第六話
私たちはとりあえず、今日の寝床となるバンガローを目指すことにした。
「そういえばさ、お互いの事、何て呼び合う? やっぱ仲間な訳だし、呼び方って必用じゃん? 」
魔法使いチャラ男、よく言った。
お前の呼び名は、チャラ男で決まりだ。
「僧侶ちゃんは紅一点だから、姫とか? 」
チャラ男よ、本当にお前はチャラいな。
しかし私は、反対せねばならぬ理由があった。
僧侶に初っぱなから『気持ち悪い』と言われてしまった以上、もはや私の恋の相手の選択肢はひとつ。
本当の姫にかけなければならぬのだ。
そこに、もう一人『姫』がいたら、ややこしいことになるだろう。
「ならん! 」
「姫なんて止めて! 」
私が叫ぶと同時に、僧侶も叫んだ。
「えぇー? 何でさー? 」
チャラ男よ。これ以上チャラくなるのは、止めておくが良い。
「私は男女で差別されるの、絶対反対! ちゃんと僧侶と、呼びなさい」
僧侶、少しカッカしているのか、殺人蜂ハンター用の服の顔部分が、湯気で真っ白になっている。
「一理あるね。じゃぁ僧侶ちゃんは僧侶ちゃんで決まり! 」
「ちゃん付けするんじゃねーよ! 」
僧侶が魔法使いに体当たりした。
『ベコッ! 』
黄金の鎧が少しへこんだ。
どんな材質を使っているのだ?
「じゃぁさ、みんな職業で呼ぼうか? 」
チャラ男、立ち直りが早いな。
「でも、勇者の『しげぞう』は外せないわよね」
僧侶よ、自分は差別されたくないくせに、私を差別するつもりか。
「私は『しげぞう』などではない。勇者だ! 」
「でも、ランニングシャツとステテコに『しげぞう』って書いてるし」
「これは私の名前ではない。祖父の名前だ! 」
「エェ~? じゃぁ、じいちゃんの服、間違って持ってきちゃったの? やだ、ウケル~。
て、いうか、ステテコ履いた勇者と一緒に旅するのって、超ダサくない? 」
しばし忘れていたが、女とは、こんなにも面倒な生き物なのだ。
ああ言えば、こう言うに決まっている。
本当は僧侶にも『殺人蜂ハンターみたいな格好をしていないで、もっと露出の多いコスチュームを身に付けて欲しい』と言いたかったが、我慢した。
「もう、しげぞうとでも何とでも呼んでくれ! 」
「はい。決まりー」
父さん、母さん。
この先、私は立派な勇者になれるのだろうか。