異世界との接触
異世界 文明外地域 大東洋諸島
二等戦艦 扶桑 改装露天艦橋
「本当に海ばっかりだな」
「確かにそうですな」
「まさか再びこの船に乗ることになるとはな」
「全くです」
司令官と古参参謀は昔を懐かしむようにいう
「とはいえ、欺瞞のため古いのをとっておいて引っ張りだすとはなぁ」
日本は数週間前に異世界に転移していた。転移当初は大英帝国と同様に動揺したが明治天皇や英傑たちがすでに知っていたため大英帝国と違い素早い対応を行えた
現在、彼らは明治天皇の勅命により海洋調査を行なっている。ここ数日で無人島を10以上見つけているが大陸らしき物も見つかっていない
「東郷閣下」
部下は東郷平八郎に尋ねるように呼びかける
「ん?なんだ?」
「陛下が異世界に転移したと仰られていられましたが、陛下はもしかして前々からこの異世界とやらを存じ上げていたのではないのですか?」
「お前、勘が鋭いな」
「本当ですか!...ん?ちょっと待ってください。東郷閣下のその言いようはまるで陛下と同じく知っていたクチではありませんか⁈」
東郷平八郎は急に紙巻きタバコを取り出し吸い始め紫煙で器用に丸印を作り
「当たりだ、いい勘してるじゃないか」
「なんですと!」
それを聞き耳立てていた他の士官は驚いて声をあげ質問をした士官は思考停止して石のようになってしまっている
その空気を破るようにジリリリと艦内電話が鳴る。下士官が電話に出て話している
「それは本当かっ! そうかよくやったぞ」
ガチャリと受話器が置かれ下士官は東郷の方を向き
「閣下!」
「ん?どうしたのだ?」
「大陸らしきものが見えてきたそうです!」
「本当かね」
東郷を始め艦橋にいた者は驚きと歓喜の表情を浮かべる
これと同じ時、上空数百メートル
パントール共和国の防空隊が飛んでいる。防空隊はグリフォンにまたがり防空圏の見回りに来ていた。隊長であるグスタフはふと遠海を見ていた。そして、煙を吐き出しながら航行している艦隊を発見した
「あれはなんだ!」
それを聞いて隊員らは隊長の方へ向き隊長の指差す方を見た
一人の隊員はそれを見て声を上げる
「隊長!あれは上位列強の鉄甲艦ではないかと思われます」
最悪のケースが想像され部隊の全員は顔を青ざめ始める
「まさか列強が攻めてきたとでもいうのか⁉︎」
この世界では列強が文明外圏と呼ばれる地域の国家を攻める時に宣戦布告なぞせずに攻めるのが普通である
「もう終わりダァ!」
別の隊員は声を震わせながら叫んだ
「落ち着け!お前らは急いで戻って国防卿に伝えてこい。俺はあの船を臨検してくる!」
隊長であるグスタフは隊員らを落ち着かせるように指示を出す
グリフォン防空隊は隊長は残り他は急いで戻りその事を国防卿に報告した
異世界 オセニオ亜大陸 文明外国家 パントール共和国
パントール共和国 議場
「国防卿!急いで防備を固めましょう」
「無理だ!隣国のゴドワナが頻繁に領空を侵犯している今、別の場所に軍を動かせばきゃつらは攻めてくるに間違いない!」
「しかし、このままでは!」
多種族国家であるパントール共和国は亜人撲滅と近年軍事力増強を図っている隣国のゴドワナに脅威を覚えていた。対策として防空網を作り上げたがせいぜいゴドワナ相手に精一杯である。先の報告であった上位列強と思われる鉄甲艦の艦隊がこちらへ航行してきているとのことだ
ある議員は最悪の想定を語り始める
「まさかゴドワナが列強を呼び込み我が国に二方面作戦を強制させようとしているのではないか」
それを聞いた議員らは青ざめ力なく項垂れる
バァンと議場の扉が開かれ息を切らしながら伝令員が駆け込んできた
「ハァハァ...で、伝令!」
「一体何があった!」
国防卿が伝令員に尋ねる。それと同時に国防卿は国防軍をどう動かせばいいかと最善の作戦を考える
「臨検をしたグスタフ隊長によると例の鉄甲艦の人間が我々に接触したいと言ってきました!」
「なんだと⁉︎」
議場は騒然となる。鉄甲艦を持つほどの国は上位列強でありパントール共和国のような文明外地域の蛮族国家と自ずから接触するはずがないからである
「どこの列強だ?」
「第一にありえない。友好と見せかけて攻めるのではないのか?」
様々な推察が議場に飛び交う
それを収めさせるために伝令員は大声で報告を続ける
「例の鉄甲艦の人間は列強の者たちではありません!議員の皆さま落ち着いて聞いてください‼︎」
議場の喧騒がだんだん静まってくる。そして伝令員が語り議員らに鉄甲艦の国の全容が伝えられる
その内容とは
・その国は大日本帝国である
・その大日本帝国は異世界より転移してきた国家である
・我が国の北方400km離れた場所に存在する
・我が国との国交を結びたい
これらのことが議員らにわかりこの大日本帝国と国交を結ぶか否か議論が開始された
議場
「あの海域はなにも存在しなかったはずだぞ」
「そうだ。転移したとかいう神話かおとぎ話でしかありえない」
「それ以前に我らと同じく文明外地域の蛮族が鉄甲艦なんて持てるはずがない」
彼らは混乱していたが1つの考えが浮かんでいた。大日本帝国はゴドワナより強そうであると。ならば大日本帝国と盟を結びあわよくば戦ってもらおうと
ある議員が国防卿に進言した
「国防卿、やはり大日本帝国と国交は結ぶべきです。鉄甲艦を保有した列強に準ずる国家であると推測します」
「確かに鉄甲艦から保有しているのは上位列強に準じている。だが信頼ならん!他の列強から支援を受け鉄甲艦を保有しているだけかもしれない。保有したから我が国の侵略しようと狙っているのではないか?」
「国防卿、上位列強が旧式であったとしても鉄甲艦を文明外地域の蛮族国家に与えるとは思えません。そんなことをすれば蛮族国家地域の版図が様変わりしてしまい列強にとっても不利益を生じさせるはずです」
「だが、転移したとかデタラメを抜かす連中だぞ!」
「それでもすがれるものにはすがるしかない状況なのですぞ!それは国防卿が1番理解されておられるはずです」
「うーむ...」
国防卿は考え込む。彼の国は鉄甲艦を保有するほどの国家である。ならばこそ、彼の国と国交を持ち共同で隣国ゴドワナを撃破すべしと国防卿はそう結論づけた
「諸君、我が国は大日本帝国と国交を結ぶことにする」
「国防卿!」
議員らには喜色が浮かぶ
「直ちにその大日本帝国の使節に会う場所を用意しろ!」
国防卿の言葉により直ちに会談の場所がセッティングされた。それを大日本帝国側に伝えられ東郷らは異世界の国に訪問する事となる
二等戦艦 扶桑よりタラップが降ろされ東郷含め十数名の兵が小型艇に乗り込む
小型艇にて一人の下士官が呟く
「大丈夫かなぁ」
「なにを心配している?」
「いや、どうやらこの世界はかなり遅れていると聞かされたので」
「もしかして国際法なんてもの無いから縊り殺されるとでも思ったのか?」
「それもありますけど...」
「そんな奴らなら臨検と称して俺等を殺しちょる」
「閣下、それはどういう?」
「グリフォンとかいう飛べる生き物に乗っているなら飛び回りながら我が方を攻撃するはずだ」
「確かにそうですが...」
「あの青年はグスタフとか言ったか、彼はなかなか良い目をしてあったぞ」
「閣下が言うなら間違いないでしょう」
そのような会話が交わされていくうちにパントール共和国の湾港にたどり着く。そして東郷らはパントール共和国の人らを見て驚いた。普通の人間もいたが獣の頭を持つヒト型生物が二足歩行で歩いていたのである。東郷らは改めて異世界に来たのだと認識した
その後パントール共和国の首都に着き代表者と様々なことが話し合われた。日本にとって輸入が不可欠な食品類があるかどうかやパントール共和国の南部には黒い燃える石や燃える水が出ることがわかり即座に日パ和親条約と日パ修好通商条約も結ばれ国交が結ばれることになった
日本がパントール共和国と交渉していたと同じ頃、イギリスはゴドワナとの交渉に臨んでいた




