大英帝国のプライドと一本の海底ケーブル
少しぶっ飛んだ展開かもしれません
お許しください
異世界 英国軍基地
ゴドワナの使節団が大英帝国の異世界橋頭堡基地にたどり着いた。いよいよ英ゴ交渉が始まろうとしている
ゴドワナの交渉団のマーレン子爵は蛮族連中が軍のワイバーンとグリフォンを落としたことに対し賠償させる算段を考えていた
対する大英帝国はこの国に影響力を与え美味しい所はいただきこの世界での橋頭堡基地の破壊に対する賠償をさせようと考えていたのである
双方がテーブルに付き交渉が始まった。お互いがピリピリとした空気を醸し出している
「初めまして、あなた方が我が国の基地を壊してくれましたね」
にこやかに話し出した内容はジャブどころかストレートを叩き込む大英帝国の交渉員
「こちらこそ初めまして、あなた方が我が国の兵士を傷つけてくれましたね」
ゴドワナも大英帝国に負けておらずこれまたどぎついのを叩き込む
しばらく双方の交渉員は悪い笑みを浮かべ黙り込む
先に痺れを切らしたのはゴドワナの方であった。ゴドワナ兵士の一人が大英帝国交渉団に対し怒鳴ったのである
「蛮族風情が我が国ゴドワナに偉そうな口を聞くな!」
これにより大英帝国側はこの交渉の勝ちを確信した
「おやおや、我が国大英帝国を蛮族と呼ぶとはいささか傲慢ですな」
英国側の交渉員はニヤリと笑いながらその兵士に言った。それに対し兵士は負けじと言い放つ
「帝国だぁ?この地、文明外圏において帝国なんぞ名乗るとはなぁ。馬鹿すぎて笑いすら起きんぞ!」
「ほう、そうですか...やはり未開の土人を相手するのは肩が凝りますな」
肩をほぐすジェスチャーをしながら言う
「貴様ッ!」
「やめなさい!」
ゴドワナ兵士は剣を抜こうとしたがマーレン子爵が抑える
「子爵!」
「貴方の言いたいことはわかります。ですが交渉の途中ですよ」
そう言われ兵士は収める。子爵は英国交渉団に姿勢を直し交渉を再開する
「部下が失礼しました」
「ええ、仕方のないことです」
「では、始めましょう」
「ええ、まずは整理しましょう。色々と話しましょう」
・大英帝国は異世界より転移した国家である
・大英帝国はゴドワナより北北東550km先に存在する
大英帝国からもたらされた情報を聞いたゴドワナの交渉員はなんとも言えない表情で英国側の交渉員を見ている。【ありえない そんな馬鹿なことがあるか?】といった表情だ
「いささか信じられませんな」
「まあ、我々大英帝国もなぜこのような現象が起きたかは調査中でありまして」
「ハハハ、まぁそういうことにしておきましょう」
「では、我々大英帝国の要求を言いましょう」
「書記官、記したまえ」
マーレン子爵は部下の書記官を呼び出し大英帝国側からの要求を質の悪い紙に書かせる
・大英帝国は軍事基地の一部を破壊したゴドワナに対し賠償を要求する
・最恵国待遇を求める
・賠償が履行されない場合は武力を行使する用意がある
「これらが我が大英帝国のあなた方への要求です」
「ふむ、英国の要求はわかりました」
「我々としては良き回答を望みます」
大英帝国の交渉団はこれらの要求は相手にとって絶対に受け入れられないと最初から考えていた。わざととんでもない要求をして煽り相手方が暴発するのを誘発させこれを武力で制圧し植民地化する。大英帝国の常套手段マッチポンプである
大英帝国の交渉員は内心ニヤニヤしていた。ゴドワナ兵の暴発が起き交渉員の一人でも怪我さえすれば英国世論は沸騰し本国軍の懲罰派遣を行うことができるからだ
マーレン子爵は考える所作を取りしばらくして答えを言い始める
「あなた方、大英帝国の要求を履行するのは不可能です」
「ほほう、では残念なことに武力を行使することとなりますがよろしいので?」
大英帝国の交渉員にとっては分かりきったことである。だが、これはチャンスであり有効に活用できるのである。転移によって各産業の活動の縮小を余儀なくされていたが軍を動かすので軍需産業が再び動き出しそれに関係した産業も動き連鎖的に全体の産業の活性化が見込まれるからだ
マーレン子爵は怒気を含ませながら話し始めた
「あなた方は何も理解していない。我々が文明外地域内で最強クラスであることを!」
「そうだ!蛮族大英帝国とやらよ泣いて詫びるが良い!グリフォンも数百頭保有し五十万の兵力を持つ我々にそのような態度を取るとはなぁ!」
マーレン子爵の言葉に呼応して兵士たちも罵声を大英帝国の交渉員に浴びせかける
「ほほぅ、では交渉は決裂ということで」
「当たり前だ!蛮族に付き合ってやっただけ感謝しやがれ!ペッ」
ゴトワナ兵士の一人が交渉員の一人に唾を浴びせる。その唾は交渉員代表の靴に付着する。これを見て交渉員は呆れたが凄味を含ませながら最後に言い放った
「蛮族なのはどちらかは少しすればわかりますぞ」
大英帝国の交渉員は天幕を去っていった
英国基地
交渉団が帰ってきて基地内の英国人全員はホッとしていた。士官らしき人間が交渉団を出迎える
「おかえりなさいませ、バーバリー議員。交渉はもちろん?」
「ただいま、アーサー司令官。交渉はバッチリ決裂だ。前から計画していたように今からここから引き揚げを行ってくれ」
「わかりました」
「それと、この辺り一帯を戦列艦で砲撃しといておいてくれないか」
「は、はぁわかりました。ですがなぜ?」
「蛮族の兵士があまりにも無礼すぎた。その御返しだよ」
「なるほど。やはり蛮族らしい態度でしたか」
「あぁ、そうだ。唾を浴びせかけるなんぞ地球の蛮族でもあり得なかったぞ。我々大英帝国の真の実力を知れば媚びてくるであろうな」
「そうでしょうね」
大英帝国はこの異世界基地より撤退を開始した。人員物品の撤退が済んだところで戦列艦の砲撃が始まった。砲撃を受けた一帯はクレーターだらけとなり森林へ火災も起き始めた頃、砲撃をやめ艦隊陣形を組み沖へ去って行った
異世界海上
改装戦列艦 マジェスティック号
通信手が本国へ向けて定期連絡を行なっている途中ありえない存在の通信を得たのである
「んんん?」
「ジョーイ、どうした?」
「いやぁ、ありえない通信を得たからさ...」
モゴモゴと言いにくそうに通信手のジョーイは答える
「ありえない?なんだそれは?」
同僚のチャールズは眉をひそめながらジョーイに問う
問われたジョーイは覚悟を決めたようにつぶやき始めた
「日本の通信を受信した」
通信室で仕事をしていた数人の人間がピシリと石化したように動きを止めてしまった。そして数テンポ遅れて大声で叫んだのである
その声を聞きつけ上官らが駆けつけてきた
「貴様らどうした!」
「うるさいぞ!」
ジョーイらはかなり動揺しながら情感に報告する。報告を受けた上官も驚いたが冷静な判断を下し本国へ報告、日本への通信を試みた。日本側はこの通信を受け
政府上層部も衝撃を受け様々な調整に奔走することなった
数ヶ月の間で連絡を取り合い輸出入の取り決めやパントール共和国との国交開設も行われたのであった
この日本の通信を拾ったことにより大英帝国は滅亡を回避できたのである




