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扉の向こうから声がする。若い女性の声だ。
それを聞いて扉の前に立っていたベヒーモとラッビーイーム、扉を開く。
「ルーシ様、マルバス様、アナ・サタナキアただいま帰りました。」
そう言って女性は深く頭を下げる。
「うむ、ご苦労であった、アナ・サタナキア」
「うん、おかえり、アナ、お疲れ様」
二人が応える。
「で、どうなのかアナ・サタナキアよ
イブリスファミリーの方々は来られたのか?」
「はい、マルバス様 先ほどイブリス様以下五名到着さました。控えの間へご案内しようと思いましたが、ドン・アバッド様が大広間にてお待ちになられておりましたので、そのまま失礼ですが、大広間の方へご案内させていただきました。」
「うむ、まあこれで、面子が揃ったということだな。アポリュオンファミリーのドン・アバッドも一安心じゃろう」
どうやら、イブリスファミリーが定刻になっても
到着していなかったらしい。
「相変わらずだな、イブリス殿も・・・」
マルバスもやれやれといった感じである。
魔族会議
その昔、魔界の揉め事には当人どうしで解決するのが一番なのだが
近年、代理人もしくは仲介者を立てて話をおさめるのが主流となっていた。
そして今回、仲介役を買ってでたのが、フエル一家という訳なのである。
そしてもうひとりの男、名前をルーシ・フエル・ロア・ディーロといった。
「では、そろそろ行こうか、みんな」
「ハッ!」
ルーシの声で一同、控えの間を後にした。