第三話
キャンプ場までの道中は、何てこともない。
ただサマーキャンプ行きのバスに乗り込めば良いだけだ。
バスは既に数名乗っていて、遠足状態だった。
しまった!
えび煎餅ぐらい持ってくれば良かった……。
あ。もしかしたらナップサックに何か入っているかもしれぬ。
ナップサックを開くと、中にはラップにくるまれた私のバースディケーキが一切れ入っていた。
ぐっちゃぐちゃに潰れているし、夏の暑さでホイップクリームがドッロドロに溶けている。
母さんめ……。
私はおやつを諦め、現地に着くまで眠ることにした。
「はい。着きましたよー」
バスの中は多少うるさかったが、クーラーの涼しさと程よい振動で、うかつにも爆睡してしまった。
ちなみに私の家は扇風機しかない。
まぁ、そんな事などどうでも良い。
恋だ。愛だ。恋愛だ!
私はひらりとバスから降りた。
キャンプに参加している者は、チラシに載っていたような小学生は勿論、私より体の大きな、屈強そうなオッサンもいた。
姫にふさわしい、女子はいないかなー。
私が辺りを見回すと、
「はい。今から班決めをしまーす」
という、運営の声がした。
「学力を伸ばしたい人は、この先生に付いていってくださーい。
室内で勉強しまーす」
チィッ! 室内か……。
クーラーの効いた部屋で、快適に過ごせていいな。
今から変更しようかな。
多数の小学生達が、先生に付いて 向こうに行ってしまった。
危なかった!
あちらを選択していたら、小学生と一緒に勉強しているところを来年のチラシに載せられていたかもしれない。
小学生の問題が解けず、先生に叱られているところをチラシに載せられ、誰かに見られたら末代までの恥になるところだった。
ナイス、我が選択。
私はホッと胸を撫で下ろし、もう一度辺りを見回した。