傑たちがうんうんと唸っていたとき、ふと会議室の扉が開かれた。そこには二人の人物がいた


それは明治天皇とのちの大正天皇である皇太子殿下である


「待たせたかな?諸君」



「陛下ッ!そして、皇太子殿下ではありませんか!」


困惑する英傑たちであった。困惑する彼らのうち1人の英傑である西園寺公望がある可能性に気がついた


「陛下!まさかとは思いますが皇太子殿下を連れていけと仰るつもりですか?」


「うむ、そうである」



「無茶を言わないでいただけますか、陛下!皇太子殿下の御身体はご病弱なのですから!」


そう史実では大正天皇は病弱であり療養されていた時期が長かった。大正期はとても短く晩年の公務はのちの昭和天皇が摂政として行っていた


「大丈夫であります。伊藤侯爵」


「なっ!何をおっしゃるのですか⁉︎皇太子殿下」


「そうですぞ!殿下はご病弱でありかつ仮に行けたとしてもとんでもなく危険極まり無いのですぞ!」


英傑ら指摘は正しい。異世界でありかつ異世界特有の謎の現象が起き体調を崩すとも限らない


だが、皇太子殿下は柔和な表情で語り始めた


「私もあの女神に会ったのです。そうしたらこう言われたのです。『お主はもうとっくに病気は治っておる。それにワシが病弱体質を改善しておるのじゃ。そして、お主は異世界の国家に行き色々見て来い』と」


女神によってのちの大正天皇の体質が改善され健康体となっていたのである


「なんと!」


「あの女神がそのような事をするとは!」


英傑たちは驚きの声を上げる


「朕も驚いたのだ。あの女神がそのような事をするのは」


「ですから、私が使節団の代表者になりたいのです」


英傑たちは再び悩む。行かせるべきか行かせぬべきか


彼等は悩んだ末に皇太子殿下をお連れすることを決定したのであった








大英帝国 帝都ロンドン 枢密院





「これ以上、日本に先手を打たれては我が国の沽券に関わる」


「ああ、そうだ。遅れを取ってばかりだ」


大英帝国の政治を動かす魑魅魍魎達が苦虫を潰した顔をして唸っていた。なぜなら、異世界に転移して日本に対し遅れをとっているからだ。彼らの1人が巻き返しを図るためあることを閃いた



「今度、異世界の国家と国家間の交渉があるがチャンスだと思うぞ」


「なぜチャンスなのか?」


1人は疑問に思う。なぜよその国との交渉でチャンスなのか


「あの国日本が皇族を訳も分からない異世界の国土に連れて行くかと思うか?」


「...ないな。諜報部によると日本の皇太子は病弱らしいからな。私が日本の天皇(エンペラー)なら皇太子に負担を掛けたくないから行かせないな」


「行くとしても貴族レベルがせいぜいか」


「なるほどな。我が国大英帝国なら王族による表敬訪問が可能だな」




つまりどういうことかというと、使節団の人間はその国の顔である。派遣する人間によってその国への敬意や友好を結びたいかを伺い知れるからだ


彼らはこう考えた。大英帝国が派遣するのは王族でありそれに対して日本は貴族レベルの華族と呼ばれる存在であろう。これは比較にならないほどの家格の差がある




「これならば異世界の国家との交渉において日本に対し優位に立てるぞ」


「ああ、最高の案だな」


「嬉しい情報を一つ伝えよう。パントールの人間に聞いたのだがこの世界の人種は我々と似たようなものであるそうだ。ヨーロッパ系、アングロサクソン系、ラテン系スラブ系といった白人的な特徴を持つ人間が多いと聞いた」


この場にいる魑魅魍魎たちはいやらしい笑みを浮かべる。彼らが現在日本人に対して完全に優位に立てる数少ないものであったからだ。つまり諜報活動が行いやすいというものだ。人種が似たようなものならば浮くことがまずありえない。しかし黄色人種の日本人ならどうだろうか。白人種の中に黄色人種を放り込むと草原の中の岩のようなものだ。これは日本人には完全に出来ない芸当だ



彼らの1人が鼻を鳴らし自信満々に話す


「フン。やはり、我々白人種たるアングロ・サクソンは神によって選ばれた人間であるな」


「彼ら日本人はこの世界に浸透しようにも人種が圧倒的に違いすぎて不可能だな」


「ああ、そうだ。重要なところに潜り込もうとも肌の色が邪魔をしている。つまり重要な情報、王宮や官庁に踏み込んだ情報は我々大英帝国から仕入れるしかない」


「日本が軍事的プレゼンス大英帝国(われわれ)が情報を集めその行い(軍事的優位性)にたいして彼らに(日本)報酬を渡すと」


「そして、日本より突っ込んだ技術を仕入れて再びパックスブリタニカ(大英帝国による平和)を再び実現し日本のパックスジャポニカを防ぐと」



「君らの案は最上だな。よし方針は決まったことだし私は王室へ掛け合ってこよう」


この場で議長役を務めた1人が部屋を出ていきそれに続いて10人ほどが部屋を後にした








数日後に大英帝国が王族の派遣を決定したことが発表された。彼は英国王太子エドワードのちのエドワード8世である。彼はロイドジョージ首相から『最も素晴らしい大使』と言われた人物である




数週間後、日英の使節団を乗せた御召し艦は一度パントールに集合しその後、コラトス公国に向けて出航したのだった


その時に大英帝国側が日本の皇太子殿下を派遣した事を知り愕然となったのは言うまでもない

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