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第四話

辺りに残っているのは、私を含めて六人だった。


「では、勇者希望の方は、こちらに」


私はヒラリと前に出た。

良かった。勇者は私一人のようだ。

勇者が被る事は、絶対にあってはならない。


「次、戦士希望の方は、こちらに」


「オッス! 」


出てきたのは、屈強そうなあのオッサンだ。

オッサン、何でサマーキャンプに来たの?

もう、充分強いよね?

魔王一匹ぐらいなら、オッサン一人で倒せちゃうよね。

私が横目でチラチラ見ているのに気付いたオッサンは、右手を差しだし


「オウ。勇者、頑張ろうな」


と、ガッチリ手を握ってきた。

うっ。加齢臭がする。

40代後半といったところか。


「次、賢者希望の方」


「はい」


オカッパ頭に丸眼鏡をかけた小学生だ。

賢者というだけあって、付箋が沢山貼られた分厚い本を持っている。


「君、賢者らしいね」


と、少しお兄さん風を吹かせてみせると


「そうですか? アナタは勇者らしくありませんね」


と、中指で眼鏡をクイッっと上げた。

こしゃくな!


「次、魔法使い」


「ヘイ」


何とも今時のチャラチャラした男だ。

髪も茶髪で、ピアスなどあけている。

選ばれし者としての心構えがなっとらん。

ジイさんや父さんがこの場にいたら、嘆き悲しんだに違いない。

今までどういう教育を受けてきたのか、親の顔が見てみたい。

そう思いながら拳に力を込め、平常心を保った。


「次、僧侶」


「ハイ」


おぉ。可愛い。

長いツヤツヤの黒髪をポニーテールにして、抜群の清潔感。はじける笑顔がキュート。

胸も大き過ぎず、かといってガリガリに痩せている訳でもなく、今どき男子の好みを分かってらっしゃる。

君に決めた!


いや、待てよ。

それでは姫君を助けた時、どうすれば良いのだ。

長旅を共にした仲間と恋に発展するのか、助けた姫と恋に落ちるのか……。

あぁ! どちらにしても、私は一人の女性を傷つけてしまうことになる。


「あぁ! 」


私は頭を抱え、その場に崩れ落ちた。


「センセー、この勇者気持ち悪いんですけどー」


僧侶の呪文で私はスッと立ち上がり、体に付いた砂を払った。

彼女との恋は、今ここで終止符を打ったのだ。


「最後に旅芸人」


旅芸人、いる?

キャンプ必用?

しかし、野宿の時は何やら楽しい出し物で、良いムードメーカーになってくれるかもしれない。

旅芸人は、背中に大太鼓、手にアコーディオン、口にハーモニカという出で立ちで、一番足手まといになりそうだ。

さすが旅芸人。

とんだハプニングイベントを、期待したい。


「とりあえず、メンバーが揃いましたね」


案内役が説明を始めた。


「今から勇者に一枚の地図を渡します。

この地図をもとに、この山をぐるっと回って戻ってきてください。

制限時間はありませんが、バスの出発時刻には遅れないようにしてください。

旅の途中、いろんな困難が待ち受けていますから、力を合わせて乗り越えてください。

途中、バンガローがありますので、そこで体を休めてください。

皆が力を合わせてゴールした時、アナタたちは真の選ばれし人間になるのです」


説明が長い……。

私は、ゲームのチュートリアルも説明を読まずに進めるタイプだ 。

まぁ、良い。賢者が何かメモっているので、任せておこう。

いよいよ旅の始まりだ!


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