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明治日本と大英帝国の共闘 〜異世界に何を思うか〜  作者: しまー
一章 異世界にて
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大日本帝国の予言

時は戻して1893年


日清関係が悪化の一途を辿ってた時、ある一部の人物は夢を見ていた



大日本帝国 帝都 宮城(きゅうじょう)



明治天皇は夢を見ていた


その夢の内容とは清国との戦争に打ち勝ちロシアにも勝利を挙げ日本は列強にのし上がることが出来たこと。そして己が蜜尿病(この時代の糖尿病の名前)で死んだ後の様々な出来事が不気味なほどはっきり見えた



日本人に余計な夢を抱かせ扇動する新聞記事、それに乗っかる一部の軍人


ザアッと場面は切り替わり海上の船...否、それは城といってもおかしくないほどの巨艦が浮いている。清国の定遠級戦艦や大英帝国の最新鋭戦艦が小さく思えるほどの巨艦である。その巨艦は星の印を付けた飛行物体から機関銃や爆弾、魚雷が大量に撃ち込まれている。その艦に乗っている日本人らしき人らは血を流しもがき苦しんでいる。反撃を行なっているようだが敵の飛行物体の圧倒的な数により反撃は無意味となっている


しばらくしてその巨艦は傾き、ついには大爆発を起こして沈んでいったのである




再び場面が変わった


恐ろしい音を立てながら飛んでいる星の印をつけた大型飛行物体は何かを落下させた。するとこの世界を破滅へ導くことが出来そうな途轍もない爆発が起きた


その爆発の後に残ったのは死と地獄だった。その爆弾はまるで地獄の釜をこの世にひっくり返したようなものだ。その場にいた者たちは生き地獄を味わいながら死に絶えていった



さらに場面が変わり粗末な住処に身を寄せて暮らしている臣民がいた。臣民の子らは軍服を着た西洋人に物乞いを行なっていた。西洋人は帝国臣民の子らをバカにしつつ食べ物を渡していた


追い討ちをかけるように絶望的な状況が明治天皇の目に映った


それは西洋人らが、宮城(きゅうじょう)の前で示威パレードを行っていたことだ



ここで明治天皇は目を覚ます。明治天皇はふと頰に手をやると涙を流していた



その次の日もまた次の日も夢を見たがあの時見た夢ではなかった。荒廃した日本が復興発展し日本が世界に冠たる地位に辿り着き米国の摩天楼を超える高さの建物が東京府に作られていくものだった



明治天皇は理解した。これらの夢は未来で起きることだと。明治天皇はこれらの夢を見た日より食事内容や飲酒の習慣を見直すと決心し糖尿病を回避する努力をした



これらの夢を見たのは明治天皇だけではなかった。のちに歴史に名を残す英傑達も見ていたのである。だがそれらはの夢は誰も語らなかった。英傑らは単なる悪い夢であると記憶の片隅に追いやっていた


しかし状況は変わった。なぜならば日清戦争であの夢で見た通りの展開になったからである。日清戦争後に明治天皇はその夢を見た者がいるかもしれないと考え見た者にのみわかるある暗号を発した。それに気付いた英傑は明治天皇のもとに集った






1895年 帝都 皇居 某部屋



明治天皇を筆頭に名だたる英傑たちが集まっていた


明治天皇は集まってきた者たちを見まわし労いの言葉をかけた


「皆、日清戦役は大儀であった。そしてそなたらが集まってくれたことに感謝する」


英傑らはその言葉に感動していた


英傑の一人が口を開いた


「陛下、先の戦役は...」


「うむ、諸君らの言いたいことはわかる。まずこれから話すことは例の夢で起きた内容を防ぐ手立てを考えたい」


各人は自らの持つ叡智の粋を絞り出し対策を講じ始めこの極秘会議により明治天皇が音頭を取り英傑たちは改革を行う下地づくりに奔走した








この極秘会議は何度も行われていたがある時に事は起きたのである



例の会議をしていた時、テーブルの上が謎のもやに包まれた。これは危険であると判断した英傑たちはすぐさま明治天皇を退出させようとした。だか、なぜか扉が開かなくなっておりさらに窓も開かなくなっていた



次第にもやは晴れていきそこには美しい女性が佇んでいた。すぐさま英傑たちは女性を取り押さえようとしたが動けなかった、いやなんらかの力のせいで動きたくとも動けなくされていた


美しい女性はその様子を見てコロコロと笑いながら喋り始めた


「やれやれ、女子(おなご)を襲おうとするとはなかなかのスキモノじゃな」


その言葉を聞いた英傑の一人桂太郎はその女性を睨み付ける


それを見た女性はおどけながら


「おーおー、怖いのぉ」


「貴様ッ!」


その女性が桂太郎をおちょくり終わるのを見計らっていた明治天皇はその女性に問う


(なんじ)は何者なりや?」


女性はその問いに答える


「儂か?儂はこの世界とは別の世界の神じゃ。お主らに夢を見せていた張本人じゃ」



それを聞きた明治天皇らに衝撃が走った


女性...(いな)、女神は続けて言う


「その様子じゃと驚いているようじゃな。そうさなぁ、お主らは儂に対し言いたい事が山ほどあるのは承知しとるが今は時間がない。お主らにはやってほしいことがあるのじゃ」


それを静かに聞いていた伊藤博文は問う


「一体なにをさせる気かね?」


女神は答える


「この日本には異世界に行ってもらいその世界を救ってもらいたのじゃ」


それを聞いた各人は驚いていたが


「何を勝手な事を!」


桂太郎は女神を怒鳴ったが明治天皇が制し落ち着かせる


「異世界と言われても突拍子過ぎますな」


山縣有朋は口髭をつまみながら言う


女神は軽くその場に居るもの達を脅すようにこう言った


「見たじゃろう?この世界に居たままでは夢で見た凄惨な戦争になる。それよりも異世界に行ってこの日本を繁栄させた方がいいじゃろ?」


それを聞いた明治天皇は瞼を閉じ静かに考え始めた


それを言われた英傑各人は声を揃えて


「まぁ...そうでもあるが」



英傑たちは考え悩む。この世界に留まり破滅的な苦しみを臣民らに与えて主体性の無い発展を選択するかか全てが白紙に戻るが破滅を回避でき栄光の発展をするため異世界行きを選択するか...









しばらくして明治天皇は考えが纏まり瞼を開け答えを言う


「異世界に行こう。皇国を、臣民を苦しませるわけには行かぬ」


「陛下!」


英傑らは驚きのあまり声を上げてしまった


女神はその答えに満足し笑みを浮かべながら


「そう言ってくれると思っていたぞ。だか、このまま行っても異世界の列強に食われるだけじゃから技術や資源や知識を与える。この世界での列強の一員になり国力を富ませ技術を習得せよ。そして我らの世界を救ってくれ」


英傑の一人西郷従道はある言葉(ワード)が引っかかった


「ん?ちょっと待ってくれ。異世界にも列強が存在するのか?」


女神は何食わぬ顔をして言う


「当たり前じゃろ。この世界とは成り立ちは違えど人間は似たような道を辿るからの」


この情報を聞いて明治天皇は後悔の表情を浮かべ英傑たちは青ざめる。各人は女神からもう少し情報を引き出してから答えを言えばよかったと後悔した


それを見た女神は呆れながら明治天皇らに言い聞かせた


「じゃからその列強らを跳ね返すことができるようにする為に知識をやると言ったろうが」


「ほう、知識をですかな?それは如何様なものですか?」


ふと声をあげ山縣有朋は興味深そうに女神に聞く


「聞いて驚くな。今の日本の貧弱極まりない工業基盤でも量産できる兵器や瘡毒(そうどく)(梅毒のこと)を含めたこの時代(・・・・)での不治の病を治せる医薬品の製造法じゃ!さらに、今の時点では列強ですら作れない飛行機械の実物と設計図や飛行機械を載せ飛び立たせる航空母艦の設計図じゃ‼︎」


女神は誇らしく胸を張りながら言う


明治天皇らは瘡毒など不治の病を治せる医薬品の事に驚き欧米列強ですら作れない兵器を我が国大日本帝国が保有できることに歓喜と恐怖を覚えた。恐怖を覚えたのはあの夢で見た飛行機械が他国へ猛威を振るう事になり凄惨の極みになると考えたからだ



女神は真面目な顔をして


「ただし、これらの知識を与えるには条件がある」


英傑らは口を揃えて


「条件?どのような?」


「まず夢で見た歴史通りの流れで大まかに歴史を進ませること。政体を改革をするのは自由じゃ。次にそれらを作ってもこの世界で使ったり露見させてはならぬ。もっとも試験や教官育成のためならば別じゃがな」


明治天皇は察し語る


「なるほど、欧米列強らが見てしまうと奪いに来たりこの世界の欧米人の発展を促す事になるという訳か...。そして、下手に歴史が変わると異世界に行けなくなるという事か」


「その通りじゃ」


山縣有朋ら軍籍を置いていた人間にとってはそれらの兵器の先見性と有用性を見出し戦争がさらなる地獄になる事を理解してしまった


「さらに条件として失業者やこの日本の被差別階級だった者たちを積極的に雇うことじゃ」


「ちょっと待ってくれ!それでは誇り高い帝国軍に穢れ多き者らが作った武器を使えというのか‼︎」


伊藤博文は叫ぶが明治天皇はムッとした顔をして


「国民国家の時代になりつつあるのに伊藤卿は幕府的な統治を行いたいのかね?」


そう言われ伊藤は力なく項垂れる


明治天皇は女神に向かい言う


「異世界の神よ、それらの条件を飲みこの皇国の発展に尽くすと約束する。そして、異世界と異世界の民らを救おう」


女神は満足そうに破顔する


「そう言うと思っていたのじゃ」







ふと従道は女神に再び疑問をぶつける


「とは言えこの日本が異世界の列強に打ち勝つためにはどれくらいの期間が必要かね?第一にその飛行機械や航空母艦とやらを作るにはとんでもない鉄量や資源が必要なはずだが?」


従道の質問はもっともである。なぜなら当時の日本の各種資源や鉄の生産力は列強の末席であるイタリアにですら負けていたのである。それなのに資源なぞ無いのにどうやって作ればいいのかと疑問を持つのは無理もない。さらにこの当時の日本の産業基盤といえば農業くらいなものであるため工業化の期間はどれほど掛かるのか気になったのである


「儂が持ってきた物資を国内につぎ込んで15年といったところじゃ。鉄や資源類は案ずるでない儂が用意するのじゃ」


「ほう、15年ほどですかな。ではその物資類は一体何処から用意するのかね?」


「この世界にいた場合の未来の日本で作られるはずだった鉄と各種資源を持って来るのじゃ」


「ハアッ‼︎」


明治天皇らはそれを聞き理解の範疇を超え声を上げてしまった








女神は明治天皇らが落ち着いてから異世界についての情報や一部兵器の取り扱い、今後すべし事と異世界に転移する日について各人が説明を受けた。


女神の説明からわかったことは


・異世界はこの世界よりは全体的には発展が著しく遅れているが魔法があるため多くの国の国力は近世程度のレベルである


・倫理観は中世レベルなので酷い


・列強と呼ばれる国は六カ国存在しそれらは畏敬と畏怖の念から『六天』と呼ばれている


・列強のほとんどは竜母 鷹母なる航空母艦的軍艦を有している


・列強の1,2位の国力は少し前の大英帝国レベルである


・ゆえに今の時点(・・・・)の大日本帝国では勝てないどころかお話しにならない


・女神の持ってきた大量の各種資源を国内投資を積極的に行い国力増強をはかれば総合国力は夢で見た日本の1930年代後半クラスになる


・一部技術は1980年代クラスになる


・異世界に転移する日は1910年代前半


・一部兵器についてはこれから先に起きる日露戦争で実戦試験と教官育成のために使っていいとのことである







女神は急に思い出したかのように喋り始める


「そうそう発展具合の理由を欺瞞する為に世界から資源を買い込んでおくのじゃ。それと与えた兵器を本格的に作るのは日露戦争後にするのじゃ。ついでじゃが植民地を持とうとするのはやめよ 異世界に行くのじゃから不要じゃろ。持つことになれば列強に高値で売りつければよい」


そうアドバイスを言い残し女神は消え設計図や幾ばくかの実物を残していった。さらにとんでもない量の物資が持ち込まれることになった。それらを用い日本本土にかなりの投資を行い様々な工場、造兵廠、工廠、造船所などが建てられた。大型の飛行機械やこの時代の戦艦より大きい航空母艦はすぐさま取り掛かられた


さらに女神よりもらった技術により食物の改良を行なったことで食料自給率と国民の栄養状態が改善された



転移する日の直前まで列強の間諜や工作員のあぶり出しやそれらとの戦いに奔走した。それが功を奏し巧妙なほどそれらの情報は完璧なまで秘匿された



この日より異世界に転移するまで日本の国力の増強が行われ日本の国力は史実で言う所の1930年代後半頃の国力となったのである


ちなみに前の話の閑話で書かれた技術は

設定集 各種設定(国民の生活編)にて書かれています

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