第五話
「とりあえず、ここで装備 しておこうぜ」
チャラチャラした魔法使いが言った。
チャラチャラしているわりには良いこと言う。
姫をめぐって、最終的にこの男と戦わなければならない時がくるかもしれぬ。
しかし、今は旅の仲間だ。仲良くしておこう。
私はジイさんからもらったナップサックを開き、装備らしきものを探した。
ナップサックの中から、油性ペンで『そうび』と書かれた、唐草模様の風呂敷包みを発見した。
ジイさん、漢字が分からなかったんだね。
先ほどの僧侶への失態が、全てチャラになるようなカッコイイ装備が入っていますように……。
そう思って唐草模様の風呂敷を開いた瞬間、ジイさんの白いステテコと、腹巻き、ランニングシャツが出てきた 。
ご丁寧に、バアさん手製のアップリケで『しげぞう』という名前が施されている。
風呂敷の中にはジイさんの字で、
『勇者の最初の装備は、ボロの服と決まっておる。ハッピーバースデイ! 』
と、書かれたメッセージカードが入っていた。
私はカードを握り潰した。
じじい、首を洗って待っていろ。
私はとりあえず、ジイさんが準備した装備一式を装着し、仲間の元に戻った。
仲間たちは、おのおの個性的な格好をしている。
戦士のオッサンは、鎖かたびらが施された鎧に、立派な兜を装着し、トゲトゲの鉄球が先に付いた鎖を持っている。
もう、無敵。
もう、完璧。
もう、仲間すら近付けない。
小学生の賢者は、先程と同じ服ではあったが、大きなトンガリ帽子をかぶって、丸目眼鏡から黒渕眼鏡に変え、ますます賢そうに見えた。
紅一点の僧侶は、殺人蜂ハンターみたいな白い防護服を着て、顔、見えてないし……。
いけ好かない魔法使いは、黄金の鎧と、黄金の剣を身につけて、本当にいけ好かない。
「それって、勇者が着る衣装だよね? 」
と、ツッコミ入れたら、
「ハァ? 何言ってんのー? 魔法使いが一番体力が低くて、狙われやすいの、知ってるー? このくらい装備するのが常識でしょー? 」
キィィ! いちいち腹の立つ子ッ!
その金ピカ鎧が目立って、魔物たちに一番にやっつけられるが良い。
旅芸人は……、うん。ピエロみたいに赤い鼻、付けちゃったね。何か効果あるのかな。
鼻呼吸しづらくて、ピーピーいってるよね。
まぁ、ステテコの私が言うのも何ですが。