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明治日本と大英帝国の共闘 〜異世界に何を思うか〜  作者: しまー
一章 異世界にて
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サースン大海戦と神の雷

サースン沖


現在、50隻のガレオン船 300隻のガレー船 3000艘のバリスタ搭載軍船が日英両国の海域に風神の息吹を使い航行していた一回の作戦に参加している艦艇の数だけで言うと史上最大規模のものである



ガレオン船 旗艦 ルイス号



ゴトワナ水軍の将軍であるガランは喜びに打ち震えていた。このような戦力を率い憎きパントールと愚かな蛮族のニホンと英国という連中を嬲ることが出来ると確信していたからだ



「ガラン将軍閣下、敵は鉄甲艦を保有しているとのことですが」


部下は心配そうにガランに聞く


「む?そのことか。それに関しては心配ないぞ」


「なぜですか?」


「なぜならば、敵の蛮族はグリフォンやワイバーンという航空戦力を一切持ってないからだ。航空戦力無しに我が国に挑んでくる馬鹿者というわけだ」


この世界では、海戦で航空戦力を使うのは当たり前であった。ゴドワナ上層部は日英は取るに足らない弱小国家と見ていた


「それならば勝ったも同然ですね」


「当たり前だ! そうだ!この海戦が勝った暁にはお前にはとびきりの美女をあてがってやる」


ガランの言葉に部下は喜びを浮かべる



その会話を打ち切るように観測員が叫ぶ


「敵艦隊見ユ!」




「本当か!全艦隊に戦闘用意をさせるよう伝えろ!そしてグリフォン隊は直ちに飛ばせ‼︎」


「ハッ」



魔導通信によってゴドワナ水軍艦隊全軍に伝えられる


そしてゴドワナグリフォン隊はガレー船から優雅に力強く飛び立つ。グリフォン自体の戦闘力はドイツ帝国のフォッカーE.Ⅲと同等である。とは言っても戦闘力はグリフォンを操作する《天空騎士》と呼ばれる戦闘員の腕に左右される



ゴドワナグリフォン隊はその数500である。小国なら確実に陥落できるほどの戦力だ



グリフォン隊は蛮族のニホンと英国の艦隊に向かって飛び始めた。隊員全員は楽な戦いであると確信していた



「なんとも壮観であるな」


ガランはそう呟いた


ゴドワナを支援した列強上位の観戦武官はこれだけの戦力が海戦を行うのは面白そうだと思いこの戦いをルイス号に乗り込み観戦していた







イギリス海軍(ロイヤルネイビー)旗艦 ヴィクトリー号


双眼鏡で敵艦隊の様子を見ていたイギリス提督は内心驚いた


「あれがグリフォンか。おとぎ話か物語でしか出てこない存在があるとはな」


「提督、対空戦闘の用意を」


「わかっておる。では機関銃を掃射せよ」


「ハッ!」



部下の士官は甲板上の機関銃手にグリフォン編隊を狙うよう命令をし銃手は発砲し始める



引き金が引かれた機関銃は火を噴き飛んでくるグリフォンを叩き落とす。叩き落とされたグリフォンを見て甲板にいる搭乗員はゴドワナとかいう蛮族国家を憐れに思った






ゴドワナ旗艦ルイス号の甲板上にいたガランをはじめ士官や兵が驚愕した。なぜグリフォンが落とされているのか疑念に満ちる



「なぜ落とされる?」


「矢を使っている様子はないぞ!」


「あれはなんなんだ!」





甲板上の兵士は叫喚している。それもそのはずゴドワナが分析した結果、日英戦力はワイバーンやグリフォンも持たずせいぜい小さな国だと推測していたからである。しかしその実態は地球上を牛耳る偉大なる大英帝国と日出ずる国であり史実よりも強化された大日本帝国である



ゴドワナ水軍はさらに悪夢が続く。ブロロロロという謎の音が響いてきたからである。空を見上げるとワイバーンでもグリフォンでもない鉄で出来た龍が飛んできたからである。その鉄龍は人が乗り銃をグリフォンに撃ち込んでいた。グリフォンがその鉄龍を追いかけているが追いつかないほどのスピードである


その鉄龍とは九〇式艦上戦闘機である。最高速度292km/hであり7.7mm機銃2丁を搭載している。グリフォンを圧倒的に凌ぐ速度と文明の利器たる機関銃によってグリフォンを叩き落として行く


鉄龍(九〇式艦戦)が何かパッと長い旗を靡かせてきた。その旗には何が書かれていた。よく見ると『我二追イ付クグリフォンナシ』と書かれていた



彼らは屈辱にまみれる。ワイバーンやグリフォンを持たないどころかそれが不要なほどの文明を見せつけられたのだから


「我々は間違っていたのか」


と誰かが呟いた






グリフォンが全騎落とされたころイギリス海軍(ロイヤルネイビー)でも驚かれていた



「我が国が日本なんぞに遅れるなんて」


「一体いつ日本は飛行機械を作ったのだ?」


「しかも、速いぞ!いいや、速すぎる!」


様々な推測が飛ぶ中、イギリス艦隊は艦載砲の射程にゴドワナ水軍を捉える



提督は茫然自失になっている兵士に発破をかける


「お前ら!ぼーっとしてないで狙え!」


「はっ、ハッ!」


観測員によって敵艦隊との距離が伝えられる


「距離三千!」


「全砲門!よく狙って撃て!」


砲術長が船内の砲撃手に伝えられる。各砲門の狙いが定まりイギリス艦隊は砲撃を開始した




戦列艦ヴィクトリー号はトラファルガー海戦以来、約100年ぶりに戦いで砲火を噴く。それに続き後ろの戦列艦も続けて砲火を撃ち出す。もちろん100年前の砲よりも何倍も強力であり装填速度も速い。その圧倒的火力はゴドワナ水軍にとって神の裁きの雷に等しいものであった。104門級戦列艦ヴィクトリー号 他の80門級戦列艦による砲撃は熾烈なものであり撃ち出される度にゴドワナ水軍の艦隊は沈んでいく





ゴドワナ旗艦ルイス号



「ガレー船 バティス沈没!ガレオン船 ユーリス爆沈!」


報告手によって惨状が伝えられる。絶望の淵に叩き込まれたゴドワナ水軍は逃げようとしても密集陣形をとっていたため容易に逃げられない状況だ。しかし千隻ほど沈めた頃にイギリス艦隊は撤退を開始した



「引いたのか?」


「弾切れ...なのか?」


ルイス号の乗員たちに安堵の空気が流れる。だが、その安堵は即刻絶望に変わる。次は日本の連合艦隊がゴドワナ艦隊に向かって来たのである




「なっ!何だあれは‼︎」


「アレみたいな軍艦みたことあるぞ!」


一人の兵士が叫ぶ。その叫びを聞いたガランはその兵士に問う


「なんだと?じゃああれは一体なんなんだ⁉︎どこで見たのだ?」


「提督!文明国コラトスに行った時に港で見かけました!」


「コラトスといえば列強国一位と国交があったな...」


ここでガランははたと気付く


「まさか...二ホンと英国はあの国を味方に付けたというのか?」


ガランの推測は大間違いであったがそう考えつくのも無理もない。現在、ゴドワナのバックにつく列強国ヴァルガナ帝国は列強国一位に対しライバル心を燃やして軍拡を推し進めている。列強国一位は列強国ヴァルガナに対し不要な軍拡は余計な火種を作るだけだと諭しているが効果はない


「あの国が簡単に文明外地域国家に手を貸すはずがない!」


観戦武官の彼は自分の想像できる範囲で想定を考える。列強国一位が出張ってくるのはヴァルガナ帝国にとって恐ろしいことである。列強国一位と軍事衝突が起きれば確実に敗北する。敗北によってもたらされる不利益は列強国の地位からの転落である。だからこそ、ヴァルガナ帝国はそれを防ぐために軍拡を進めていたのであった


もっとも列強国一位はどの国よりも洗練され優秀な軍艦を作り列強『六天』の最上位に君臨している。仮に、列強国ヴァルガナが挑んだところで勝てるはずはないのだが国力に物を言わせて物量でなんとかしようという落胆だ





連合艦隊旗艦 準弩級戦艦薩摩 昼戦艦橋


東郷元帥と参謀の秋山真之准将が話し合っていた


「閣下、陣形はやはり・・・」


「うむ  丁字戦法を狙う」


「しかし、閣下・・・」


「どうした?」


「なぜ必中距離の二千まで近づかずに距離八千からの射撃なのですか?」


秋山の疑念はもっともである。火砲すら搭載していないフネに対し近づくのは容易いことである。東郷はそれにもかかわらず遠距離からの砲撃戦を選択したのである


「近代軍艦やバルチック艦隊ならまだしも此度の海戦は鈍足超旧式木造船が敵であり火砲も搭載していない。つまり、演習のようなものである」


「は、はぁ」


「だが油断はしていないぞ。最新式の機械式演算機と射撃管制機械、レーダーを搭載している。機械類のちょうど良い実地試験になろう」


「そうでしたね」


会話を断ち切るように報告が伝えられる


「距離九千ッ!」


「閣下、どちら側で戦いますか?」



東郷は選択を迫られる。日本海海戦のように右舷側から砲撃をすべきか逆側の左舷を向けるか・・・



東郷はしばらく考えた。そして東郷は左腕を挙げゆっくりと右側に下ろした。つまり東郷は日本海海戦とは逆の方向 左舷側からの砲撃を命じたと同義であった


秋山はそれを察し艦長に面舵を取るように命じた


「艦長、面舵一杯」


「面舵ですか?」


「左様、面舵一杯」




「面舵いっぱい!」


艦長は伝声管に近づき進路方向を伝える。連合艦隊は面舵を取り左舷側をゴドワナ水軍に向けた







ゴドワナ水軍 旗艦ルイス号



ゴドワナ提督ガランは帝国海軍連合艦隊の見事な操艦と陣形の取り方に舌を巻く。それと同時に血の気が引いてきた


「アレは先ほどの戦列艦よりも強大な砲を載せている」


「なんですと⁉︎」


ガランの部下は絶望に打ちひしがれる



「ありえない!文明外地域に派遣するはずがない」



ヴァルガナの観戦武官は声を張り上げたが現実は現実である。だが、その艦隊の軍艦は大日本帝国が作り上げたものである











そして帝国海軍の射撃が始まった



ドゴォーンという雷鳴かと思うほどの音が響き先頭を航行していたガレオン船ユーパはこの世から消し飛んでしまった。それに続くようにニホン軍からの砲撃が始まりどんどんとゴドワナ艦隊に命中し沈んでいく




戦艦薩摩型二隻を含め香取型、敷島型、富士型から撃ち出す三〇.五cm砲三十二門 副砲五十門以上による砲撃はイギリス海軍の先ほどの戦列艦の砲撃よりも苛烈なものだった


さらに下瀬火薬と改良された伊集院信管によってもたらされる威力は想像を超えるものであり、可燃物でできたガレオン船や木造船は忽ち燃え上がりどんどんゴドワナ水軍船は沈んで行く


機械式演算機や射撃管制装置、レーダーによって高い命中率を叩き出した。さらに帝国海軍の練度の高さも相まって命中率50%という海戦史上最も高い命中率である。それを見ていたイギリス海軍から派遣された観戦武官とパントール共和国の観戦武官は青ざめ口を揃えてバケモノと例えた



ゴドワナ水軍 旗艦ルイス号


ガランやその部下、幕僚たちは勝てないと判断し艦隊の保全に努めることを考え始めた


「ぐぅ、何としてもゴドアリアに逃げ込め!」


「風神の息吹はどれぐらい残っている!」


「あの悪魔から逃げるぞ!」


彼らは各員に指示を出す。しかし、この間にも砲撃が降り注ぎどんどん沈んで行く。ゴドワナの港であるゴトアリアに逃げ込もうと大急ぎで反転を始めた。だが、その判断は遅かったのである


海戦が終わる頃にはゴドワナ水軍の軍船は旗艦ルイス号を含め34隻まで削られてしまいゴドワナ側は制海権を完全に奪われてしまった。なぜ、34隻の軍船を日英両艦隊が逃してしまったのかというと撃沈した軍船の瓦礫が広範囲にわたって漂流しており航行しにくくなったこと敵艦隊の生存者の救出活動を行なっていたためである




この海戦の模様はヴァルガナの観戦武官が本国に報告し日本と大英帝国の事を知ることとなる。彼の報告直前はあまり取り合ってなかったのだが外交部の判断により日英について調べることとなる。これが後に重大な事件へと発展するとはこの時だれもが想像していなかった





そしてこの海戦後、ゴドワナへの上陸作戦が決行され見事成功を収めたのである



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